《ヘタレ魔法學生の俺に、四人もが寄ってくるなんてあり得ない!》決闘って実際にあるんだな……
「雨宮暁。この集會が終わったら、校庭に來い」
隣に並ぶ四組の神崎川が話しかけてきた。……何?決闘ってヤツかな?
「ああ、うん。良いよ」
據え膳食わぬはナンとかってのがあったな。多分違う意味だけど。
「(決闘ってドラマの中だけだって思ってたな……)」
「雨宮暁。一つ勝負をしよう。魔法による決闘とは別のな」
「何だ?」
「僕が負けたら桜良さん達からは手を引こう。でも、お前が負けたら桜良さん達は僕のものだ」
『もの』って何だよ。相手は人だろ。
「……分かった。けるよ。観客とかは?」
「桜良さん達と、お前の方から數人だ。ルールは特に無い。僕かお前のどちらかが降參すれば勝ちだ」
井藤と近藤と……あ、城桜のあの子もかな。
「オーケー。じゃ、校庭で」
數十分後。校庭。
「覚悟は良いか?雨宮暁」
「ああ。いつでも良いぞ」
俺が構えをとると、相手神崎川も臨戦勢になる。
「では、両者、構えて……始め!」
先輩の掛け聲の下、決闘が始まった。
俺は即座に呪文を唱え始めた。
「気流は我を包み込む。『清風の輝』エアロ・アーマー!」
ぶわっ!と風が吹き、俺の周りを回り始める。
これでだいたいの魔法は弱化出來る。
「『清風の輝』エアロ・アーマーごとき、何でもない!炎は愚者を打ち倒す!『火焔の世界』フレイム・ワールド!」
『火焔の世界』フレイム・ワールド……生でくらったら冗談抜きで死ねるけど、『清風の輝』エアロ・アーマーを発した今は、余裕で回避出來る。
風の力を借り、俺は空高く舞い上がった。
「『清風の輝』エアロ・アーマーで魔法のダメージを弱化するとは。雨宮のヤツ、中々やるな」
「お前から見て、今の暁はどうなんだ?」
「最初に防魔法をかけたのは良いんだ。だが、『清風の輝』エアロ・アーマーは短期的な防魔法。故に魔力消費が激しいんだ」
「じゃあ、暁はすぐバテちまうのか?」
近藤は深刻な顔でうなずいた。
「……多分な」
「あの、井藤さん。お二人は何を話しているのでしょうか?」
魔導師では無い彼_____佐倉裕香には、二人が何を話しているのかほとんど理解出來ない。
「ざっくり言うと、俺のダチがピンチになりかけてんだ。多分すぐバテる」
「じゃあ、すぐに勝たないと!」
「……雨宮も短期戦でケリ著けるつもりだろうが、神崎川もそうはさせんだろうな」
じわじわと獲を追い詰める狩人の戦法か。
「(……こっからどうひっくり返すつもりだ……?)」
「(ヤバい……。魔力の消費が思った以上に激しい……)」
『清風の輝』エアロ・アーマーが魔力消費が激しい魔法だってのをすっかり忘れてた……。
魔法を切れば消費は抑えられるけど、神崎川の攻撃が激しいから、切ろうにも切れないんだよな。
「どうした雨宮暁!もう疲れてきたのか!?」
「……清き水は不埒者を穿つ!『海神の天槍』ウラヌス・ランス!」
水の槍が神崎川に迫る。これ勝ったな。
「萬理は我がに屆かざる!『失われし魔盾』ロスト・マジック・シールド!」
うわ、ここでそれ使うかよ。……しかも三組俺達がまだ習ってない呪文。四組ハイレベル過ぎだろ……。
「(……どうしよ。このまま一気にやるか?もう魔力もないし、長期戦に持ち込まれたらジリ貧だ)」
幸い、『アレ』を発するだけの魔力はある。欠乏癥確定だけど。
「(一か八かの賭けだ。當たって砕けろってヤツだよな)」
俺は一度深呼吸をし、気持ちを整える。
「……水の魔力、我の元へ回帰せよ。その元素、大いなる自由と、無限の可能をめし。海原の叡知、博、無慈悲なる天誅を、彼の不埒者へ下さん____」
「暁の空、曙の地に映えるは広がり行く水平線。その深き碧湛えし水よ、我の矛となりて、立ち塞がる者、破滅の深淵へとえッ!______」
「『海皇の斷罪』ネプトゥヌス・ジャッジッ!!」
……良く考えたら、『海皇の斷罪』ネプトゥヌス・ジャッジって『海神の天槍』ウラヌス・ランスの上位互換みたいなモンじゃね?
もの凄くどうでも良い事を考えた直後、俺の視界は黒く染まった。
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