司は歪みに向かって加速していく。だが、歪みは徐々に小さくなっていく。

「逃さんぞゴミ屑」

司は全力で腕をばす。それは何事もなく空気を切り裂く。司は間に合わなかった。後一歩のところで、歪みは完全に消えていた。

「クソがあああ！」

司のびは地面をえぐり、付近にいる生全てに恐怖を與える。

「危なかったですね」

「ええ。流石にあれがここに來てたら無事ではなかったわ。でも、これで魔王は二も減った。オルを失うのは痛いけど、二アスは裏切りそうだからちょうど良かったわ。最終的にこの世界を支配するのは私なのだから」

「流石ベラ様」

「「ベラ！　ベラ！　ベラ！」」

ベラの発言に歓聲を上げる魔人たち。その中の一人が異変に気が付く。

「ベラ様。ゲートが！」

ベラは指をさした方に振り向く。すると、閉じたはずのゲートが再び開き始めていた。

「なんで。ありえない。一度消えたら座標の特定なんて絶対にできない。まさか・・・」

司はありえない覚に襲われていた。非現実的だが、一度経験したことのある覚。が自然に巻き戻っていく。一切抵抗はできず自分のでないようだ。巻き戻っていくのと同時にゲートも再び出現する。

もう一度飛び込め。今度は屆く。

司の頭に聲が響いた。が自由になると同時に司は再びゲートに向かう。今度はゲートにることに功した。

「戦闘態勢よ。全員武をとりなさい」

ベラが最悪の事態を想定して指示を出す。

ドカーン

音とともにベラの想定した最悪の事態が現実となる。

「あえて嬉しいよ。ベラ」

「ベラ様。お逃げください」

司に斬りかかる魔人達たち。だが、ただ一人の例外もなく骸と化す。

「逃げるなよ」

作り出したゲートにろうとするベラの首を背後から鷲摑みにする。

「仲間を。クラスメイトを。花音を。殺した。殺そうとしたお前は絶対に許さない。死ね。魔王ベラ」

そのまま首を握り潰す。床に落下したベラの頭は憎たらしく笑っている。

「死ぬ前に勘違いをといておきましょう」

頭だけとなってもべラはまだ生きていた。

「私が殺した？　殺そうとした？　違うわよ。貴方が殺したの。私は何度も手をとるように言った。なのに、貴方はそれを拒絶した。し我慢すればいいだけなのに。しょうもないプライド。その場の怒りにを任せたせいで大勢が死んだのよ」

「「「人殺し」」」

「「「人殺し」」」

「「「人殺し」」」

今まで倒した魔人達も急に口を開けて次々としゃべり始める。

「いや、そんなことは」

頭を抱えて地面に倒れ込む。ベラの聲は心の奧までり全てを否定する。

「後悔し続けるといいわ。死ぬまで。いや、貴方は死ねなかったわね。終わらない苦痛を味わいなさい」

「「「人殺し」」」

「「「人殺し」」」

「「「人殺し」」」

俺が悪いのか。俺が。俺が。俺が。俺がいなければ・・・。

違うよ。司は私を守ろうとしてくれた。だから、司は悪くない。自信を持って。

懐かしい聲が聞こえた。長らく聞いていない。優しくて、強くて、包まれるような聲。

「ベラ。確かに俺はたくさんの人を殺した。だが、そんなことは二の次だった。花音が無事なら何も問題はない」

刀でベラの頭を細切れにする。

「みんなごめん。花音が生きるための犠牲となってくれてありがとう」

司の頭の聲で聞こえたものが本當にその人の意思だったのか。自分を肯定するために生み出したものなのか。それは誰にも分からない。