《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第20話 ナタリーのレベル
覚悟は出來た。
俺はこれからの予定を説明していく。
「早々にこの街を出ようと思う。二人のレベルも十分に上げたつもりだ。俺もしながら國を取り戻す助力をするつもりだ」
俺の言葉に、シャルとアルの二人は驚きに目を見開く。
「そ、それじゃぁっ!?」
「あぁ、付いていくつもりだ」
二人は立ち上がり、深々と頭を下げる。
「トーヤ様……ありがとうございます」
「トーヤさん、ありがとう」
明日からの予定を決めていく。まずは、市場で旅に必要な食材などを買っていく。テントなどは、俺のアイテムを使用すれば問題ないだろう。
そして、明日からの為に早々に床に著こうと思ったが、ナタリーから聲がかかった。
「トーヤ、まずは謝する。お主になら、これを授けてもいいじゃろ。わしも長年に渡り調べたが、未だに解読できない書だが、お主ならもしかしたら……」
ナタリーはそう言うと、一冊の本を取り出しテーブルに置く。
「……これは數百年前に召喚された勇者が殘した書だ。何が書いてあるかわしにもわからん。わしが帝國で宮廷魔導師をしていた頃に手にれたものじゃ」
俺は本を手にとりページをめくる。
そこには――――。
日本語・・・で書かれた書だった。
俺はしだけ驚き、冷靜を保つように一枚ずつページをめくっていく。
そこには日記と、この世界に辿り著いてからの出來事、魔法についてなど多岐に亙って書かれていた。
読み進めていく俺に、ナタリーは口を開く。
「……お主、それが読めるのか……?」
「…………あぁ、読める」
俺の言葉に三人は驚きの表をする。
「トーヤ、お主……勇者なのか……?」
絞り出すような聲で問いかけるナタリーに、俺は首を橫に振る。
「いや、俺は勇者ではない。勇者はジェネレート王國で召喚された奴で合っている。俺は……間違って王國に召喚され、そして放逐された回復師プリースト、いや、今は――――賢者・・だな」
「何っ!?……賢者だとっ!? もしやっ!?」
驚くナタリーに理解ができないシャルとアルが首を傾げる。
「ナタリー様、賢者とは……? ナタリー様も賢者と名乗っておりましたよね?」
シャルの言葉にナタリーは頷き、そして口を開く。
「知らぬのも無理はない。わしは、職業は『魔法師マジシャン』じゃ。しかし、長年の経験で誰よりもレベルが高いからこそ、自分で『賢者』と名乗っている。しかし、職業は賢者ではない。もしや、トーヤ、お主の職業は賢者なのか……?」
ナタリーの問いに無言で俺は頷く。
その瞬間、立ち上がったナタリーは俺に飛びかかってくる。
「トーヤ! どうやって賢者になったのじゃ!? わしがエルフの里に伝わる古代書で書かれていた『智の頂である賢者』という言葉を知り、それを長年ひたすら目指し、周りからも言われるようになった……。しかし、結局は賢者になれないままじゃ……。教えてくれ……どうやったら……」
俺のぐらを摑み、涙を流しながら必死に問いかけるナタリーの頭をそっとでる。
「し落ち著け。説明するから……」
紅茶を一口飲み、を潤せた後、俺は説明を始める。
「この世界のレベル制度は理解しているだろ? 賢者になる為には條件がある。その為には――」
レベルが上限に達した者だけが選ぶことができる『転職』を説明していく。
今ある職業のレベル上限を迎えた時に上位職を選択する転職畫面が出て來こと。
俺の場合は魔法師マジシャン、回復師プリーストを上限まで極めた時に上位職への転職が出來たこと。
転職をするとまたレベルは1に戻り、最初からレベル上げをする必要はあること。
レベルは最初に戻るが、ステータス的な要素は変わらず、能力は変わらないこと。
人によって選べる職業は決まっており、適正がない場合は選ぶことは出來ないこと。
「――今わかっているのはそんなとこだ……」
真剣に説明を聞いていたナタリーはを震わせていた。
「ナタリー……?」
俺の言葉に顔を上げたナタリーの表は歓喜に溢れていた。
「……トーヤ、お主はその歳にして、その辛い修行を一人で……」
……いや、ごめん。チートアイテム使いました。経験値100倍とかとんでもないものを。
「わ、わしは……魔を百年以上倒し続け、やっとレベル72じゃ。ここまでくるだけでも相當に苦労したのじゃ。それを転職して最初からやり直すなど……。でも、お主のおかげで道が見えたのじゃ!」
笑顔を浮かべるナタリーと違い、シャルとアルの二人の表は暗い。そして俺も顔をひきつらせる
その表にナタリーはすぐに気づいた。
「……三人ともどうしたのじゃ……?」
理解できないナタリーは首を傾げる。
うん。やり過ぎたかもしれない。
しかし、それは打ち明けていいものなのだろうか。
そう思っていたら、アルが口を開いた。
「ナタリー様はレベル72なんですね。父もレベル55と以前聞いた事があります」
「そうじゃ、あの小僧は國では一番の強者であったからのぉ」
「あのぉ……私、レベル74なんです。シャルはレベル76だっけ……?」
「……はい」
二人の言葉にナタリーの表は固まった。そして、ロボットのようにカクカクとこちらを向く。
その目は歓喜の表ではない。
羨、いや、嫉妬の目だ。
ナタリーはテーブルを叩き立ち上がり、俺へとまた、飛びかかってきた。
「なんでそんなにレベルが上がっているのじゃぁぁぁぁぁ!!」
ナタリーの聲が再び部屋に響き渡った。
こんなの望んでない!
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