《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》漫研の姫は能無しですか?

『し、シルティス・ゲオルギウス! あなた、何をしているのです!』

橫でキャンキャンとうるさくイリアが何かを言っているが、シルティスは何も聞こえないフリをしてそのまま歩き出す。

『あなたは世界のルールを破ったどころか、戦いが終わって安寧を得た人間を再び戦場に引きれようとしているのですよ!?』

延々と続く説教にも飽きてきたので牽制の意を込めて言葉で攻めることにした。

「あーもう、うるさいわね。そんなこと分かってるわよ。でも、あんたの最後に見た予定には、ご主人が死ぬシナリオはなかったんでしょ?」

『そ、それはそうですが……』

「なら、いいじゃない。イレギュラーで起こったことならご主人もなにか覚えてるはず。大丈夫よ」

『……問題はそんな単純じゃ』

「いいから、早くご主人の場所を教えなさいよ」

『くっ、私神様なのに、人類の守護者なのに!』

未だにぶつくさうるさく言うイリアだが、シルティスに付いてきているのにはある理由があった。

曰く、自分の世界の予定が改竄かいざんされていたというのだ。

本來世界の予定が変わることはありえず、魔神と鬼神は人の手によって滅ぼされる運命を回避するではずだった。しかし、速水映士が暴走してシルティスに殺された時に、何らかのイレギュラーが発生して世界の予定が書き換えられた。

神の力を持ってしても除くことしか出來ない世界の予定。絶対に狂うことの無いはずのものが狂った。

シナリオの最後の一説にはこう新たに付け足された。

『魔神と鬼神が復活し、再び世に災厄が振りまかれる』

ただのシナリオだったら、『世』と書かれているところには『世界』や『星』という文字がるだろう。

しかし、そこにある文字は『世』。それは、神たちの間では宇宙全を指す語。要するに、神界にいなくちゃいけないとかルールを守っている場合ではなくなったというのが主な要因だろう。

『くっ、アレが去ることであの悪神たちが復活する未來が出來るなんて、不本意極まりないのです……』

「重要なのはあんたの個人的な意見よりも、この宇宙全の破滅を防ぐとかそんなやつなんじゃないの? 私はとりあえず魔族を人間と対立しないようにできればそれでいいんだけど」

『なんてのうてんきなのですか……』

「能天気が擬人化したようなあなたに言われると腹が立つわね」

2人が立つのはビルの屋上。あまりにも服裝が目立ちすぎてしまうので、なるべく人の目につかないように、高所をイリアのステルスを使いながら移していく。

しかし、それもそろそろ限界なようだった。

「あー、居住區か……」

『ここから先はやはり服裝を変えなくてはいけないのです』

シルティスがやれやれと肩を竦め、渋々超速で店から服をかっさらってくるのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さて、私達2人でどうやってあの世界に帰りましょうか」

「いや、それをお前が俺が戻ってくるよりも前に考えてくれてたんじゃないのかよ?」

「んにゃ、普通に考えても私の能力じゃ無理あるからね。攻撃力倍になります、とか、正直戦闘以外でなんの役にも立たないから」

「かといって、俺のスキル欄にもそこまで便利な能力は……あ」

「ん? 何かあるの?」

「いや、あるにはあるんだが、一か八かというか、確証がないというか」

俺は、一応こういうものがあるということを教えておかなくてはと、ステータスを柳沼に開示した。

「おーばー、らいと? めちゃくちゃヲタクっぽい名前だにゃ」

「おめぇぶっ飛ばすぞ、RPGヲタクとギャルゲ廚を一緒にくくろうとすんじゃねぇよてか、お前も漫研の姫じゃねぇかおい」

「漫研の姫は漫研の部員に崇められているだけであって、ヲタクとはかぎらないにゃー」

必死の抗弁をするが、最後にいらん一説を付け加えたせいで負けてしまった。

まぁ、もとよりこいつには一生理解できないであろうということも分かっていたのでこれ以上は何も言わずに話を続ける。

「あー、それで、これで何とかできないかと考えてみたんだが、まず、使うと猛烈に頭が痛くなる」

「欠陥スキルだにゃー」

「おう。あと、めちゃくちゃ思考がまとまらなくなる」

「ほーう、それで、効果は?」

「頭で考えたことを現実に起こす」

「……いやいや、無理ゲー。頭痛くなって思考まとまらないのに、妄想とか出來るわけないわ」

急に素に戻った柳沼に心で笑いつつ話を続ける。

「あぁ。だから、あまり使いたくないしできなかった時にどんな想像が現実に引っ張り出されるのかわからん……」

「いやぁ、なにさ、あんなに強かったヲタミンはどこに行っちゃったのさ!」

「その頃を俺は覚えてねぇんだよ!」

相変わらずの柳沼の異世界にいた頃の話をするくせは腹が立つ。覚えてもないこと言われても困るし、そもそも話聞いてると俺はこいつとあまり接點がなかったらしい。

まぁ、他の奴らに比べればある方だったのかもしれないが、もののほんの數分程度あったくらいで何か言われても、コチラとしては々と困りものだ。

「はぁ、結局進展なしか……他に戻ってきてる人がいればなぁ……」

「んな事言ったって、お前が見つけたのは俺だけなんだろ?」

「うん。なんか私たちよりも前に召喚された人達は沢山いるみたいだけど……あっちの世界言った時にはもう全滅したとか聞いたし……」

「……そうか……ん? お、おい、ちょっと待てよ、全滅ってことは、みんなあっちの世界で死んでるんだよな?」

「ん? そうでしょ」

「なら、俺たちみたいに記憶があるんじゃないのか?」

「あ」

「なんだよ、なんでこんなことにすぐ気が付かなかった、脳足リン!」

「足りてますから、ちゃんと通常サイズの脳みそってますから!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ柳沼を放置して、1人市営の図書館へと行くために準備を始める。

なにか、自分がずっとやらなくてはいけないと思っていたことが、やっと目の前に迫ってきたような気がした。

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