《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第6話 チートな裝備
――朝の日差しで段々と意識が戻ってきた。
「いつの間に寢ていたのか……」
ベッドから起き上がり、窓を開けると気持ちの良い風がを通り抜けていく。
背筋をばし十分に眠気を飛ばした後、羽織ったままのローブ姿で部屋の鍵を閉め、下の食堂に向かった。
すでに食堂では朝食を食べるために宿泊者たちが揃って食事をしていた。俺に気づいたラミィが笑顔を向けてくる。
「あ、トーヤさん、おはようございます! 昨日の夕飯食べに降りてこないから心配したんだよー?」
ラミィの言葉に「疲れて寢ていたみたい」と伝えカウンターに座った。
すぐに朝食のスープとパンが目の前に置かれる。
「昨日食べてないから、多くしておいたよ?」
他の人より一回り大きいに並々と注がれたスープと3つ置かれたパン。他の人を見比べても倍近い量だった。
「……いただきます」
し苦笑しながらもスープを掬い口に含むと、野菜の味が染み込んでとてもやさしい味だった。
空腹が後押ししたのか、十分も経つと目の前に置かれた皿は何もなくなっていた。
食事を済ませ手を合わせ「ごちそうさまでした」と言う俺に、ラミィは首をを傾げる。
「変な挨拶? それってトーヤの故郷の挨拶?」
「うん……そうだね……」
「トーヤ、変なの」
笑顔のラミィは配膳に戻って行く。俺は軽く手を上げ挨拶をして部屋に戻った。
ベッドに寢転びギルドカードを取り出して眺める。そこには所屬している國が書かれていた。
「召喚された國が確かジェネレート王國って言ってたよな。やっていたゲームでも出ていた國だ。でも、ここはサランディール王國。街の名前はフェンディーか……。聞いたこともない名前だ……。ゲームと同じ世界? それとも別の……でも、次元収納ストレージが使えるってことは……うわぁぁわからねぇ!」
頭を抱えて悩むが結果は出ることはなかった。ギルドカードを次元収納ストレージに仕舞うと、これから先どうするかについて考える。
「元の世界に戻るためにはどうすれば……その前に戻れるのか……? それともこの世界で一生……それも悪くない……かもな」
 若返った、一生懸命キャラメイクした顔、前世と比べるまでもなかった。
「まずは……生活基盤を作るために……そういえば、倉庫にしてたこの次元収納ストレージの中って何がってるんだろう」
ゲームの中ではレベル300位まで使っていた武や裝備、しレアなアイテムなどを無造作に詰め込んでいた。脳裏に浮かぶアイテムたちの名前を思い出すように調べていった。
「これは……うーん。これは使えそうだな……」
次々と次元収納ストレージより出されるアイテムがベッドに並べられていく。
強化や魔力強化の指やネックレス、バングルなど能力を確認し厳選していく。
「これは……」
手に取った指は、赤い石がはめ込まれた銀の指で初心者救済用の指だった。その効果は――レベル100までは経験値100倍という効果がついていた。
高レベルのキャラクターが増えたことで、初心者とのバランスが崩れたことにより、運営から調整のために配布されたアイテムだった。
「この効果も使えるのかな……。これがそのまま使えるなら……」
俺はを鳴らし、恐る恐るその指をはめ、他にもバングルやネックレスなど必要と思われる裝備を見繕って部屋を出た。
ラミィに伝えコクヨウを出してもらうと、廄舎で退屈したのか、いきなり俺の頭を甘噛みしはじめる。
「やめろって……退屈してたのか? これから外に出るから頼んだよ」
コクヨウの首をでてあげると気持ちよさそうに目を細め、そして……また甘噛みする。
俺はよだれの付いた頭をローブの袖で拭きながら街の外へと向かっていった。
門兵に軽く挨拶をして門を出る。そして、コクヨウにると前日に聞いていた魔が出る森へと走らせる。
コクヨウは普通の馬とは全く違う次元のスピードで路を駆けていく。
馬で一時間と言われていたが、三十分もしないうちに森のり口へと辿り著いた。
「あっという間に著いちゃったな……。さすがコクヨウってことか……」
鼻を鳴らし、尾を振りながら「どうだ?」と言わんばかりの表をするコクヨウに「お疲れさん」と聲を掛け、首をでてやる。
「これから、魔を探しに森へってくる。ここらへんで自由にしててくれ。水は出しておくな」
桶を次元収納ストレージから取り出すと、そこに生活魔法を使いチョロチョロと水を貯めいてく。
生活魔法は昨日本で読んだ初級魔法に書かれていた。頭にインプットされたものは苦も無く唱えられるようになっていた。
コクヨウは水を軽く飲むと草原を楽しむように走り始めたのを確認し、戦闘の準備を始めることにした。
「魔法簡単のでも使えると便利だな……攻撃魔法は使えないけど……。あとは武か……」
次元収納ストレージから取り出したバスターソードを持ち、軽く剣を振りを確かめる。
「これでよしと……まだレベル1だから無理はしないようにしないとな。回復魔法は使えるけど……」
目の前の森は高さ十メートルを超える木々が立ち並び、その奧は薄暗くじる。
そして森へと一歩を踏み出した。
慎重に森へと進むと、すぐに魔は見つかった。
コクヨウが殲滅したゴブリンだった。三のゴブリンが獲を探すかのように棒で草木をかき分けている。
とっさに木の裏に隠れ、その様子を伺う。俺に気づく様子もなく通り過ぎていく。
そして……剣を強く握りしめ、後ろから斬りかかった。
グサッ
ゴブリンの背中を一閃すると、肩からずれていきゴブリンはそのまま息絶える。いきなり現れた敵に殘りのゴブリンは奇聲を上げ棒を構えた。
その二にも一気に襲い掛かり一瞬のうちに切り捨てた。
倒れている三のゴブリンに視線を落とし、倒した事への安堵の息を吐く。そしてにやりと口角を上げる。
「こんなもんか……でも……ゲームとは違う……このリアルさ……堪らない……」
その時、中から力が漲るようにじた。
「もしかして……」
咄嗟にステータスを確認する。
◇――――――――――――――――――――◇
【名前】トウヤ・キサラギ
【種族】人間族
【別】男
【年齢】16歳
【職業】回復師プリースト
【稱號】召喚されし者
【レベル】6
【特殊スキル】神眼 全屬魔法使用可 全スキル取得可
【スキル】剣
◇――――――――――――――――――――◇
レベルが上がっていた。
「ゴブリン三でレベルが5も上がってる。この指の効果はそのままなのか……」
俺は左手の中指に填められた経験値倍増の指を見て、さらに笑みを浮かべる。
「よし、廃狩りだ。廃人なめんなよ……」
そう言って俺は、証明であるゴブリンの右耳を切り取り、袋にまとめて次元収納ストレージに収容し、さらに森の奧へと進んでいった。
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