《死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜》第79話〜戦爭〜
新井の一件の後、魔王ベラから一通の手紙が屆いた。
三日後、魔王モンブランに選択を後悔させる。
シーラ平野にて力の差を教える。
という容だった。
全員が半信半疑ではあったが、ベラの住処が判明していない現狀ではその手紙を信じる他に手段はなかった。
「行きましょう。皆のことは任せます。バルクさん。ミナさん」
「勿論だ」
「任せてください」
三日後、司と全てのヴァンパイアはシーラ平野に向けて進む。その中にはアイネルの姿もあった。
司たちがシーラ平野についてから一時間後、突如開いたゲートからその軍勢は現れた。
「來ました!」
「軽く見積もって二萬ぐらいですか」
現れた魔人の軍勢は全てが鎧をに付け、規則正しく行進をしている。行進が止まると同時に、前方に三人の魔人が現れる。鎧の裝飾からして、幹部のような役回りであることは明らかだった。
「私達はベラ様直屬の戦士。そのリーダたるダラが宣言する。貴様はベラ様が君臨される世界に必要ない。魔王ベラ様の名において、魔王モンブランを粛清する。殺せ」
「「「うおおお」」」
魔人が一斉に司達の方に進行を開始する。ダラ達は先陣を進むのではなく、魔人の軍勢にのまれて姿を消す。
「嫌な気配がゲートから漂っています。油斷しないように」
「わかりました。では、作戦通りにお願いします」
司達は一気に上空に飛び上がる。
「死ね」
とても冷たい言葉と共に、ブラッド・レインを発させる。真紅の雨が平野に降り注ぐ。
「防魔法をれ」
魔人の軍勢はなれたきで何重にも防魔法をっていく。だが、そんなものは意味をなさない。真紅の雨はシールドを過し、接したものをへと変換していく。
次々と命が奪われていく魔人軍だが、歩みを止めることはない。
「「ブラッド・ライトニング」」
「「ブラッド・フレイム」」
「「ブラッド・ウィンド」」
全ヴァンパイアが後方から魔法で攻撃を始める。頭上からは真紅の雨。正面からは様々な魔法が魔人軍を襲う。
「クソッ」
司は地上に降り立ち、を吸収して接近戦に移行する。だが、魔人軍は歩みを止めない。まるで 司のことが見えていないように。ヴァンパイアに向かって進み続ける。
しばらくして、アイネルの言っていた嫌な気配が急激に濃さを増していく。司がゲートの方に目を向けると、一人の男が立っていた。
姿を見たことがない司でもすぐに理解ができた。この男は魔王に違いない。アイネルと司はアイコンタクトをわす。司は頷き、男の方へ加速していく。
「お前は魔王だな」
「そうだ。俺は研鑽の王ニアスという」
カキンッ
言い終わると同時にニアスは刀を抜刀して斬りかかるが、それは司の槍によって阻まれていた。
「お前もられている悲しい魔王なのかもしれんが、容赦はしない」
「られる? あの程度の魔王にられるものか」
「鬼人化」
司は鬼人化を発する。
「そういえば、仮面はどうしたんだ?」
激しさを増した斬り合いの中、涼しい顔をしたニアスは質問する。
「最近、久々に涙を流した」
「それがどうした?」
「その時に思い出したんだ。ある人との約束を。この世界は殘酷で、優しさなんて微塵も必要ないって。甘えは捨てた」
「そうか。ならよかった。手加減でもされているのかと思っていた。本気の奴を倒してこその戦いだからな。その方が、お前の絶の顔が楽しめる」
魔人軍の數は三分の一まで減っていた。だが、恐怖なく進みつづけた魔人軍はヴァンパイアの目前まで迫っていた。
「放て」
魔人軍は一斉に持っている武を投擲する。
「ブラッド・シールド」
放たれた武はシールドを容易く破壊する。
「全員回避に専念しなさい。嫌な予がします」
ヴァンパア達は高度をさらに上げて回避に専念する。だが、時すでに遅い。上空に向かって放たれた五千を超える武を全て避けることは不可能だった。アイネルの嫌な予は的中する。
一番初めに當たったヴァンパイアのが弾け飛んだのだ。だが、疑問を持ったのは魔人達の方だった。
一目のヴァンパイアは想定より遙かに下方で弾け飛んでいた。元々ヴァンパイア達が居た場所よりも下だったのだ。
その姿を見たヴァンパイア達は投擲に向かって盾を作っていく。魔法ではない。アイネルに投擲が當たらないようにを使ったものだ。
次々とヴァンパイアが弾け飛んでいく。數が二十まで減ったところで投擲は止んだ。
「高濃度の銀と呪いの武ですね。まさか、武だけにそのような施しをしているとは。鎧や盾に施しは行わず、私達を油斷させる。命を引き換えにしても」
「足止めが目的かと思っていましたが、まさか私達に勝ちに來ていたのですね。これは私が原因です」
「全員武に向かって走れ。一でも多くのヴァンパイアを殺せ」
魔人は投擲した武に走り始める。
「私の大切な子供達。ごめんなさい。私の中でゆっくりとお休みなさい。あなた達が繋いだこの命は無駄にはさせません。あなた達の意思はしっかりとけ取りました」
「王の前でこのような姿は見せたくなかったんですが。我儘は終わりにしましょう」
アイネルの穏やかな包み込むような雰囲気が消え、突き刺すような禍々しいものへと変化する。
「行きましょう。私の子供達。遙か昔より、上位種として君臨してきた種族としての力を見せ付けるのです」
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