「もうすぐ街が見えると思います」

アルの言葉に頷き、期待をしてコクヨウを駆けさせる。

そして頂上についた。

丘から見下ろす風景は――――街へと向かう蟻の群れのような兵士だった。

「？！　みんなっ！　街が攻められるっ！」

俺の言葉に三人は驚き、小窓から顔をだす。

數千人、いや一萬人近くいるかもしれない。門までまだ距離はあるが、それもいつまで持つかわからない狀態である。リアンの街でも、門の上には人が並び立ち防衛の準備は整えていた。

しかし、人數差がありすぎる。正面からぶつかったら半日も持たずに門を突破されるだろう。

「トーヤ様！！　リアンの街がっ！？」

「あぁ、分かっている」

シャルがぶが、どうけばいいのか。

たった四人でこの人數を切り抜けられるか……。本気を出せば可能かもしれないが、こちらにも被害が出る可能がある。この人數を相手にできるほど、俺の魔力は多くない。

俺は悩みながらリアンに殺到する兵士たちを見下ろすと、し後ろに百人くらいに囲まれ戦況を見守るために陣取っている者達がいた。

……あれは。あそこだけだったら。

「攻めるのは――あそこだ」

俺は後方の集団を指差した。

「それでは、門が……」

「俺たちだけで、あの數を相手にするのは無理だ。それなら、あそこに見える――指揮を叩けばいい」

「頭を取るということじゃな」

「あぁ、そうだ」

アルし納得出來ていなかったが、ナタリーはすぐに理解した。

俺たちは裝備を整える。今出來る最高の裝備を次元収納ストレージから取り出し、三人に裝備するように伝えた。

出し惜しみをするようなことはない。ナタリーはその価値が分かったようで、目を見開く。

「この裝備は……トーヤ……お主、本當に一何者なのじゃ……」

「今はそんな事を気にする時間はないっ。用意出來たらすぐに突っ込むぞ」

コクヨウを兵士から見えない場所まで下げ、五分ほどで準備を整えた。。

「ナタリーは者臺の左側を、シャルは右側を。アルはコクヨウの手綱を握っててくれ。いや、コクヨウは大丈夫だ。二人に向かって矢が放たれたらカバーを頼む」

「トーヤさん、トーヤさんはっ！？」

「俺は……ここから魔法を放つ」

指差した場所は馬車の天井だ。他の者ではコクヨウのスピードで振り落とされるかもしれない。

俺はコクヨウに「頼むぞ。お前に掛かっているからな」と一聲かけ、首をでる。

コクヨウは眼下に広がるの兵士たちを躙したいのか、興した様子であった。

「怪我したらすぐに言え！　回復は俺に任せろ」

「「はいっ」」

「わかったのじゃ。久々の戦爭、腕が鳴るのぉ。わしがなぜ『黃昏の賢者』と言われていたのか見せつけるのじゃ」

全員が準備が終わり配置についた。

「コクヨウ頼んだぞ！」

その合図で、コクヨウは駆け出す。次第とスピードが上がっていき、一直線に目的へと進んでいった。

丘から一気に駆け下りる。

リアンへ向かう兵士たちの後方に出た事で、未だに気づいてはいない。

……あと、もうし。

俺は両手に魔力込めていく。一発大きいのは當てて混しているところにコクヨウを突っ込ませるつもりだ。

草原を下る俺たちの馬車に、後方の指揮たちも気づいたようで、忙しく兵士がき始める。

武を持ち、こちらに対して準備をしているのが見えた。

だんだんとその兵士達に近づいていく。

「最初に俺が魔法を放つ！　混したところを頼むぞ」

「はいっ！」

「任せておくのじゃ！」

兵士たちも馬車が一臺駆けてくるが、未だに敵か味方か分からず武は構えるが、こちらに向かってくる様子はない。

そして距離が一〇〇メートルを切ったところで、俺が魔法を放つ。

『火炎竜巻ファイヤーストーム』

二〇メートルはあろうかという高さの炎の竜巻が、兵士たちを襲う。

突然放たれた魔法に、兵士たちは混し、そのまま炎に巻かれていく。

「トーヤ、お主、もう上級まで使えるのかっ！　さすが賢者じゃのぉ。わしも負けてられんのじゃ！」

『我が名の下へ、集え炎よ。我の意思の下で目の前の敵を燃やし盡くせ。火炎竜巻ファイヤーストーム』

「私もいきますっ！」

『炎の霊達よ。私に力を貸してください。そして目の前の敵を打ち払って！』

二人からも炎の魔法が放たれる。只でさえ混しているところに、上級魔法が更に二発も打ち込まれたら、兵士たちも逃げようがなかった。

炎に包まれて次々と倒れていく。

「コクヨウ！　そのまま突っ込んでくれ！！」

俺の言葉を理解したコクヨウはそのまま倒れた兵士たちを踏み越えて進んでいく。

そして、見えた。

一際豪華な鎧を著て、喚いている指揮が。

その周りにはすでに數人しかいなかった。

俺は火球を二〇ほど浮かべ、周りの兵士に向けて放っていく。

「あとは俺に任せろ。指揮を捉えてくる！」

馬車から飛び降りて、バスターソードを取り出し、魔法をけ倒れていく兵士たちの間を駆け抜けていく。

三人ほど盾を使いガードしたようだったが、俺はその盾ごと一刀のもと斬り伏せていく。

そして指揮一人だけが殘った。

「何なんだお前達は！　私は――」

俺は指揮の言葉を待たずに蹴り飛ばす。

転がった指揮が立ち上がろうとするところに、踏みつけ、剣を首に當てた。

「お前が指揮だな。大人しくすれば、今は命は取らん……。もし、抵抗するなら――」

頬に剣先を當て、軽く斬りつける。

痛みからか、指揮は恐怖に怯え、すぐに首を縦に何度も振った。

「では、まず、兵士たちを引かせてもらおうか？」

俺がにやりと笑みを浮かべると、指揮の男の表は一気に暗くなった。