《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第12話 居候

「なんでこの屋敷に住む必要があるんだ……?」

盛大に吹き出した紅茶を拭きながら俺はナタリーに尋ねる。

「二人の保護はこの屋敷が一番安全じゃ、それに――王國の話も聞く必要がある。他にもあるが……」

確かに部屋は余っているし、フェリスも俺が家主である限りは追い出されることもないから特に問題はない。

悩んでいると、シャルが立ち上がり頭を下げる。

「トーヤ様、私からもお願いいたします。ここに置いていただけないでしょうか」

同時にアルも一緒に頭を下げる。

二人に頭を下げらお願いされたら、頷かない訳にもいかない日本人男である。

「わかった……。部屋はまだ空いているし問題はない、でも店はどうするんだ?」

「とりあえずはここから通うことになるじゃろ。そのうち――いや、決まってから話す。今はお主が二人に手を付けないための監視だと思ってくれてよいぞ」

「つ、つけねーよっ!」

ナタリーの言葉に即座に俺は否定する。

確かに二人とも人だ。今の俺の年齢からしてみたら釣り合う年齢かもしれない。

しかし……どう見てもシャルは貴族令嬢、アルも騎士とは言っているが、もしかしたら同じように貴族かもしれない。

屋敷を構えているとはいえ、こんな冒険者のところに長くいることはないだろう。

その前に面倒な事に巻き込まれそうだしな。

「とりあえずはゆっくりしてくれ。俺は風呂に行ってくる」

その言葉を殘し、ダイニングを後にする。

「ふわぁぁ……気持ちいい……」

広い湯船に浸かり疲れを癒す。數日家を空けただけだったか、々ありすぎて神的に辛かった。

湯船に浸かりながらこれからの事を考える。

……もう元の世界には戻れないな。

自分の手で人を殺した――。

もし、日本に帰れるとしても、このは消えることがないだろう。

”死”というものにれ過ぎたかもしれない。

そんな事を考えながら俺は口まで湯船に沈んだ。

◇◇◇

トウヤが浴室に向かった後、殘った三人は真剣な表でテーブルを囲んでいた。

「それで……國の様子はどうなんだ?」

ナタリーの言葉に、二人の顔は悪くする。

ぽつりぽつりとアルが戦況を報告していくと、次第にナタリーの表まで暗くなっていく。

「――――そうか、ガレットも逝ったか……。あれはいい男じゃったのだがのぉ。あれに勝つ者がおるとすれば、他の者ではどうにもならんじゃろ」

大きくため息をついたナタリーは紅茶を一口飲む。

「お父様からアルと一緒に手勢を付けられて、すぐにナタリー様のところへ向かうようにと。私も細かい話は聞いておりません……」

「あの”勇者”という者がどんな存在なのか……。私は――父の仇をとりたいです」

拳を握り悔し涙を流すアルに、そっと後ろからシャルが手を回し背中をる。

「わし一人の力ではどうにもできん。かといって、この國はかないじゃろう。もっと強い存在がいればまた話が別だが……」

「――――トーヤ様。トーヤ様の力を借りれば……」

シャルの言葉にナタリーは首を傾げる。

「トーヤ一人では、意味がないであろう? 所詮は一人の人間じゃ。十も相手にすれば限界になる」

「いえ、トーヤ様の力の底は見えておりません。あの戦いの中でも、まだ実力を隠しているかと」

「――なんと? 聞いても良いか? トーヤの戦いを」

アルの言葉に、ナタリーが食いつく。

ナタリーもトウヤの事はそれなりに実力があるとはじていた。

知らない知識も多くあり、食事に関しては特にそう思っていた。

思い出しながらアルは戦いの事を説明していく。

「――そこまでの実力なのか、トーヤは……」

「はい……。しかもその強さでまだレベル17だと。私も信じられませんでした」

騎士の立場としてあの戦いを思いだしても、とてもレベル相応の実力には見えなかった。

確かにギルドカードに記されていたレベルはまだ低かった。アルよりも低い。國の騎士の誰一人として勝つ事はないであろう。

しかもあのカードを偽裝することは不可能なのは世界共通の認識であった。

それでもオークとの戦闘、兵士との戦闘を見てもとてもレベル相応とは思えなかった。

「たしかにトーヤ様の実力については……。アルが思わず婚姻を申し込んだくらいですしね」

「?!……だ、だって……あの戦闘を見たら……」

笑みを浮かべ話すシャルに、アルは顔を真っ赤に染める。

「獣人が思わず婚姻を申し込むほどか……。うむ、それも良いかもしれんな。あやつはそこそこいい男だしのぉ。わしが相手するのも良いが、どうも人族にはわしが魅力的に映らんらしいのじゃ。 こんな魅力的なはずなのに……何故じゃ?」

ナタリーの言葉に、シャルとアルの二人の表を引きつらせる。

自分たちの親を“坊主”扱いする程の年齢なのは両親から聞いていた。

しかし十年ぶりに會った二人の印象は『まったく変わっていない』であった。

「でも、トーヤ様は確かに魅力的ですよね。年齢より大人っぽいですし、しかもあの強さ。私も王族のしがらみがなければ……」

「えーーっ!? シャルもっ!? そんなの見せなかったのにっ!」

頬を染めるシャルの言葉にアルも驚きの聲を上げる。

「二人ともまだまだじゃな。トーヤが選ぶとしたらわしじゃ! この大人の気でな!」

「「ありえないっ!!」」

「なんでじゃぁぁぁ!!」

トウヤが風呂にっている間に、子トークは盛り上がっていくのであった。

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