《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第2話 逃避行

「あと、もうちょっとで森を抜けられるはず! シャル! 頑張るんだ」

二人のまだ人したばかりのが、薄暗い森を駆け抜けていた。

一人は薄汚れた白銀の鎧を著て、片手に剣を持ち、もう片手で一人のの手を引く。

騎士の格好をしているが、顔も薄汚れ、それを特に気にした様子はない。

二人とも疲れからかすでに満創痍であり、肩で息をしながらも終わりの見えない森を進む。

「アル……ちょっと休憩させて……。もう一歩も歩けない……」

もう一人のーーシャルはすでにボロボロとなったドレスを著ており、歩き難いのか、膝下で破られていた。

肩で息をし、アルに手を引かれながら森の中を慎重に進んでいた。

「わかった。し休憩をしようか……、追っ手も撒いたし、この森を抜けたら王國だ、ナタリー様がいる」

二人は木に寄りかかり座り込む。

白銀の騎士、アルは周りの警戒を怠る事なく、すぐ手に剣を持てるようにしていた。

(街まで行けば……、ナタリー様にさえ會えればきっと……)

アルはそう思いながら、息を整えていく。

二人は幾度となく戦いを潛り抜け、荷はアルが持っている魔法鞄マジックバッグのみ。

バッグから水がった袋を取り出し、シャルに手渡す。シャルはけ取った水袋でを潤していく。

シャルは飲んだ水袋をアルに手渡し、アルもを潤した後、鞄に仕舞い込む。

(まさか、父が――負けるなんて……)

アルは苦蟲を潰したような表をし、悔しさを噛みしめる。

――一ヶ月前

突如としてジェネレート王國の侵略は始まった。

いつものようにジェネレート王國が、ルネット帝國に戦爭を仕掛けた。

ここ數年、小競り合いは合ったが、本格的な戦いはなかった。

しかし國の考え方の違いから、お互いの國は手を取る事はない。

ジェネレート王國は人族至上主義、人族以外は全て奴隷であった。

反するようにルネット帝國は人族、獣人族、森人族エルフ、小人族ドワーフが共に手を取り、國を運営している。能力があるものは種族を問わず登用されている。

魔法に長けた、森人族エルフは宮廷魔師、能力の高い獣人族は騎士、そして小人ドワーフは作り、平均的な能力の高い人族は文など。

それぞれ得意分野を上手く活かし國を繁栄させていた。

侵略の知らせをけ、すぐに騎士や魔師など、兵士が招集され國の防衛にあたった。

しかし數日後には――兵士は全滅に近いほどの敗北をし、街が占領されたという慈悲もない報告がされた。

ルネット帝國の帝都からは、ジェネレート王國との國境線から二十日ほどの距離しかない。

日々、敗戦の報告をけた皇帝は決斷をする。

「――ガレット……頼んでもいいか……?」

「陛下、私が出陣します」

皇帝の言葉に、隣に立つ一際豪華な白銀の鎧を著た騎士が答える。

白銀の騎士、ガレット・フォン・ミルダは皇帝の守護の為、近衛騎士団長を務めていた。

ルネット帝國最強の騎士として名を馳せ、國民からの信頼も厚い。

ガレットを筆頭に、近衛騎士を始め、最高戦力が城を出陣していった。

出陣を見るために、帝都は人で溢れ、その雄姿を見ようと集まる。

今までに最強の騎士ガレットが出陣した場合は負けることはなかった。

國民もまた勝利の報告を待つために騎士達を見送った。

――そして數日後、ガレットが敗れた事と、ガレットを討ち倒した“勇者”と呼ばれる者が現れた事が伝えられる。

裏に報告をけた皇帝は、數人の騎士をつけ、皇――シャルロットと、ガレットの娘、アルトリアをサランディール王國へ避難させる事を決斷した。

同時にサランディール王國への応援依頼の手紙を認め、外と共に國を発たせた

「――なんで……、私もお父様と一緒にこの國を守ります!」

憤慨するシャルロットに大きなため息をつき、騎士に指示を出す。

「アルトリア、シャルロットの事を任せたぞ……必ず、ナタリー殿の元へ送り屆けるのだ」

意、必ずお屆けいたします」

「ガレットが破れるとはな……、お主にも済まない事をした……」

頭を下げる皇帝にアルトリアは焦って頭をあげるように伝える。

「陛下、父は役目を果たしただけです……でも、悔しいです……」

涙を零さぬように悔しそうな表をするアルトリアは、一禮をしてから、嫌がるシャルロットを騎士二人に摑まれて、運ばれていった後を追う。

「――シャルロットの事頼んだぞ……」

シャルロットを乗せた馬車はサランディール王國に向かったが、ジェネレート王國の手は早かった。

追っ手に追われながら、皇を逃がす為に、護衛の騎士が盾になっていく。

馬車を捨て、森へと逃げた時には、すでに護衛の騎士はアルトリア一人となっていた。

「もう無理よ、アル……」

「皇様! いや、シャル! そんな事言ったらダメです。きっと……きっとナタリー様が會えれば……」

「ナタリー様がサランディール王國のどこにいるかもわからないのに……」

「それでも諦めたら、この國の為に戦ってくれた兵士たちは、シャルを逃がす為に盾になってくれた騎士たちは……。みんなの為にもシャルは生き殘ってナタリー様に合わないといけないのです」

「――そうよね……みんなのためにも。アル、お願い。ナタリー様に會えるように……」

「はいっ! 私が必ずナタリー様の元へお屆けしますから」

二人は微笑み頷くと、生い茂った森へと踏み込んでいくのであった。

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