《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》12話
「いらっしゃいま―――あ、イツキさん!」
「……………」
翌朝の早朝、ギルドにやってきた。
「聞いてください!『ドラゴンの討伐』をけてくれたの子が―――」
「あー知ってる知ってる……なあリオン、俺も『ドラゴンの討伐』をけたいんだけど、途中參加ってあり?」
「え?あ、ありですけど……」
「おっけ……それが聞ければ充分だ」
ギルドの扉を開け、外で待っていたがにこりと笑う。
「早く行きましょう!」
「ああ、そうだな」
シャルを抱き上げ、『クイック』を―――
「イツキさん!」
―――使おうとして、リオンが聲をかけてきた。
「どした?」
「……ご武運を!」
「……ああ!『クイック』!」
リオンに返事し、俺は『アトラスの獄山』へ向かい走り始めた。
「シャル!このスピードだと、どのくらい時間がかかる?!」
「そうですね……馬車よりは格別に速いんで、1時間ほどで著くかと!」
「おっけ!道はこっちでいいんだよな?!」
「はい!間違いありません!」
『アンバーラ』のり口を通りすぎ、野原を駆ける。
「……何で、ランゼさんたちの所へ行こうと思ったのか、聞いてもいいですか?」
「……言わなきゃダメ?」
「聞きたいです!」
「……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ心配になってきたんだよ」
ほんのちょっとかどうかは定かではないが、し心配になってきた。
「何だかんだ言いながら、ランゼさんたちの所へ行くイツキさん、素敵です」
「……それは違うな」
「えっ?」
「本當に素敵なやつなら、最初からランゼたちと一緒にクエストへ行っていたはずだ……俺は自分のことしか考えてない人間だ」
俺は自分を強いとか、勇者だとか思っていない。
そもそも勇者とは、正義に溢れ、自分を犠牲にすることをいとわない、そんな素晴らしい人格の持ち主のことを言うのであろう。
それに対し俺は、自分のことだけを考え、周りがどうなろうと知ったこっちゃない、クズだ。
「そうですか?私はそうは思いませんが」
「……なんで?」
「本當に自分のことだけしか考えていない人間なら、こうやってランゼさんたちを助けに行かないと思いますよ?」
腕の中のシャルが、さも當然のように言った。
「……そう、かな」
「そうですよ!そうに決まってます!」
「……なら、早くあいつらを助けに行かないとな!」
「はい!」
草原を駆け抜け、俺たちは『アトラスの獄山』を目指して走った。
――――――――――――――――――――――――――――――
「―――イツキさん!見えてきましたよ!」
「お、おう……そうか……」
……1時間ぶっ続けで走るのは、きつい……いやきつすぎるわ。
「……あれ?イツキさん、あそこ……」
「あ、ああ……?」
『アトラスの獄山』の麓―――そこに、3つの人影を確認する。
「……シャル、ちょっと隠れてろ」
「は、はい!」
木のにシャルを隠し、上空に目を向ける。
「おーおー……ほんとにドラゴンが2匹いやがる」
「ゴォオオオオオオオ!」
「ギャァアアアアアアア!」
空を舞うドラゴンの口に火が浮かび―――
「……ん?」
―――その先に、ストレアがうずくまっていた。
「ちっ、『クイック』!」
スピードを上げ、高速でドラゴンに近づき―――
「―――『フィスト』ぉおおおっ!」
「ガギャオオオオオオオン?!」
一跳躍で空へ飛び上がり、腕の力を上げてドラゴンの顔を毆った。
……やっぱりランゼの言う通り、『クイック』は腳力を上げる魔法……ジャンプ力も上がっていたか。
「『形態変化』!『弍式 散弾銃ショットガン』!」
「ギャォオオオオオオ?!」
間髪れず懐から『魔導銃』を抜き、散弾銃に変化させてドラゴンの目玉を撃ち潰す。
「生の弱點は、やっぱ目だな」
「イツキさん!さすがです!」
「あー隠れてろっつっただろ」
「あ、すいません……」
木のに隠れていたはずのシャルが駆け寄ってくる。
「ったく……お前らは俺がいないとダメだな?」
「何で……イツキが、ここに……?」
「別に……ただ単に暇だったからだ……まあ他に理由があるとするなら―――」
……いや……心配した、と言うのはさすがに恥ずかしいな。
「……俺は正義のヒーローでも、英雄でもない……でも、お前らとは知り合いだ」
「……それだけ?」
「それだけだ……俺たちの仲に、深い理由なんていらねえだろ」
ランゼからドラゴンへ視線を移し、自分をい立たせるために、笑ってみせる。
「さてさて……ちょっと々試してみますか―――『形態変化』、『伍式 対銃アンチマテリアル』」
瞬間、『魔導銃』の形が変化する。
『壱式 片手銃ハンドガン』と同じくらいの大きさ……いやこれ。
「なんかショボいな」
「ギャォオオオオオオ!」
「イツキ!上―――」
「鬱陶しい」
対銃の引き金を引き―――
「ぅお―――」
―――『ガオーン!』という凄まじい音、そして……
「―――ゴォ、ォォオオオォ……」
に大きな風の空いたドラゴンが、地上へ沈んだ。
「うひょー……なるほどな、対銃はマグナムってじか?」
「な、い、今のは……?!」
「おうおう、無様な姿だなウィズ」
ボロボロの姿のウィズが近づいてくる。
「……不覚だ、まさか最強の我が、あんなドラゴンごときに負けるなど……!」
「てっきりランゼの『破滅魔法』で、跡形もなく消し飛ばしてると思ってたんだけどな」
「……避けられたのよ」
ランゼが頬を膨らませ、不機嫌そうに俺を見る。
「そりゃ殘念だったな、あんな啖呵切っといて避けられるなんて、大笑だな」
「こ、この……!」
勝った。
「さて、と……ランゼをいじめるのも、こんくらいにしとくか……ストレア、立てるか?」
「う、ん……ちょっと休んだから、もう立てるよ」
「よしよし……んじゃ、あのトカゲを撃ち落とすか」
「ガォオオオオオオオオオオオオ!」
もう1匹のドラゴンが俺を目掛けて突っ込み、それを対銃で撃ち落とそうとして―――
「―――ガアッ!」
「ちっ!」
―――さすがに仲間が撃ち殺されたことで、この銃の危険さに気づいたのか、凄まじいスピードで弾丸を避けられた。
なるほど、ランゼの『ビッグバン』を避けたのも納得だ。
「ま、だから何だって話だけど―――『形態変化』、『參式 機関銃マシンガン』」
対銃が機関銃へと変貌し、弾丸の雨がドラゴンに降り注ぐ。
「ギャ、ガァア?!」
「あー、やっぱ機関銃は1発1発が弱いな」
のあちこちからが流れ落ちる……でも、あのドラゴンはまだまだ元気みたいだ。
「ゴ、ォオオオオオオオ!」
ドラゴンの口から火の玉が放たれる。
……何だ、この程度なら『クイック』で簡単に避けられる―――
「……くっ!」
「あ?お前―――」
―――ウィズが背後にいる。
「―――しゃらくせえなぁ!『フィスト』ぉおお!」
迫る火の玉を、拳圧で正面から打ち消す。
「『クイック』!」
続いて『クイック』を発させる。
常人ならば魔力不足になるのかも知れないが、俺はヘルアーシャに『無限魔力』って能力を貰ってんだ、魔力不足なんて知ったこっちゃねえ!
「ゴォ、ゴォオオオオオオオ!」
「『フィスト』!」
上空へ飛び、ドラゴンの腹部に一撃を叩きつけた!
「ガォ―――」
悲鳴を上げる間も無く、ドラゴンは地面へと落ちた。
「お、とと……うえっ、返りが付いてる」
「さすがですイツキさん!」
「はっはっは……もっと褒めていいぞ」
「これ以上褒めるとなると、私にはを捧げる以外の方法が思い付かな―――」
「やっぱり何でもない、お前はもう喋るな」
シャルの口を塞ぎ―――
「……イツキ」
「……はあ、怪我はないか?」
「え、ええ……」
「よし……帰るぞ」
……そういや、ランゼたちはどうやって『アトラスの獄山』に來たんだろうか?
「あ、い、イツキ!」
「なんだ?」
「あの……昨日は、言い過ぎて―――」
「悪かったな」
「えっ」
ランゼの言葉を遮り、謝罪を口にする。
「その、何だ……俺も昨日はカッとなって、悪かったな」
「うん……私も、ゴメンね」
「えへへ……やっぱり、2人は仲良しなんだね」
「そうか?……いや、そうなんだろうな」
ストレアの言葉に、思わず笑みを浮かべる。
「……仲良し、だけなの?」
「嫌か?」
「う、ううん、いいのいいの!」
……『仲良し、だけなの?』って、どういうことだ?
「……考えてもわかんねえか」
「おいお前」
「相変わらず口が悪いな……何だよ」
「……かっこよかった」
「へっ?」
ウィズ、今なんて言った?
「あんな鮮やかにドラゴンに勝つなんて、かっこいいなお前!」
「……んじゃ、そのお前っての止めろ。俺にはちゃんとイツキって名前がある」
「そ、そうか、かっこよかったぞ、イツキ!」
……最初からこんだけ素直だったら良かったのにな。
「……んじゃま、帰るか―――」
「あれ?僕の連れてきたドラゴンは?」
背後から―――否、上空から聲が聞こえた。
「……誰だ、お前?」
「僕は『ゾディアック』、『天秤座』の『リーブラ』……ここにドラゴンが2匹いたはずだけどっ―――」
話している途中で『魔導銃』をぶっ放した。
「ちっ、これを避けるかよ」
「いきなり攻撃してくるなんて……野蠻だね」
「何とでも言いやがれ―――『形態変化』、『伍式 対銃アンチマテリアル』」
対銃を構え、リーブラを睨み付ける。
「うーん―――じゃあここでヤる?」
リーブラの醸し出す雰囲気が一変する。
「じょっ、上等じゃねえか。おら、ヤんのか?」
「イツキ、聲が震えてるわよ?」
余計なことを言うんじゃねえよ。
「……まあ今日はドラゴンの様子を見に來ただけだから、そんな気分じゃないんだよね」
「そ、そうかっ、じゃあ今日は解散ってことで!」
「……うん、そうだね。君とヤるのは、またの機會にしようかな」
よかった。
「それじゃあ……またね―――『フライ』」
リーブラが上空に飛び、そのままどこかへ飛び去ってしまった。
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