《発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。》15話
「……む、帰ってきたか」
「はい、もう帰國しますか?」
観を終え、グローリアスさんの元に帰って來た。
「いや、今日は『獣國』に泊めてもらうことになった」
「え?」
「うん、今日はもう遅いし、泊まっていってよ」
グローリアスの隣に立つ『獣王』が、らかな笑みを浮かべたまま言ってくる。
「王宮に余ってる部屋もあるし……僕はもうしグローリアスと話をしたいしね」
「……と、いうわけだ。いいだろか?」
「まあ別に……グローリアスさんがそう言うのなら」
俺は帰りたいんだけど……『獣王』もグローリアスさんと話したいって言ってるし、まあいいか。
「それじゃあ、君たちの部屋を案してもらおう……アクセル」
「はあ?!何で俺がこいつらを案しなきゃならねえんだよぉ?!」
「これは命令だ、アクセル。従ってくれ」
「……チッ、おらこっちだ……付いてきやがれぇ」
不機嫌な態度を崩そうとせず、アクセルが謁見の間を出ていく。
「……すまないね、アクセルは格に難があって……」
「うむ……拗こじれているな」
いや、拗れすぎだろ。
「おらぁ!早く付いてきやがれぇ!」
「なあ『獣王』……」
「なんだい?」
「あいつムカつくからしばき回していいか?」
「何言ってんのよ!」
ランゼが俺の背中に平手打ちをれる。
「うん、いいよ」
「い、いいのか?」
「アクセルは強いんだ。強すぎるが故に―――1人だった」
強すぎるが……故に?
「彼の強さは……それこそ、僕がいなかったらこの『獣國』は彼1人で制圧できる」
「1人で……?!」
「幸いなことに、彼にはそんなことをする度がないし、僕には勝てないからよかったけど……武力で僕を抜くのも時間の問題さ」
腕を組み、『獣王』が眉間にシワを寄せる。
「強すぎるが故に、彼は敗北を知らない……アクセルのきに反応できた、君にならアクセルを負かすことができるかもしれない」
……『獣王』って、強いのか?
「言っておくが……イツキ君は強いぞ?」
「強ければ強いほどいいさ、アクセルが負ければ敗北を知ることができる、勝てば経験が積める……良いことしかないさ」
「いい加減にしやがれやぁ!とっとと付いてこいっつってんだろぉ!」
怒り狂うアクセルが謁見の間に帰ってきた。
「アクセル、早速で悪いけど頼みがあるんだ」
「先に言っとくが、めんどくせぇ命令はけねえぞぉ」
「なに、難しいことでない……そこの彼と勝負してほしいんだ」
「……へえ、戦いを好まねぇ『獣王』様にしては、珍しい発言じゃねぇかぁ……」
今さらだけど、喋り方が獨特だな。
「……おもしれぇ、おらお前、付いてこいやぁ」
――――――――――――――――――――――――――――――
「『回復魔法』の立會人は、僕が引きけよう」
「……ライガーは『回復魔法』が使えたのか?」
「そうだよ」
訓練所のような所に連れてこられた。
「うっし……『獣王』様ぁ、準備いいぜぇ」
「よし……そちらの君も、準備はいいかい?」
『獣王』の問いかけに、無言で頷く。
……ルールは簡単だ、ギルドの決闘と同じく、相手を戦闘不能、もしくは降伏させれば勝ち。
「それでは……始め!」
『獣王』の合図と共に、『魔導銃』を抜き―――
「―――しぃ!」
「うおっ?!」
―――撃つ前に、アクセルが兇悪な爪を降り下ろしてきた。
「避けんなやぁ!」
「っと!避けるに決まってんだろ?!」
続けて剛爪を振るう―――よし、何とか避けられそうだ。
「『形態変化』……『參式 機関銃マシンガン』」
「おらおらぁ!いくぜぇ!」
高速で迫るアクセルに向け―――
「―――くらえ」
「な―――」
―――弾丸の雨が降り注いだ。
「ぐ、がぁ?!な、何をしやがったぁ……?!」
「バカ正直に突っ込んでくるからよ……狙いが付けやすいのなんのって……おら立てや」
「こ、の……『人族』ごときがぁ!」
立ち上がると同時、アクセルが剛爪を振り上げ―――
「おせえよ」
「かっ―――がぁ!」
―――振り上げた瞬間、機関銃をする。
「く、ぅう!『エクスフレア』!」
アクセルの手から『豪炎の塊』が放たれる。
「『形態変化』……『伍式 対銃アンチマテリアル』」
対銃の弾丸が、アクセルの放った炎を打ち消し―――
「が―――ぁああっ?!」
―――その先にいた、アクセルの右肩を撃ち抜いた。
「はっ……大口叩く割には、大したことねえな」
「て、めえ―――調子に乗るんじゃねえぇ!『ビーストハウル』!」
「―――アクセル!」
どこか焦ったような『獣王』の聲。
「おっ、ぉおオオおオオオオッ!」
「……なにこれ」
アクセルのが膨張、脈打ち、大化していく。
特徴の赤髪がび、腕は丸太のように大きくなる。
服は裂け、靴は弾け飛び、元のアクセルの姿とは似ても似つかない、化け虎の姿に変わる。
「アクセルの負けず嫌いが出てしまったか……!そこの君!こうなったアクセルは僕以外には止められない!すぐに逃げて―――」
「『形態変化』、『壱式 片手銃ハンドガン』」
『魔導銃』をレッグホルスターにれ、化け虎となったアクセルを睨む。
「ォオオッ!ォオオオオオアアアアアアアッ!」
化け虎となったアクセルが、兇悪な拳を俺目掛けて―――
「―――『フィスト』ッ!」
「ガ―――ォオオオオオオッ?!」
―――放たれる一撃を拳でけ止め、吹き飛ばす。
「『クイック』」
『フィスト』を発したまま、続けて『クイック』を発させる。
「ガオ……ォオオオオ―――ガッ!」
「うるせえ、ちっと黙ってな」
顔を上げたアクセルの橫っ面を、躊躇なく毆り飛ばす。
「ガァ……ァアアあ……ぐう、あ……く、そ!おらぁ!まだヤれるぞこらぁ!」
「スゴい……『ビーストハウル』狀態のアクセルの一撃を、弾き返すなんて……!」
壁に激突した化け虎がみ、元のアクセルの姿に戻った。
「おうおう、まだヤル気かよケモ耳野郎……もう手加減しねえぞ」
今回は『ゾディアック』と戦った時と違って、自分の意思で戦っている……よって、俺はヤル気に満ち溢れている。
「そこまで……だね」
「ああ?!止めんな『獣王』様ぁ!こいつはぶっ殺さねえと気が済まねえぇ!」
「そこまで、だ……命令が聞けないのか、アクセル」
「く、くうぅぅ……!」
上半のアクセルが、悔しそうに地面を毆る。
「……君、スゴいね……名前は?」
「俺はイツキ……ただの護衛だ」
そっけなくそう言って、膝を付くアクセルの元へ歩く。
「……んだよぉ」
「はっ、あんだけ自信満々だったくせに、わけねえなあおい」
「なんだとぉ?!」
怒るアクセル……顔を近づけ、囁いた。
「この國で強いんだか知らねえが……調子に乗るなよクソガキ」
「―――っ!てめえは……一ぃ……?!」
ゆっくりと顔を離し、『獣王』を見る。
「……そういや、俺たちの泊まる部屋って?」
「ああそうだったね……付いてきてくれ」
――――――――――――――――――――――――――――――
「はー……」
あてがわれた部屋のベッドに寢転がる。
「んー……明日の朝に、帰國するって言ってたな」
それまで何をして過ごそうか……
「……イツキー、いるー?」
「……ストレア……?」
扉の向こうから、ストレアの聲が聞こえた。
「……お、どうしたんだ?夜這いか?」
「それはシャルの特権だからね、僕は遠慮しておくよ」
おい、こいつ何て言った?
「……それで?何の用なんだ?」
「……観し足りない」
「はっ?」
「僕もっと観したい!だからちょっと付いてきてくれない?」
「ざっけんな」
ふざけたことを言うストレアを外に出し、扉を閉めようと―――
「ね、ねえ!何で扉を閉めようとするの?!」
「おら手え離せ!俺は嫌だ!1人で行け!もしくはランゼとかウィズとかをえ!」
「ったけど斷られたの!ねえ、いいでしょ?!付いてきてよ!」
―――ストレアの力、そういえばメチャクチャ強かったな!
「ぐっ……この!力強いなチクショウ!」
「だからその言い方はやめてよ!僕が強いんじゃなくて『鬼族』はみんな―――」
そこで言葉が止まる。
……ああ、そういや『鬼族』って……
「……はあ、わかったわかった。付いていってやる」
「え、いいの?」
「ああ、用意するから、ちょっと待ってろ」
……そんな悲しそうな顔するんじゃねえよ。
――――――――――――――――――――――――――――――
「うわー……!」
「どうした?」
「スゴく可い洋服が、たくさん!」
はしゃぐストレア、その後を追いかける。
「買わないのか?」
「……うん、僕には似合わないよ」
に手を當て、ため息を溢す。
「そうかな、ストレアは可いと思うけど」
思わず、勵ましの言葉をかける。
「……ほんと?」
「ああ、ほんとだ」
「……でも、こんな洋服を著る勇気がないよ」
クルリとを返し、別の場所へと歩き始める。
「……ストレア、ちょっと待ってろ」
「え?」
可い洋服が置いてある店へっていった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「ほら、これやるよ」
「これって……髪留め?」
手渡された髪留めを見て、ストレアが首を傾げる。
「月の形をしたバレッタ……どうだ?なかなか良いセンスじゃねえか?」
「……僕に、くれるの?」
「ったり前だ、やるために買ったんだからよ」
洋服は無理でも、髪留めなら、と思ったのだ。
「でも……付けるの恥ずかしいな」
「大丈夫だって、俺も付けるから」
「え?」
ポケットから、太の腕を取り出す。
これもさっきの店で買ったのだ。
「太と月……灑落てんだろ?」
「……えへへ……うん、とってもお灑落だよ」
……やっぱり、ストレアには笑顔が似合う。
さっきみたいな悲しそうな顔、絶対に似合わない―――
「……なんて、俺らしくねえな」
「ん?なんて言ったの?」
「いや、何でもねえよ」
「えー?!絶対何か言ったでしょ?!」
騒がしいストレアと共に、観を再開した。
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