《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第11話 ギルド職員の苦労

座ったエブランドは鎧を見つめ、そして俺に視線を向ける。

「どうして戦闘になったんだ。聞かせてもらえるか?」

その眼差しは真剣そのものだ。

「実はオークの群れと戦った時に――――」

オークに襲われそうになっていた二人を救った後、兵士たちが現れ、越境しているのを隠すために殺されそうになったこと。

その兵士たちを始末して全て次元収納ストレージに保管してあることを伝えた。

もちろんシャルとアルの二人を追ってきたとは言うつもりはない。

エブランドはため息をつき背もたれに寄りかかる。

「……そうか、それなら仕方ないな」

「しかし、サブマスター、もしかしたら……」

「うむ、ギルドマスターと、領主様にも話をしておく必要はある。流石にこのまま惚ける訳にもいくまい」

しの間無言が続いたが、エブランドは諦めたように口を開く。

「すまんが、兵士のしの間、預かっていてくれ。私の方から街の上層部に掛け合ってみよう。それと冒険者のはすぐにでも引き取ろう」

「わかった。案してくれればそこで出す」

話が終わると、エブランドは席を外し、ミリアの案で地下室に案された。

「こちらにをお願いします」

ミリアの言葉に頷き、二人のを出す。白いシーツで包んでいるが、染み出たで赤く染まっていた。

「トーヤ様、ありがとうございます。ギルドカードがあるので、がいればギルドで引き渡しを行います。いない場合は共同墓地に埋葬をする事になります」

「わかった。それで……魔の素材は? 結構な數があるんだが……」

「それは倉庫で……また怒られるかもしれませんが……」

ミリアの言葉に思わず苦笑してしまう。以前も大量の素材を持ち込んで止められていたからな。

同行して倉庫に行くと、そこまで素材は溜まっていなかった。

しかし、倉庫にダロックが俺の顔を見ると引きつらせた。

「おい、ミリア……もしかして……」

その言葉にミリアは大きく頷いた。

「おいっ! お前ら! 作業を一度やめてこっちに集まってくれ」

ダロックの言葉に三人の職員が集まってくる。

「よし、トーヤ、出してもいいぞ。ギルド職員は基本的に口は堅い。気にしなくていい」

俺は頷くと次元収納ストレージから次々と魔の素材を出していく。

……まずは今回の素材と。ついでに溜まっていた素材も出しちゃうか。

そんな事を考えながら魔を並べて行くと、小山が一つ出來たところで職員たちから「おお、すげぇ」と聲が上がる。

しかし、その山が三つ目になったところでダロックから聲が掛かる。

「待ってくれ! そこまでだっ! これ以上は無理だっ!! どんだけの容量があるんだっ」

職員たちも想像以上の多さに唖然としている。

「ミリア、今日はもうこれで限界だ。誰か、ギルドの魔法袋いくつか持ってこい! お前ら、當分殘業だからな!」

職員たちからは非難の聲が上がるが、俺は聞かない振りをする。一人が魔法袋を取りに走っていく。

「あ、これだけは出させてくれ」

そう言って、オークジェネラル、真っ二つにしたオークキングを取り出した」

「とりあえずこんなもんで」

満足してダロップに視線を送ると、目元がピクピクと震えている。

「……キングにジェネラルじゃねーか……。 こ、これをトーヤ、お前一人で……」

頷くと、ダロップは大きくため息をついた。

「ミリア、換金の書類は明日以降だ。これの処理をしちまわないとな。お前ら仕分けからやるぞっ」

「「おうっ」」

作業にった職員たちを見て、またミリアに個室に案される。

「トーヤ様、流石にあの量とは……。換金には暫く時間をください」

「それは構わない。別に今は資金に困っていないからな」

「あと、例の件ですが、ギルドの対応が決まったら教えますので、たまには顔を出してくださいね」

「あぁ、暫く依頼はけるのを控えるつもりだが、ギルドには顔を出すようにするよ」

「はい、よろしくお願いします」

ミリアに挨拶し、ギルドを後にする。

居候が増えたから食材でも買って行くか。と思いつつ市場に立ち寄り屋敷へと戻った。

「ただいま」

屋敷に戻ると、まずはフェリスが迎えてくれる。

「……おかえり、トーヤ」

「ただいま、フェリス。二人はまだダイニング? それとも部屋に?」

フェリスは無言でダイニングの方を指差す。

「ダイニングね、ありがとう」

フェリスの言葉に頷き、ダイニングにる。

「二人ともただいま」

「お帰りなさい、トーヤ様」

「トーヤ様、お帰りなさい!」

「……遅いぞ、トーヤ」

ダイニングには帰ったはずのナタリーもいた。

「ナタリーも來てたのか。ギルドに報告に行ってた。一応、調査の依頼だったからな」

皆は紅茶を飲んでいたので、俺も自分の分の紅茶をれ席に座る。

「そうじゃったか、ギルドはどうじゃった?」

「一応報告はしてある。あくまで越境したジェネレート王國の兵士とかち合わせして、証拠隠滅のために襲われたから戦ったとな」

「……それなら問題はあるまい。それでな、トーヤ、わしもこの屋敷に住む事に決めたぞ」

予想外のナタリーの言葉に、思わず口に含んだ紅茶を吹き出した。

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