「もっと飲め飲め！」

「君は恩人だ。食べろ食べろ！」

時刻は夜。サイクロプスの村にて司の歓迎會として宴が行われていた。村には全員で二十程のサイクロプスがいた。ルギスがどう説明したのかは分からないが、司は村の全員からすごい歓迎をけている。ただ食べをあげただけなのに。司は驚くことしかできていなかった。話によれば、ルギスはこの村の長老の息子らしい。

テウスぐらいのサイクロプスは見當たらず、どうやら村に一だけの子供のようだ。やはり、村全員が親バカ？　のようなじになるのもうなずける。

でてくる飯も飲みもおいしく、司は激していた。あれ？　そういえばテウスはお腹を空かせている様子だったのに、どうしてこんなに飯があるんだ？　司は疑問に思ったが言葉に出すのはやめる。仮に相手が無理をしていたとして、それを聞くのは失禮だろう。

宴も終盤に差し掛かり、盛り上がりも収まってきたころ。司は木に腰掛け、一人で悩み事をしていた。これからのこと。どうすればさらに強くなれるか。花音を守るために。

「何か悩み事かな？」

突然聲をかけられる。司が聲の方を向くと、年老いたサイクロプスがいた。ここに來てから初めて見る顔だ。

「そうですね。俺は司っていいます。どちらにおられたんですか？」

「儂は長老のオルドと申します。このように老いぼれですので、こういうのはし抵抗がありまして。家にずっとこもっていました」

オルドは笑いながらけ答えをする。本當に良いおじいちゃんのようだ。近くにいると安心する。老いの影響なのか、何かひきつけるものがあるようにじた。

「オルドさん。実は…………………」

司はゆっくりと自分に起きたことを話し始めた。自分に何が起きたか、自分がどれだけ辛い思いをしたか初めて全てのことを伝えた。今まで他人にこの話をしたことはなかった。

「そうか。その若さでつらい経験をしたんじゃな。よく頑張った。よく頑張ったな」

司はオルドに抱きしめられる。司の目には、いつの間にか涙があふれていた。やはり、誰かに相談した方が心が楽になるらしい。司は実した。

「花音という子を守るためには、やはり自分の力を知ることじゃ。力に恐怖しているうちは、絶対に他人など守れん。力を使いこなすこと。それができれば君の夢に一歩近づくんじゃないのかな」

アインの言葉をオルドに伝えたわけではない。だが同じような言葉が返ってきた。自分の力を知ること。それが今一番の目標だ。

「余計なお世話かもしれんが、死なないからといって無理はしないことじゃ。生は心とでできておる。どちらが欠けてもいけないんじゃ。誰かにのために自分を犠牲にできる。それはとても素晴らしいことじゃが、危険なことでもある。覚えておきなさい」

「ありがとうございます」

二人の會話が終わると同時に、遠くからが近づいてくるのを見つけた。

「なんだあれは？」

司が首をかしげていると、オルドが大きな聲をあげる。

「人間が來る！」

オルドは急いでルギスのもとに走っていった。すると、ルギスが相を変える。

「人間が來るぞ！　急いで避難しろ！」

ルギスの指示で村の全員が移を始める。司が眺めていると、再びオルドが近づいてきた。

「人間が來る。あの服はこの付近の國の。インテグラル王國とは関係ないはずじゃ。ここに殘っても大丈夫だとは思う。一緒に行くか？」

「行きます」

司はし悩んだが付いていくことを決斷した。なんだかんだで居心地がいい。その場所を離れたくはない。オルドさんもいることだし。強くなるためには最高の環境だと司は思った。

移を開始して數分で、ルギスが何かに気づく。

「テウスがいない！　人間を怖がらないからこうなるんだよ！　みんなは先に行っていてください」

ルギスが急いで反転し、引き返していく。その後ろには村の全員の姿があった。振り返り、ルギスは戸ったったような表を見せたが、すぐに前に向き直る。全員で助けに行くようだ。それだけテウスは大切にされているのだろう。

「ここにいたらいい。人間と戦うのは見てられんでしょう」

オルドはそういうとルギス達についていった。ルギス達のさらに後ろを司はついていくことにした。