《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》の想い
「ん?あれは……井藤?」
「の子もいっしょだ。何かあったのかな?」
「確かデート行ったんだけど」
「デート?あの井藤君が?」
『あの』とか言ってる時點で井藤の素のモテ度はお察し。
「中々良い雰囲気だな。……あーんなんてしやがって。アイツ楽しんでるな」
あとは言がアレにならなきゃだいたいオッケーだな。井藤頑張れ。
「……ねえ、暁」
「ん?何?」
何で顔赤いんだ?……井藤のイチャつき方が毒だったか。何か悪いの見ちゃった気がする。俺にとっても姉さんにとっても。
「……姉さん。もしかしてあれ見て毒だったりする?……ごめんごめん。あっち行こ___」
「いやそうじゃなくてさ」
即否定。違うのかよ。
「……手、繋がない?」
「……ああー。何か寒くなってきたもんね。手先冷えると辛いし。うん。良いよ」
手袋しいね。俺も手が冷たい。
「(ああもうそんなんじゃなくてさあ!)」
何で姉さん不満顔なの!?何か機嫌悪くするような事したかな俺……。
手を繋いだは良いんだが……痛い痛い。ちょっ、指の骨ミシミシ言ってる折れちゃう!右手が泣いてる!マジやめてくださいお願いします和水さん!
「……暁」
「へ、あ、はい?」
反的に敬語になった。怖いよお怖いよお……。
「もうちょっとの子の気持ちを考えた方が良いよ」
「あ、はい」
え、俺そんな鈍?言うほど鈍かなあ?
「……姉さん」
「何?」
うわめっちゃ機嫌悪そうな聲……。
「お、俺って周りからみたらどんな人?」
「にぶちん」
うっ。即答辛いっす……。
「にぶちん。鈍。リア充」
グフッ。……リ、リア充なのかもしれないけど……。
いきなり姉さんは走り出した。え?え?何で?
「ちょっ、まっ……」
直後、俺は地面にダイブした。
……何か怒らせちゃったな。謝んなきゃ。
「……はあ……」
ここに來るまで何度ため息をついただろうか。
「(元はと言えば、暁が悪いんだよ)」
私の心をもてあそんで、の子への接し方が全然分かってない。
「(手を繋いでしかったのも、寒いからじゃなくて……)」
井藤君みたいにイチャイチャしたかった。
『お姉ちゃん』としての雨宮和水じゃなくて、『異』の雨宮和水として見てほしかった。
_____なのに彼は、
「(私がどう頑張っても、『家族』とか『同い年の友達』以上のは抱いてくれないんだね……)」
そんなに魅力無いのかな……。もしかして、他の皆にとられちゃうかもしれない。
「(……そういえば、何で暁を好きになったんだっけ?)」
確か初めて會ったのが……四月くらいだから……もう六ヶ月も一緒なんだな。
「(何か、雰囲気が良かったんだよね。優しそうって言うか、ノリが良さそうっていうか、こう……守ってやりたいっていうか……)」
とにかく何か使命的なのをじた。
「龍平さんに似たのかな」
義父さん____雨宮龍平さんは、母さんの再婚相手だ。
前の父親_____私の実の父親は、そうだな……一言で言ったら、『絵に描いたようなクズ』だった。
とりあえず働いてたし、それなりに収もあった。上司の評価も良かったらしいし、部下からも信頼されてた____のが表の父親。
「(家だとまるっきり違うのにね)」
家に帰ると、職場で溜まったストレスを家族私達にぶつけた。
私も何回か毆られたりした。多分、その頃の私は、これが日常だと割り切ってたから、痛みなんてのはじなかったように思う。
そして、いつものように父親が暴力を振るおうとしたある日、母さんが言った。
『ストレスは全部私にぶつけて。でも、和水には一切手を上げないって約束して』
_____それから、父親は私に手を上げなくなった。
でも、日に日に母さんのにあざが増えていった。
一番酷かったのは、父親が給料をほとんど使った賭け麻雀マージャンに負けて帰ってきたとき。
「(あの人、何も言わずに母さんのお腹毆ったっけ)」
人は當然ながら、お腹に強い衝撃をけると嘔吐する。母さんも例外じゃなかった。
夕飯を食べてすぐだったのも災いしたのか、派手に胃の中味を撒き散らした。父親はそのまますぐに寢てしまった。
『お母さん。大丈夫?』
『……大丈夫よ。あれくらいいつもの事だもの。もう慣れちゃったわ』
『このままだとお母さんが死んじゃうよ……』
『あの人のストレスが減るなら、それで良いのよ』
母さんは元々控えめな格だったし、何より父親があんなだったから、『今のままで良い』と言った。でも、私はそれに反対した。
『お母さん。私、お父さんとお母さんはお別れした方が良いと思う』
『……どうして?』
『だってお母さん、お父さんから毆られてるとき、凄く苦しそうだもん。私、苦しいお母さんは見たくないよ……』
涙がこぼれる。苦しいよりも楽しい母さんの方が好きだ。
『和水』
母さんは怒らずに、私の名前を呼んだ。そして、優しく抱き締めた。
『和水がそう思ってくれるのは嬉しいな。うん。お母さん、頑張るよ。頑張ってお父さんとお別れする』
『ほんと?』
『ほんとほんと。じゃあ、約束しよっか』
『_____うん!』
「……………んん……?」
「あ、起きた」
暁の聲だ……。
「暁……?」
「何か寢てたし、起こすのも悪いかなって。……っていうか地面で寢れるとか凄いんだけど」
寢たくて寢た訳じゃ無いけどね。
「……寒いな……」
起きたら急に寒くなってきた。……どうせ暁に言っても、にぶちんだから勘違いされて終わりだろうなあ……。
「あー、あのさ、その……」
ん?珍しく渋ってる。何かあったのかな?
「手、繋ぐ?」
うわ、あのにぶちん鈍リア充の暁が自分から手繋ぎに來るとか。これ凄い進歩じゃない?
「……珍しいね。どうしたの?」
「そろそろ終了時間だし、校舎んないとマズいじゃん」
訂正。何一つ進歩してなかった。やっぱりにぶちん暁だ。
「……良いよ。でも、條件があるから」
「何?」
「……『和水』って呼んで」
「……はい?あの、姉さん何を」
「『和水』」
「う……和水……」
聲ちっちゃいけど、まあ良いや。
「よろしい。ほら、行くよ?」
「あ、ちょ、待って!」
「待たない。ちゃんと著いてこないと転ぶよ?」
「うう……」
あ、涙目になった。……の子の気持ちをもてあそんだ罰って事にしとこ。
「暁!」
「へ?」
「『乙の心は秋の空』。覚えといてよ!」
秋の空って何だよと聞かれたが、気にせず私は暁を引っ張っていった。
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