《Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜》これは走馬燈ですか?

長くて淺い、まるで文字と數枚の絵だけで綴られたような、不思議な世界を見ていた。

神様は小柄も小柄、見てくれはで好戦的。

能力を與えられて異世界に送られたけど、最初に出會ったのは狂った脳筋野郎。

何故かそいつと一緒に旅に出ることになり、元魔王を名乗るが仲間になった。

ナメクジみたいなキチガイの魔王を倒し、次の魔王を倒しに行ったらバケモノに飲み込まれ。

目覚めると飲み込まれる數刻前に戻っていて、未來を塗り替えるとかどうとか言ってバケモノ退治のイベントが発生。

なんとかバケモノを倒すと、日本人を名乗る異世界人が刀を持って寄ってきて、一緒に魔王討伐へ。

雪山の山中で休憩していると、空から魔王の妹が降ってきたり、唐突に敵の大軍団からの強襲にあったり。

んなことの辻褄が會わないままに魔王を倒しに行くと、魔王はもう魔王でなくなっていて、代わりに頭の狂ったガンマニアが魔王になっていた。

なんとか逃げてやつを倒すけど、知らない間にられていて、人を殺したくなり……

……気がつくと、を貫かれていた。

これは誰の記憶だ? 俺の記憶か? あちらの世界での、俺ではない俺の記憶なのか?

頭の中に斷片的に浮かぶ記憶が、俺の脳に焼けるように染み付いていく。

『思い出せ、これはお前の記憶だ』

違う、俺はこんなこと覚えていない。記憶になんてない。

『覚えているのに、忘れたフリをするのか?』

何を? 何で、何故そう思う?

お前はなんなんだ、さっきから。

耳障りな掠れた聲でボソボソと。走馬燈なら、もっと々あるだろう? 死ぬ間際に死神に話をかけられたってか?

『俺は死神じゃない』

じゃあなんなんだよ、あなたの心の聲です。とか言わせねぇからな。

『心の聲? 何を馬鹿なことを』

は?

『俺は、お前自だ』

……寢ぼけたことを言ってるんじゃねえよ、俺は俺だ、決してお前みたいな他人に失禮なやつじゃねぇ。

『他人じゃなくて俺だしな?』

お前、本當になんなんだよ、さっきから。

『俺は、ただお前に思い出してほしいだけだ』

何をだ。

『お前の行こうとしている、あの世界の恐ろしさだよ』

どこか恐ろしいところでもあったのか? さっきの記憶だと、そんなところはないように思えたが。

『よく考えろよ。戦うことが常、誰かを傷付けることが認められていて、人すらも殺しても大きな咎めはなく、何なら逃げ出してなんとかなるような世界だ』

それがどうした。

『溫室育ちの俺達にはあってない。部屋でぬくぬくしてるのが一番いいだろう?』

……。

『さぁ、思い出せよ、あの世界を。あの世界の異常、恐ろしさ、その全てを』

お前は俺じゃないんだな。

『なに?』

戦うことが常? そりゃめんどくさいな。労働は大嫌いだ。

誰かを傷つけることが認められている? まぁ、めったに誰もやらないだろ、倍返しくらいたくないし。

人すらも殺しても咎めはなく? じゃあなんで文明がある? 殺人鬼だけじゃないんだろう?

俺はな、基本事項ネガティブでも、興味持ったことには全力なんだよ。で、今俺が興味を持っているのは異世界のこと。お前が俺? 馬鹿馬鹿しい。

どうせエスメラルダ當たりが殘していった言弾の殘滓、とかそんなじのやつだろ?

『……思い出した上で俺を否定するか』

よく考えろよ、長生きできるのに、生きる世界がなくなるのは困るだろ?

『……』

さぁ、の使い方は思い出してきた。お前のおかげだ。どういう原理でお前が俺の記憶をせき止めていたかは知らないけどよ、解放したのが間違いだったな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

崩れ落ちていく世界の音が耳に響く。俺が、言葉の……弾……? 植え付けられた別の意識?

たしかにそうなのだ。エスメラルダ様に放たれたという記憶も、今の俺には確かにある。

俺は、俺は一いつから、自分が、あちらの世界を経験した速水映士だと錯覚していた?

何故、何故、何故、何ぜ、な故、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ、ワタシハジブンヲヒトダトサッカクシテイタ……?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

言弾は速水映士の頭の中で最後の意識を総員して自の失態がなぜ起こったのかを考える。

しかし、それは次第に問題提起だけとなっていき、彼には考える力はなくなっていく。

そうして最後に彼が思ったのはただこれだけ。

『死にたくない』

それは人のを奪った悪しき者の、最後の、葉うことのない願いだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

頭に記憶がなだれ込んでくる。やつがせき止めていたものがいっせいに。

今まで微かにれ出ていたものも確かになっていき、俺は俺であるという実が、に染み渡っていく。

多分、あいつは本當に俺だと自分のことを思い込んでいたんだろう。だから俺とひとつになって、完全な俺になろうとした。

そう思うと、々と可哀想な奴だ。まぁ、最初は俺も、俺自の記憶を否定していたんだけども。

あいつのおかげで俺は元の自分を取り戻せた。あいつのヘマには謝しなくちゃな。

「んっ……」

にすべてがめぐり終え、俺が完全に元の俺へと戻った時、ふと目が覚めた。

「相変わらず壁の中か……」

生憎この場に紅羽と黃羽はない。を切るのは難しいだろう。

「切るのは、な」

そう。切れなければどうするか。

「ギッタギタのグッちゃグチャにして、そこの屋に売り込んでやるよ」

さぁ、蛇さんや、ミンチの時間だ!

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