《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第26話 いざ森へ

俺の言葉に一番最初に逃げたのは冒険者達であった。

「あんな化けとやってたら命がいくつあっても足らねーよ!!」

冒険者の一人が逃げ出したら、その後を追うように次々と逃げていく。冒険者は命があってこその商売であり、依頼だからといって命を簡単に差し出したりはしない。

きっとルミーナは全員の代表として前に出てきたのであろう。

殘ったのは、まだ辛うじて兵士が十名程とギルドマスターとジェネレート王國の男であった。

「畜生!! 覚えていろよっ!!」

馬を翻し、逃げようとしたが、俺は一瞬して駆け寄り、ジェネレート王國の男を捕まえる。

「離せっ!!」

ぶ男の首に一撃をれ、意識を失わせると、まだ殘っていたジェネレート王國の鎧を著た數名が男の救助のため、剣を向けてきた。

「悪いけど、お前らには慈悲はないからな」

向かって來る兵士達を一太刀で斬り飛ばしていく。

數分も経たずに兵士たちは全員地に伏せていた。それを見たギルドマスターとフェンディーの兵士達は顔を青ざめさせ逃げていく。

俺は意識の失った男の襟首を摑み、引きずってナタリー達の元へ連れて行く。

「トーヤ様、やはり強いです……」

「――私の出番、何もなかったんですけど……」

するシャルと、しだけ不貞腐れているアル。

そして、ナタリーが聲をかけてくる。

「お主の本気は危ないのぉ。わしの時以上じゃ。――それでそいつはどうするのじゃ」

「こいつは……帝國の報を持ってそうだから捕らえた。おい、起きろ」

引きずってきた男の頬を軽く叩くと、意識を取り戻した。

目の前にいるのが俺だったのが恐怖だったのか、周りを見渡し騒ぎ出す。

「な、なんだっ!? 兵士たちは!?」

「兵士はみんな死んだぞ。他は逃げた。ここいいるのは――お前だけだ」

う男に、もう一人だけだと通告する。

それでも男は諦めるつもりはないみたいだ。

「私に何かあったら、皇帝達は生きてはおらんぞっ!!」

その言葉と同時に、俺は男の太ももに剣を突き刺す。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

ぶ男から、剣を抜き、回復魔法を掛けた後、質問をする。

「それじゃあ、知っている事を吐いてもらおうか」

「そんな事は知らないっ! 離せっ!」

その言葉と同時に、再度、太ももに剣を突き刺し、び聲を上げた後に剣を抜き、回復をさせる。

「何回くらい耐えられるかな……。時間はたっぷりあるぞ」

にやりと笑う俺の顔を見た男は、恐怖に怯えすぐに報を吐き出した。

ルネット帝國の皇帝一家は全員捕らえられ、城の地下牢獄に捕らえられていること。

城に飾られている肖像畫から、シャルの事がいないと発覚し、この國へ特使として來たこと。

アルの父親は勇者と一騎打ちをして――果てたこと。そして、城を抑えた後、今後獣人自治區や、森人自治區に攻める計畫を立てていること。

「もう、私の知ってることは全て話したっ!! 頼む、逃してくれ!!」

俺は、三人に視線を送ると、狀況が把握出來たようで全員が頷いた。

「じゃぁ……もう?」

逃げようとする男の襟首を摑まえる。

「最後の質問だ。――勇者はどんなやつだ?」

「……勇者は、我が國の寶で召喚された者だ。あのり輝くように現れ凜々しい姿。そして戦いにおいても最前線で剣を振り、切り抜けて行く強さ。お主なんかより――――」

……あの場にいただと……?

「お前……あの場にいたのか……?」

「あぁ、もちろんだ! あのと共に現れた――――、”あの場”だと……お、お前……」

男の目はこれほど開くのかという程見開かれた。

「ま、まさか……お、お前は……あの時の……もう一人の……」

「あぁ、そうだ。あの時のもう一人が――――俺だ」

「そ、そんな馬鹿なっ!? お前は送り返したはずだっ!!」

「あぁ、送られたよ。全くどこかもわからない――草原の真ん中にな……」

言葉を締めると同時に、俺は立ち上がり、振り向きざまに剣を一閃した。

男の頭は首から別れ、そのまま転がる。

「いいのか? もっと報は出たかもしれんぞ。お主の事も……」

ナタリーの言葉に俺は首を橫に振る。

「いいんだ。もう――自分の世界に帰るつもりはない」

「……そうか。お主がそう言うなら、わしらは何も言うつもりもない。逆にいてもらわないと困るしのぉ。のぉ“旦那殿”」

ナタリーの言葉に思わず苦笑する。

「それじゃぁ、行くかの」

「いや、ちょっと待っててくれ」

俺は一人で歩き出し、ルミーナが倒れているところへ向かう。

気絶しているルミーナを置いてギルドマスターや冒険者達は逃げていった。

俺は、ルミーナの橫に屈み、回復魔法を掛ける。

「……ぅん? ……あれ? と、トーヤか……。そうか、私は負けたんだったな……」

すぐにルミーナは意識を取り戻した。

を起こしたルミーナは周りを見渡し、大きくため息をつく。

「私一人だけ殘ったか……」

「あぁ、ギルドマスターや他の冒険者は全員逃げた」

「そうか……。トーヤ、済まなかったな」

「それはいい。それよりもルミーナはこれからどうするつもりだ?」

俺の言葉にし考えたあと、口を開く。

「とりあえず、フェンディーの街からは出るつもりだ。しの間は、ダンブラーでゆっくりしてから考えるつもりだ」

「……そうか……なら――――」

俺の言葉に、ルミーナは頷くと「任せておけ」と言い立ち上がった。

「それじゃ、私は一度街へ戻る。馬も殘っているしな」

乗り手を失った馬が數頭、草むらで草を食べながら寛いでいた。

「あぁ、わかった……。あと、ほら」

俺は次元収納ストレージから一本の片手剣を取り出し、ルミーナに手渡す。

「?! ……これも相當な高価な剣じゃないのか……?」

「持ってけ。ルミーナの剣も斬ったからな。それに……な」

「わかった。有り難くけ取らせて貰うよ。依頼・・の代金としてな」

笑みを浮かべ、右手を出すルミーナと握手をする。そして、同時にルミーナに抱きしめられた。

「……トーヤ、また會える事を祈ってるぞ」

耳元で囁き、俺の事を解くと、そのまま馬に乗りルミーナは駆けていった。

やれやれとため息を吐き、シャル達の元へ行くと、三人とも厳しい表をしている。

「トーヤ様……やっぱり大きいほうが良いのですかっ!?」

「やはりトーヤさんは大きい方がいいって事ですよね」

「わしも數年後にはあれくらいになってるのじゃ!」

三人の言葉に思わず苦笑する。

「そんな事より、行くぞ。まだ自治區は平気そうだからな」

俺の言葉に納得がいかない様子だったが、諦めたのか渋々と後を追い、森へと向かい歩き始めた。

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