《死神と呼ばれた殺し屋は異世界に》第6話 無理ゲー
朝日が俺を照らした。そうだ、パーティーが終わって部屋に戻るとすぐ眠ったんだ。でも、あまり目覚めが良くない。あの時の王の笑顔と國王の笑顔がまるで作り笑いに見えた。
俺はよく人の顔を見る。特に意味はない、一種の職業病みたいなものだ。相手が油斷しているかどうか、顔で相手の狀態を殺し屋になってから見るようになった。
「ヴェールさん。」
「ヴェールで大丈夫です。何か用ですか?」
「この世界の地図ってありますか?」
「々お待ちください。」
數秒で持ってきた。
「魔族の大陸って何て言うんだ?」
「アスモジアニンと言います。」
妙だな。人間の大陸「チェロヴェーク」と 魔族の大陸「アスモジアニン」はかなり離れている。なぜこのタイミングでわざわざ召喚したんだ?いや、まだ考える材料が足りないな。ゆっくり探すか。
「夜神 佑 様、本日から訓練が始まります。30分後、訓練場へ向かってください。」
訓練か、殺しの訓練をしていたからある程度ならついていけるか。その間魔力を流すとするか。覚は昨日覚えたしな。
覚は巡るというよりは広がらせるというイメージに近い。煙を広がらせる、
(……できた。)
なんとなくだがじる。あとはこれを維持する。時計を見ると、そろそろ時間になりそうだ。俺は走っていく。
◆◇◆
訓練場は芝生が生えた校庭のようで綺麗な場所だった。既に何人か來て並んでいた。育の時の並び方と同じか。俺もその場につく。全員が揃ったのはそれから3分後のことだ。
「ああ、俺がお前らの訓練の指揮をとる第5騎士団 騎士団長ジモンだ。よろしくな。」
ジモンは黒のスキンヘッドの男だ。顔は優しそうで人懐っこい笑顔で俺達を見る。
「第5騎士団とは何ですか?」
今回は俺が質問した。理由?なんとなく気になったからだ。
「今、城の中に5つの騎士団があり第1~第5と振り分けられている。そして、実力は數字が大きいほど上だ。」
なるほどな、し気になる部分もあるがまぁ分かった。
「今日は力をつけるためにトレーニングをしてもらう。訓練についていくためには力が必要だからな。まずはこの訓練場を50週してくれ。」
「「「「はっ!?」」」」
全員からこの聲が挙がった。そりゃそうだ明らかにペースがおかしすぎる、それにさっきジモンは「まずは」と言った。つまりこれは序の口ということだ。確実に潰れる人は出てくる。
「そんな、俺達には無理です、確実に潰れます!」
剣がそう聲を挙げた。ナイスだ剣、よく言った。そんな視線が剣に集まるが、ジモンは笑顔のまま剣に近づき腹を毆った。剣はその場に腹を抱えながら息苦しく跪く。
更に、ジモンは笑顔のまま剣の髪を摑み顔を上げさせる。
「いいか、やる。できるできないの問題じゃなくやるんだよ、分かったか。別に抜けてもいいぜ、その場合そいつが裏切り者として國から追われることになるからな。」
変わらない笑顔だが狂気をじた。恐怖による洗脳、その言葉が頭をよぎる。実際勇者の剣が一方的にやられたんだ、皆が倒せるわけがない。俺もここで倒そうとして倒せたとしても逆効果の可能が高い。
そうなると、全員に迷がかかる可能がある。実際クラスメイトの大半がどうでもいいが、翔太と恵と雪華に迷はかけたくない。そして、俺達は従う以外の道はなくなった。
◆◇◆
「はぁっはぁっ」
かなり息苦しくなってきた。とはいえ今20週目、よくここまで走れたと思う。既にクラスの半分は潰れている。
「大丈夫か、はぁ、佑。」
俺のペースについていけてるのも翔太くらいだ。しかも、俺よりも基礎力が高いのに息を切らし始めている。
「大丈夫な、はぁっはぁっ、わけ、はぁっ、ないだろ。」
「だよな、はぁ。」
やばい、聲を出すと息継ぎのタイミングを無くしてしまう。そうしてる間にも何人か潰れただろう。ただの學生だった俺達にはこれはただの無理ゲーに近い。いや、俺は普通じゃないか。
しかも1週は校庭のトラックの約1.5倍はある。50週ということは校庭のトラック約75週に等しい。
「ふざけんな、くそ野郎。」
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