《召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜》第6話 出立
二日ほどリアンで帝都について教えてもらうことになった。
とはいえ、一人で出來ることは限られており、まずは帝都の報を手することを第一とし、隙あらば王城へと侵するということになっている。
シャルからは王城からの通路について教えてもらった。
「これは急時に王城から出するためにあるもので、王族とその側近しか知らないので、何かの時に役立つかと」
広げた羊皮紙に王城の間取りなどが簡易的に描かれており、その場所へマークをする。
詳細な図面は、王城から持ち出せるはずもなく、シャルやアル、そしてガウロスの記憶から描き出されたものだ。
まとめられたものを次元収納ストレージへ仕舞い、リアンを出る準備をする。
「本當に一人で大丈夫なのか……?」
ガウロスは俺のステータスを知らない。職業についても四人だけのにしてある。
だからこそ強いとはいえ一人で向かおうとする俺のことを心配していた。
しかし心配なのは俺のことより三人だ。
「それよりも、三人で大丈夫か……? というだけ野暮だったな……」
三人のレベルはリアンに來るまでにさらにレベルが上がっている。もしかしたら勇者にも勝てる可能がある。それでも自分が一緒にいられないことに不安が殘る。
「だ、大丈夫です。私たちも強くなりました! それに……帝都の両親も心配ですし……。トーヤ様に頼るしかないのが申し訳ないくらいです……」
「トーヤさんがいない間、このリアンをしっかり守りますから」
二人の表はしっかりと自信を持っていた。それに比べてナタリーは――――出された菓子をパクパクと食べていた。
「…………」
思わずため息がれる。
こいつは……。
思わずその姿を眺めていると、ふとナタリーと視線が差する。
「トーヤ、大丈夫じゃ。わしがここにおるのだからな……。帝都のことは任せたぞ」
確かにナタリーはシャルとアルにレベルを抜かされたと知り、リアンまでの道中、鬼神の如くレベル上げに勵んでいた。初日に二人のレベルを抜かしてからも、手を抜くことはなかった。
まぁナタリーがいれば大丈夫か……。
「では、これから帝都に向かう」
俺の言葉に皆が頷いた。
屋敷を出ると、すでに兵士がコクヨウのと共に待っていた。
俺の姿が見えると、近づきあいかわらず頭を甘噛みしてくる。
「こんな時くらいやめてくれよ……」
俺はよだれを拭うが、ガウロスは心した表をしていた。
「黒曜馬バトルホースにここまで好かれるとはな……」
そんな言葉を聞きながらコクヨウにる。
「ここのことは頼んだよ。行ってくる」
「帝都を頼みました」
「気をつけて」
「任せたぞ」
各々言葉を聞き、コクヨウをゆっくりと進ませる。
リアンを守る門を抜け、それからスピードを上げていく。
真っ直ぐに帝都に向かいたいが、そうするとリアンを攻めていた兵士に會う可能もある。
し大回りをし、森沿いを駆け抜けていく。
サランディール王國からきた冒険者として帝都に向かう必要があるからだ。
ガウロスが予想した通り、ジェネレート王國の兵士と會うこともなくサランディール王國との通路まで辿りついた。
ここからは歩きだ。
流石に目立つわけにもいかず、コクヨウに乗って帝都に向かえばすぐに噂になってしまう。
もしかしたら帝都を占領しているジェネレート王國の兵士に取り上げられる可能もある。
急ぎ気持ちもあるが、コクヨウに餌と水を與え、し休憩してから次元収納ストレージにってもらう。
「よし、これから向かうか……途中に村もあると言っていたしな……」
俺はリアンでもらったルネット帝國の地図を確認しながら、し早歩きで北上していく。
◇◇◇
歩き始めて半日ほどで麥畑が見えてきた。
まだ収穫時期には早いので荒らされた様子もなかった。
そしてすぐに村が見えてくる。
日も傾いてきて空は茜に染まっていた。
「泊まるとこがあるのかな……」
俺は誰も守っていない門を潛る。
村は賑やかではないが、人もそれなりにいた。家が數十軒程度集まって建っており、その一番大きな家へと向かう。
村の中は若い男は誰もおらず、子供と老人ばかりであり、チラチラと視線が集まってくる。
そんな視線をじながら一番大きな家へとたどり著いた。
扉を軽くノックし、聲をかける。
「すみませんー」
俺の言葉に奧から「はーい」と聲が返ってきた。の聲だった。
そして扉が開かれ現れたのは、まだ十代後半であろうか、俺と変わらないほどのまだ若いであった。
「すみません。帝都に向かう途中ですが、この村で一晩泊まるとこは可能でしょうか……?」
俺の言葉に、その若いはし悩んだが、すぐに表を明るくする。
「宿や空き家はないけど、この家に泊まっていかれますか? お爺ちゃん、いえ、村長に聞いてみますが」
「泊まらせていただけるなら、どこでも構いません」
「では、村長もおりますのでどうぞ」
に案されるまま、家の中へとる。一番奧の部屋に行くと壯年の男が機で書きをしていた。
「お爺ちゃん、この人がこの村で一泊したいんだって……」
の言葉に一度仕事を止めて顔を上げる。
俺のことをじっくりと見てから口を開く。
「泊まるのは構わないが、戦爭で大したもてなしもできないが……。若いのは兵士として村を出て……戻ってきておらん……もう帰ってくることもないだろう、が……」
ルネット帝國はジェネレート王國に戦爭で負けた。
この村はサランディール王國に面しているから直接的な被害はないのだろうが、國を守るために若い者は兵士に志願し、村を出て行ったそうだ。
戻ってこないということは言葉にしなくても理解している。
これが戦爭か……。
しだけ気持ちが暗くなる。
「できれば世話になりたい。食事は、食材を提供するのでどうだろうか……? 魔のなら提供できる」
俺の言葉に村長はしだけ笑みを浮かべる。
「それはありがたい。若い者がいなくなってから狩りにもいけず、野菜や麥ばかりだったからのぉ……。しでも提供してもらえるなら助かる」
「それなら一丸々提供するから、村の人にも配ってしい。それくらいしかできないしな」
丸々一と聞いても目を輝かせ笑みを浮かべる。
「お爺ちゃん、私、村の人を集めてくるね!」
「あぁ、そうだな。客人がを提供してくれることを伝えてくれ。解道はわしが出しておこう」
村長とともに一度屋敷を出る。
「それで魔のとは……」
魔のを提供するということで、馬車で來たと思ったのだろう。手ぶらでいる俺を見て首を傾げる。
「あ、ちょっとまってくださいね」
俺は次元収納ストレージから森で捕れた豬型の魔を丸々一出した。
「おぉ……」
流石の村長もその大きさに驚きの聲を上げた。
取り出した魔はフォレストボアと言い、冒険者ギルドでもCランクに分類される魔だ。長は三メートルほどあり、この村の住人程度なら全員に行き渡ってもまだ余るだろう。
「これほどまでの獲を……謝する……えっと……」
「あ、まだ名乗ってなかったですね。トウヤです。サランディール王國でBランクの冒険者です」
魔の前であたらめて自己紹介をした。
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