《死神と呼ばれた殺し屋は異世界に》第21話 一人ぼっちの二人
「逃がす?」
その言葉は予想していなかった。俺を逃がす理由は?
メリットなどないと思うが。そう思いながら質問する。
「なんでだ?」
「だって、生きにくいでしょ。人を殺したのだから。私が」
生きにくい。確かにそうだ。恐らくこのことは記憶に刻み込まれ、死ぬまでその記憶に縛られるだろう。
例え、元の世界に戻ったとしても。でも。
「確かに俺は生きにくくなる。でも、俺を逃がす理由にはならない。このことからは逃げられないのだから。」
「……あなたに似た境遇の人を私は知ってる。でも、最後まで見てあげることができなかった。強いて言うなら自分勝手な償いかな。」
寂しそうな聲だった。本気で後悔しているんだろう。この人の言葉に噓はじられない。……お言葉に甘えるとするか。
「じゃあ、お言葉に甘えて逃がしてください。」
「はい分かった。じゃあ案するね。」
すると、雷の逆と暗さでよく見えなかった顔が見えた。言葉使いでということはじていたが、綺麗な人だと思った。それと同時にもしかしてと思った。
「もしかして、日本人ですか?」
「あら、よく分かったわね。」
「ええ、黒髪ですし。」
この國で黒髪はあまり見ないからそう思った。にしても本當にそうとは。半分くらい冗談だったのだが。
……年齢は20代くらいか。正直言って結構な人だ。
「ええ、私は日本人。あなたと同じ転移された者よ。」
「あれ、俺が転移したことなんて言いましたっけ?」
「この國が勇者を召喚した噂が結構広がってたからね。」
なるほど。そして、俺は彼についていった。俺はそのルートに正直驚いた。分かれ道が多い裏道を迷わず進んでいき、しかもパイプを上って屋の上を走ったり元の世界では絶対通らないルートだな。
そして、俺は帝國から出した。案外簡単だったな。もうちょっと大変というか苦戦するかと思っていたが。
「ところで、行くあてとかあるの?」
「いや、特に何もないね。」
「じゃあ、一緒に旅しない?」
「一緒に?」
「私も一人だし、一人ぼっちは寂しいから。」
一人ぼっちは寂しい。その言葉が妙に重く聞こえた。この人には何かがある。そう思った。
「あの!」
「何?」
「……さっき言った自分勝手な償いについて教えてくれませんか?」
「……大した話じゃないけどね。」
すると、彼は丸太の上に座った。俺も切り株の上に座る。
「……私が元の世界で25歳の時、ある子どもに出會ったの。」
「子ども?」
「そ。4歳くらいのね。捨て子だったみたいでね。そして、その子は人を撃ち殺したの。」
「……っ!」
撃ち殺した。日常では聞くことのないような言葉。
でもその言葉は妙に現実味を帯びていて、俺は驚き靜かに聞いていた。
「自分を守るために敵の銃を奪って殺した。子どもって結構殘酷なことを平気でやるわよね。普通銃を奪うなんて考えても行できないわよ。リスクが大きすぎるわ。」
「で、その子は。」
「……私が殺しを教えた。」
「殺しを……教えた?」
殺しを教える、それこそ殘酷なことではないのか?
しかも教えるなんて殺しをした奴じゃないとできない。おそらく……
「あなたは……」
「そ。殺し屋よ。元の世界でも今の世界でも。」
「でも教えるなんて。」
「そうね。迷わず孤児院に連れていくべきだと後悔してる。もしかしたらまだ戻れたかもしれなかったのに。」
「……」
「まぁそんなこんなで、私はその子の母親代わりの人になった。でも、母親らしいことなんてできなかった。家事なんて私の何倍も上手くできたし……。
私にできたことは人を殺すスキルや心構えを教えることだけだった。」
「で、その子は?」
「すくすく育って、11歳くらいにまでなったかな。
で、そのとき私に依頼がった。あるマフィアの幹部を殺す依頼ね。で、私は殺しに行った。それくらいしか私が金を稼ぐ方法が見つからなかったからね。
でも。」
「失敗した。」
すると、意外なことに首を橫に振った。
「殺すことはできたよ。でも最後の奴の一発をまともにくらっちゃってね、死にかけた。んで、気づいたらこの世界にいた。いや驚いたね、まさか転移どころか高校生くらいまで若返っちゃって。」
あ、若返ったんだ。どおりでちょっと年齢が変だと思った。
「結局、最後まで見てあげることができなかった。それが私の後悔ね。そして、君が似てたから救おうとして自分勝手だけど償おうとした。馬鹿だよね、そんなことしても意味がないのに。」
「……」
俺は何も聲を出せなかった。
「さて、お話はおしまい。つまらなかった?」
「いや、大丈夫。」
「じゃあこっちからも聞いていい?」
「何?」
「……あなた一人でどうやってあれほどの被害をだしたの?」
その言葉にギクリとした。アフェクトゥスのことは言うべきだろうか。……噓を言っても意味ないか。
「実は俺、多重人格なんですよ。」
「……!」
「最近は治まってきたんですけどが高まると現れるんですよ。そのうちの1つの人格、アフェクトゥスにを貸してここまでやりました。」
「……人格ごとにステータスって変わるのかしら?」
「ああ、どうでしょう。」
「やってくれない?」
「そうですね。」
そう思い、アフェクトゥスに呼びかける。が高まるとと言ったが、あくまでそれは自的にだ。呼びかけて相手が同意できれば呼び出すことができる。
「アフェクトゥスだ。話は聞いている。ステータスオープン」
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新井 勇気(アフェクトゥス)
・職業
・種族 人間
・Lv.1
・HP 10000/10000
・MP 10/10
・攻撃力 10000
・防力 10000
・魔法攻撃力 1
・魔法防力 1
・素早さ 100
《魔法適》
《スキル》
・ Lv.Max
・算 Lv.4
・料理 Lv.3
《EXスキル》
・達人化 Lv.3
・言語理解
《稱號》
・異世界人
・一人格
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「完全に理攻撃特化のステータスだな。」
魔法に対して使えないし、守れない。HPの高さで戦うか、こんなに脳筋だったとは。しかし達人化のEXスキルがあった。
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スキル・達人化
効果・自分が裝備した武の技が上がる。
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結構シンプルなスキルだな。でも確かにさっき剣を持ったときも妙にちょっと手に馴染んだような気がした。アフェクトゥスのステータスが分かったから元に戻る。
「やっぱり人格が変わるとステータスも変わるのね。」
「そうですね。」
「……人格さえ使いこなせればいいのだけど、時間ってどのくらいかかるの?」
「人格によりますね。アフェクトゥスは結構速いほうですよ。人格によれば最悪1日かかるやつもいるかな。」
「1日……結構かかるわね。」
「最近使ってなかったのでさらに時間かかるかも。」
「もうそこら辺は慣れなのね。」
「そうですね。」
チュンチュン
小鳥のさえずりが聞こえる。ふと上を見上げれば空は明るくなり始めた。朝か。ずっと鉄格子の中にいた俺にとって朝という覚がとても久しぶりだった。
「そろそろ行くか。ここにいたらいつ追っ手が來るか分からない。」
「そうですね。人格については後で考えましょう。」
  
 そして、俺達は前に進んだ。
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