《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第24話 戦いの幕開け

朝食を済ませてから宿を出て、買い出しに向かう。ナタリーたちは生活雑貨を、俺とシャルは食材を買いに市場へと向かった。

隣に並んで歩いているシャルはやけに機嫌がいい。いつ追手が來るかわからない狀態ではあるが、気にしても仕方ない。

二人で市場を歩き、大量の食材を購していく。店員もあまりの量に「本気ですか?」と確認するが、次元収納ストレージ持ちだと説明すると、納得して売ってくれた。珍しいスキルではあるが、いない訳ではないので店員も理解してくれるのは助かる。

人気を避け店の奧で購したを次々と仕舞っていく。

「すごい容量があるんだな」

「えぇ、まぁ。もう、いっぱいですけどね」

店員の言葉に誤魔化しながらも、數店の店を梯子して食材を買い揃えていった。

「こうやって街を歩くなんて初めてですっ」

「そ、そうか……」

としての立場があれば、こんな気軽に街を歩けないのは想像できる。

「……でも、帝國の住民たちはきっと――」

次第にシャルの表は暗くなっていく。

「俺たちで助けような……」

俺の言葉にシャルは頷くと、笑みを浮かべた。

「私もアルと頑張ります。でも……それだけじゃ……、トーヤ様の力も貸してください。お願いします」

頭を下げるシャルを起き上がらせ、軽く頭をでる。

「きっと大丈夫だ。早く買いを済ませて街を出るぞ。大切な國民が待っているんだろ?」

「あ、はいっ!!」

「ほら、いくぞ」

右手を差し出すと、シャルは嬉しそうな表をし、その手に自分の手を絡ませる。

……仕方ないか、これくらいは……。

俺たちはその後も買いを続け、十分な食材を仕れてから待ち合わせ場所に向かった。

◇◇◇

「遅いのじゃ!!」

待ち合わせ場所についた一聲がそれだった。

「そうですよ。ナタリー様の次元収納ストレージもいっぱいになって、こんなに重い荷を私が運んだんですから」

ナタリーにアルも続く。

そこには小山のように買いした品々がまとまっていた。さすがにこの量には俺とシャルも苦笑する。

大幅にレベルアップしたおでステータスもかなり高いからか、普通の人では持てない量を運んだらしい。

人気を避けた場所で待ち合わせしたとしても、流石にこの量を運んでいたら人目を惹いただろうと思いながら、次々と次元収納ストレージに仕舞っていく。

五分もしないうちに小山は消えていった。

「これで大丈夫だな。晝食を済ませたら街を出るぞ」

「「はいっ」」

「わかったのじゃ」

四人で近くの食堂で食事を済ませ、歩いて街を出る。

街から二時間ほど北上した森は、冒険者達の狩り場となっているが、その先をさらに進むとルネット帝國に抜けることが出來る。

しかし森の奧は強力な魔が徘徊しており、縄張りを侵すと襲ってくる高ランクの魔ばかりだ。

ダンブラーの街にはそこまで高いランクの冒険者はおらず、奧へと進めば人目を避けられるはず。

森までの道を歩いていると、森へと向かう冒険者たちを乗せた馬車が俺たちを追い越していく。それでも走った程度のスピードであるが。

荷馬車が多く、その後ろに冒険者たちが乗っていた。きっと狩りで集めた素材を乗せるためであろう。

流石に人通りも多く、コクヨウと馬車を出すのは躊躇い控えることにした。

「二時間も歩けば、森へれると思う。日が暮れる迄には奧まで行って拠點を作りたい」

「そうじゃの……。流石にあの”家”は人目のつく場所じゃ出せんからの」

ナタリーも同意であった。

ドドドドドド……

歩いていると、後ろから地響きのような音が聞こえてきた。

とっさに振り向くと、そこにはこちらに向かって駆けてくる、馬に乗った兵士たち。

その更に後ろは駆けている兵士たちが見えた。

「まずい……。バレているかもしれない。武だけは用意しておけ」

俺の言葉に三人は真剣な表をし、頷いた。

もしかしたら見間違いであってしいと思いつつも、警戒しながら道を逸れた場所で待機をする。

通り過ぎることを祈って……。

しかし、やはり目的は俺たちだった。

俺たちの近くまで來ると馬はスピードを緩め、殘り數十メートルの距離で止まった。

その後を兵士たちが駆けてくる。

「……やっと追いついたぞっ!!」

び聲の元を辿ると、そこにいたのは先日屋敷を訪れたギルドマスターだった。その橫には代もいる。

そして、上等なローブを著た男と、見慣れない鎧、いや、見たことある鎧を著た兵士たちがいた。

俺が切り捨てた――ジェネレート王國の兵士だ。二十人位いるだろうか。

數は簡単に眺めるだけで百人以上。

兵士だけでなく、冒険者も見けられる。

よくここまで集めたよな、と思わず俺も苦笑する。

兵士たちは俺たちを囲むように広がっていく。

そして、上等なローブ姿の男が兵士に守られるように前へ出てきた。

「――その顔はまさしく、ルネット帝國の皇だな。城にあった肖像畫と瓜二つだ。……そこの冒険者。大人しくその娘を引き渡せば命は助けてやるぞ?」

にやりと笑う男に思わずため息をつく。

「昨日もその件は斷ったはずだが……?」

殺気をし込めてギルドマスターを睨み付けると、後ずさりながらも息巻く。

これだけの人數がいれば強気になるのも仕方ないか……。

「今日はこれだけの人數を用意した。流石にお前もこの人數は相手に出來まい」

俺が三人の前に立ち、次元収納ストレージから自分の丈ほどの両手剣を取り出し、肩に乗せる。

「――たったこれだけの人數で俺を捕らえられるつもりだと……? ちょっと甘いんじゃないか?」

「一人じゃない」

「私も」

「わしもじゃ」

俺の橫にシャル、アル、ナタリーが並び立つ。三人の顔を見て思わず頬を緩ませる。

……気合いのったいい顔だ。

を構える俺たちを見て、ギルドマスターは額に青筋を立てる。

「四人でなんとかなるだと……!? この人數を見てみろ!! 王國からも兵士を出してもらい、街の高ランクの冒険者も揃えておる。それでもなんとかなると!?」

「あぁ、余裕だ。四人いるからな」

四人対百人の戦いが幕を開けた――――。

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