《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第27話 リアンの街へ
森を進みながら一週間が経過した。
ナタリーの要で、魔を倒しレベルアップを図りながら進んでいる。
早くルネット帝國へと辿り著きたい焦りはあるが、戦況をひっくり返すだけの実力をつけたいと、二人の言葉もあり、模擬戦も併せて行った。
あれから、街からの追っ手はない。
俺たちの戦いを遠目で見ていた冒険者たちと森のり口で會ったが、全員が顔を青ざめさせ下を向き、関わりたくないようだったので、「街へ戻って死の処理を頼む」と伝え、銀貨を數枚握らせた。
冒険者たちは「ハイッ! すぐに行きます!」と逃げるように駆けて行ってしまった。
これで死の処理については大丈夫だろう。
◇◇◇
「それにしても本當にこの家は快適じゃの」
ナタリーは風呂上がりに紅茶を飲みながら、リビングのソファーで寛いでいた。
さっきまでは魔に向けて魔法を放ちまくり、一番暴れていた。
レベル上げのための魔との戦いでは「二人には負けたくないのじゃ!」とびながら魔法を放つナタリーに、二人も顔を引きつらせていた。それだけレベルが負けていることが屈辱だったのだろう。
ダイニングでは俺が地図を広げ、三人で向かう先を確認する。
「トーヤ様、もう半分ほどは來ていると思います。森を抜け歩いて三日ほどの距離に、獣人自治區の砦の街”リアン”があります。あの男の言葉を信じるなら、このリアンに向かえば問題ありません」
「そこなら私の屋敷もありますし、拠點に使えると思います」
二人の説明では、ルネット帝國の帝都では各種族がりれて生活をしているが、各自治區があり、獣人が多く住む地區、エルフが住む地區など分かれている。もちろん人族が多く住む街もあるが、ジェネレート王國に近い位置し、帝都を押さえられている現在なら、すでにジェネレート王國に墜ちているという予想だった。
「わかった……。とりあえずリアンに向かおう。そこで帝都の報を集めないとな」
俺の言葉に二人は頷いた。
次の日からも森を進み、レベル上げをしつつ、ルネット帝國へと向かう。
そして一週間経過した。
「トーヤさん、見てください。もうすぐ森を抜けられそうです」
先頭を歩くアルから聲が上がった。
先に視線を送ると、あと數百メートルで森を抜けられそうだった。
しかし、以前もあったような、魔の集落に當たる可能もある。
俺は探査サーチを使い、先の方を探っていく。
……魔の気配はないな。やっとか……。
先頭を歩くアルの歩みが次第に早くなっていく。そして數分後。
森を抜けた――。
目の前に広がるのは膝丈ほどの草原が一面に広がっている。
この二週間ほど、ずっと森の景しか見ていなかったから新鮮にじる。
俺は久しぶりにコクヨウを出す。
森はが至る所から出ており、コクヨウのの大きさを考えて、ずっと次元収納ストレージの中に戻っていてもらった。
「悪かったな。ずっとってもらってて」
し機嫌が悪そうに一鳴きし、俺の頭を甘噛みすると、パカパカと地面を確かめるように歩き始めた。
「これだけは相変わらず変わらないのな……」
思わず苦笑しながら、袖で頭についた涎を拭き取る。
「トーヤ様、相変わらずコクヨウと仲良しですね」
シャルも笑みを浮かべ歩き出す。
これくらいの草原なら馬車で行けるな、と考えつつ、食事休憩をしようと提案する。
倒した魔を捌いてブロック狀にしてあった塊をスライスし、調味料を振り掛け、起こした火で焼いていく。
簡易テーブルと椅子を取り出し、焼いたを皿に乗せ、スープとパンを用意する。
「用意出來たぞ」
俺の言葉に、皆で集まり食事をする。
「ここから北西に馬車で二日進めば、リアンの街に著くと思います」
「それなら……コクヨウに馬車を引いてもらえば、明日には到著しそうだな」
「やっと……やっと戻ってこれました」
シャルはやはり心配なのだろう。ルネット帝國が近くなるにつれ、口數はなくなり、何か考えていることが多くなった。いくらあの男が捕らえられていると言っても、いつまでもそのままにはしておく訳がない。
俺が無雙出來れば一人で助ける事も出來たかもしれないが、魔力には上限がある。
一人で百人相手にする事はできるが、それが千人、萬人になった時に魔力が保つかもわからない。
さすがに冒険など出來る訳がない。
「どうしたのじゃ、トーヤ。浮かない顔をして」
ナタリーの問いに「何でもない。大丈夫だ」と返事をし、食事を進めた。
馬車を取り出し、コクヨウに繋ぎ、出発の準備が整った。
道のない草原をコクヨウが引く馬車が走り抜けていく。やはり、いくら乗り心地のいい馬車とは言え道ではないところを走るのには気を使う。そこまでのスピードが出せる訳もなく、日が沈む前に馬車を安全な場所で停め、休憩をする。
さすがに家を出したら、見つかる可能もある。
次元収納ストレージからテントを取り出し、一晩明かした。
そして次の日。
朝食を済ませた後、馬車に乗り込み進ませる。
「あの丘を越えれば、街が見えるはずです」
馬車の小窓からアルが教えてくれる。
俺は新しい街への期待で、手綱をし強く引き丘の頂上を目指すのだった。
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