《非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果》私のキス作戦と俺の完璧選択肢
二十二話
【新転勇人】
「記事ができましたよ!!」
夏休みのオープンスクールまで二週間を切った今日、左道が部室のドアを勢いよく開けて登場した。
右腕には記事であろう紙の束が抱えられており、それが視界にり、大々的にバレると再認識させられた俺の心臓はし早く鼓を打っていた。
「その記事はー……こちら!!」
用に一枚だけ抜き取った記事を掲げる左道さん。
「お〜よく寫ってるじゃん」
「そうですね、いいじに撮れてますね」
寫っていた寫真は、俺が新天さんの顔に付いていたまつげを取っている時のもので、新天さんは上向きで、目を瞑っている。そこに俺が手を近づけているというもの。なかなか顔が近くて照れくさい気持ちもある。
新天さんも同じ気持ちなのかな―。
俺は新天さんへと目線を向ける。
「そ、そうですね…よ、よよよく撮れてます……!!」
あれ…目がめっちゃ泳いでるな。
なんで?………なんで!?
やっぱり攻めすぎたのか?
「うわぁ寫真で見たらすげぇ私にキスしたそうな顔してるし…ちょーウケる」とか思われてるかもしれん。
「新天さん…どうかしましたか?」
俺が尋ねると、やっぱり焦った様子で、
「えっ…いやぁ…き、キスしてしまいそうな距離だなぁと(なんでキスしてくれなかったんでしょう)」
「ご、ごめんなさい!(絶対やらかした…)」
やばい…絶対引いてるよ…ガツガツ來る人だと思ってませんでした!ってendだよ!Bad Endだよこれ!
どうする……ギャルゲーだったらどんな選択肢が――。
【円香】
キスしてしまいそうな距離だなぁ……と
1.ごめんなさい!もうしません!
2.ここでキスしてみる?
3.恥ずかしいですよね…撮り直します?
さぁどうする……。
1の場合は―。
「ごめんなさい!もうしません!」
「……はい。もうしないでくださいね?分かりましたか?」
「はい。ありがとうございます…」
これは多分一番安定するな……。
じゃあ2の場合は―。
「ここでキスしてみますか?」
「えっ…(まだ“ごっこ”なのにもうの関係に?……引くわ…)」
「・・・」
詰みですね。
紛うことなく最低評価を貰う選択肢だ。
最後の3の場合は―。
「恥ずかしいですよね…撮り直します?」
「ん〜…そうですねこんなに刷ってきてもらったのに悪いですが、恥ずかしいので撮り直してもらいましょう」
「そうですね」
これは左道さんにも迷がかかるな……。
ここは無難に1を選ぶべきだな。
俺はまだ目を泳がせてあわあわしている新天さんへ、1の選択肢をぶつけた。
【新天円香】
顔が近い……あの時私「キスしてくれる」と思ってちょっと上向いてます!
目も瞑ってるし恥ずかしいです……。
私が勇人くんへ目線を向けた時、彼はなにか選択したかのような覚悟を持った表で口を開きました。
「ごめんなさい、もうしません!」
「え?」
「もう容易く顔を近づけたりしません!」
いやいやいや、「よし!決まった!」と言わんばかりの表をされても困りますよ!
てっきり“キスをする覚悟”を決めたのかと思ってたのに……!
―いや待ってください……もしかしてこれは…………振りですか?
押すなよ押すなよ的なやつですか!?
でもそれでいくと“容易く顔を近づける”ってことになりますね……死んじゃいますねそれは。
顔を近づけるからね?
ってことなら、押すなよ押すなよで言う推される側の私が言うべきことは―
「分かりました。もうしないでくださいね?」
「はい!」
これで完璧ですね。
近々キスできるはずです。
んふふふ…新しいリップ買わないと…!
「ちょっと二人共一旦話していいですか?」
「「あ、はい!」」
私の聲が見事にシンクロする。
これが運命ってやつですか。いい響きです。
「では―これはオープンスクールの時に校中にり付けます。そして、」
「ここに書いてあるように」と記事の一部を指さして説明してくれます。
「13時に行事等の寫真が飾られてる育館へと人を集め、そこで二人に登場してもらいます」
「えっ!?」
「左道さんそれって……」
勇人くんも私と同じことをじたようで、焦ったような表を浮かべています。
「はい。付き合ってるよ宣言と馴れ初めを話してください」
「いや…オタクは一度に多數の人に見つめられるのが心底苦手で…」
當たり前ですよ?と言わんばかりの表で告げた真結。
勇人くんは、その時の景を考えてしまったようでどんどんと顔が青ざめていっています。
「ま、真結…?さすがにそれは厳しいと思います…」
「でも、新聞部にはドッキリという前科があるので証拠を見せてもらわないと……」
困ったような真結の表に、し気後れしちゃいます。
ですが、今まで記事を見ていた金霧先輩が口を開き、それによってし気が軽くなりました。
それは―
「見せつけてあげればいいんだよ?」
そして、テクテクと近づいてきて、私に耳打ちをしてきました。
「その時にキスしちゃえば勇人は完全に落ちるぞ。多分勇人は張して心拍數上がってると思うから吊り橋効果的なものにつけ込んでキスしちゃえば………な?」
なっ!ナンダッテーー!?
逆にこっちからキスをするんですか!?押される側が押す側に!!?
その作戦だと、私は勇人くんのものだってみんなに知ってもらえて、なおかつ勇人くんは私のものだってみんなへ教えることができます!
それにその作戦が功した場合、“ごっこ”が終わって“人”になります……。
「―真結!任せて!」
「新天さんッ!!?」
勇人くんが驚きを隠せていませんが、私は彼へと笑顔を向けます。
「大丈夫です。私がいます…んふ」
「今んふって、んふって―」
「そんなことはどうでもいいです!育館に來た人たちに見せつけてやるんですよ!!」
勇人くんが狀況を飲み込めていない今のうちに何とかこの作戦に乗らせなければ!
「いいですね…?」
「は、はい…」
あれ、以外とすんなり作戦に乗ってくれましたね。
まぁいいです!
たくさんの人の前で勇人くんのにキスを!!
私はバレないように小さくガッツポーズをしました。
【新転勇人】
なんで新天さんガッツポーズしてんだろ……。
ていうかさっきの「いいですか…?」の時の新天さん、目が笑ってなかった…口元は笑ってたけど、眼は吸い込まれそうなほどの圧があった……。
まぁ新天さんがガッツポーズするほど喜んでくれたならそれでいいけど……。
俺は彼たちを眺め、スマホを取りだしMMOを起させた。
あれからオープンスクールの件はさほど進展せず、解散。という形になったので俺は今、帰宅している。
新天さんは金霧先輩とゲーセンに繰り出すとの事で一人での帰宅だ。
―それは、いつも通りMMOをプレイしている時だった。
「勇人!!」
「ん?」
かけられた聲に反応し、後ろへ振り返ると、
「久しぶりだな」
「淺見くん。」
そこには久しぶりに顔を合わせる友達。
淺見冬彌君が立っていた。
彼の謹慎も殘り一週間。
もうしで學校へと戻ってくるのだ。
「なぁ…あの時言ってくれた“友達”ってのに、俺は戻れるかな?」
淺見くんは顔を俯かせ、恐る恐るそんなことを聞いてきた。
まったく。彼らしくない。
そんなこと決まってるじゃないか。
「當たり前だよ。あの時も言ったけど次はないからね」
「ありがとう……」
そんな彼は「ところで」と切り出し―
「あの時いた巨で服をだらしなく著てた人って知り合いか?」
「う、うん」
こいつまさか……。
「復帰したら紹介してくれッ!」
ま   じ   か   よ   
あの時惚れたの!?
新天さんに々しようと考えてた時に!?
「正直な話、タイプどストライクなんだ。」
どんなお花畑脳を持ってたら、前科持ちで食ガツガツ系な友達を紹介するのよ。
「ま、まぁ……聞いてみるよ…」
ごめん淺見くん。
自力で頑張ってくれ。
さすがに俺の彼(仮)にあんなことしたのに、知り合いのを紹介するなんて今は無理だよ。
淺見くんは「まじか!ありがとう!!」と言って去っていった。
なんか嵐のように去っていったな。
まぁ…いっか。
俺はスマホへ目線を戻し、中斷していたMMOを再開した。
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