《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第22話 冒険者ギルド
部屋の鍵を締め、食堂に降りていくと、すでに護衛をしていたメンバーが揃っていた。
「トーヤ、遅いぞ!」
ルミーナたちに頭を下げ、空いている席に座る。すでに注文は済んでおり、すぐに各自へとエールが配られた。
全員に配られたのを確認したルミーナが立ち上がり、乾杯の挨拶をする。
「それでは無事にダンブラーにつくことができた! 明日は自由時間で構わない。今日は飲むぞ! 乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
乾杯の合図で、それぞれがジョッキを煽っていく。
しかしヌルい……。この世界ではこの常溫のエールが普通だが、前世でキンキンに冷えたビールを知っている俺には足りない。
こっそりとテーブルの下で魔法を使い、ジョッキを冷やしてから一口含んだ。
やはり冷えたエールのほうが味い。思わず笑みを浮かべてしまう。
満足そうな顔をしている俺に気づいたのか、ルミーナが聲を掛けてくる。
「トーヤ、お前、こっそり何やってるんだ?」
その言葉に、他の皆の視線が集まってくる。
そりゃ、ジョッキをテーブルの下に隠していれば気づくよね……。
「いや……ちょっと……何でもないですよ?」
その態度に、俺の持っていたジョッキはルミーナに取り上げられた。
「お前……このジョッキに……って何だこれは!?」
冷えたジョッキにルミーナは驚きの表をし、そのまま口へと持っていく。
流し込んだ冷えたエールに驚愕の表をする。
そして――自分のジョッキを無言で、俺の前へと持ってくる。
「――はい……」
ため息をつき、ジョッキを冷やしていく。
冷えたジョッキをルミーナは一口飲み満足そうな表をする。
「一何をやったの!?」
他のメンバーが食いつかない訳がなかった。各自のジョッキが俺の前に並べられ、メンバーは期待の眼差しを向けてくる。
諦めた俺は全部のジョッキを冷やしていった。
「何これっ!? うまっ!?」
「冷えてるとこんなに味しいんだ……」
出てきた料理を摘みながら、冷えたエールをあおっていく。
冷えて味しくじるエールは、消費されていくスピードも早くなっていく。
二時間も経過した頃には、全員が出來上がっており、ミルカはすでに酔いつぶれている。
「トーヤ! お前、毎回ついてこい! そして私の為にエールを冷やせ!」
気なルミーナにヘッドロックされ、無茶振りをされるが苦笑するしかない。
ある程度の時間になり、解散となったが、皆が千鳥足になりながら部屋へと戻っていく。
俺も久々に楽しく飲んだことで、酔いがまわったのか、ベッドの倒れこむとそのまま意識を失っていた。
窓から差し込む日差しで目が覚めた。昨日の飲みすぎた影響か、二日酔い気味のに解毒魔法キュアを掛けベッドから起き上がり、清潔クリーンの魔法を自分にかけた。
この世界では、清潔クリーンという生活魔法があり、魔力がある程度ある者なら誰でも使える。
だから、風呂は貴族や豪商などの趣向品となっている。例え魔法を使えなくても、宿屋の店員に必ず使える者がおり、有料だが掛けてもらうこともできる。
「この魔法便利だけど、やっぱり風呂だよな……早く家に帰りたい……」
そんな事を思いながら朝食を済ませ、今日は一日自由時間なので外に出ることにする。
結局、食事をしている間、誰も起きてくることはなかった。
……あれだけ飲めば……な。
思い出して苦笑しながら、宿屋の店員に出掛ける事だけ告げ宿を後にする。
ダンブラーの街は、フェンディーの街より規模は小さく、三千人の住民がいる。目立つ名産品はなく、フェンディーの街と南の街の易場として潤っている。
街を歩き並べられている商品を眺めながら歩いていると、フェンディー街にもある看板が視界にってくる。盾と剣が象徴の冒険者ギルドだ。
無理して依頼をけるつもりはないが、どんな依頼があるのか気になり中へとっていく。
ギルドの造りは大小変わるが基本的な造りは一緒になっていた。
朝はやはり依頼をける冒険者で溢れている。俺はのんびりと依頼がりだされている掲示板を眺めた。
やはり森が隣にあるだけに、素材の依頼と護衛がメインとなっており、低ランクの若い冒険者たちも掲示板の前で味している。
そんな者たちを後ろから眺めていると、急に後ろから肩を叩かれた。
振り向くとそこには――まだい子供がいた。
どこから見てもまだ十歳にも満たない。しかも泣きそうな表をしている。
なりはお世辭にもいいとは言えない。ボロをに纏い顔も薄汚れている。
「どうした? こんなところで……ここは冒険者ギルドだよ?」
しゃがみ込み視線を合わせ問いかけると、ポケットから銅貨を三枚取り出した。
「お兄ちゃん、回復師プリーストだよね……? 僕のおねーちゃんが合が悪いの。このお金で助けてしい。誰もお願いしても駄目だって……」
目に涙を浮かべお願いしてくる年の頭をでる。
「――いいよ。お願い聞いてあげる。案してくれるかな?」
「えっ!?  本當!?」
俺が立ち上がり、笑みを浮かべ頷くと、年も涙を拭き満面の笑みを浮かべた。
そのまま年に案を促すと、後ろから急に肩を摑まれた。
「オイオイ、スラムの鬼の相手なんてするんじゃねーよ。しかもお前――見ない顔だな?」
振り返ると、そこにはし柄の悪そうな冒険者三人組が、うすら笑いをしながら立っていた。
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