《非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果》私の更けてく夜と俺の心拍數

三十二話

【新転勇人】

「おぉ!可いですねこのセリフ!」

「初デートは遊園地……っと」

「呼び方を変える……か。」

なんでメモしてるの新天さーん!

たまにチラチラこっち見て「バレてないかな?バレてないかな?」みたいな事するのが可いから良いんだけどさ!やるならもうちょっとなんか無かったですか!?

「勇人くん」

「は、はいっ!」

不意に呼ばれて思わず返事に力がったしまった。

「いえ……勇人…♡」

風が吹けば消えってしまうような聲でそう言った。

さ、早速実行してきたのね……あぁ…でもインパクトが大きすぎて…あぁ…。

「―円香」

なんか自分でもびっくりするくらいにすんなり呼んでしまった。

「いやっごめんなさい!本當に!!」

急いで新天さんへ前言撤回を申し出るが……。

「ゎふ…円香って…勇人くんが円香って……んふ♡」

夏のせいじゃない!

新天さんが放ってるこの熱気は夏の暑さにあてられたとかじゃない!

顔は真っ赤で頭からはとめどなく湯気が放出されている。

アニメとかでよくこんな描寫あったけど本當に起こるのね…。

そんな新天さんは恐る恐る俺と目を合わせると―

「勇人♡」

気にっていらっしゃる…。

すげぇ可いし、すげぇ嬉しいんだけど…。

これ以上言われると死にかねません……ッ!

「新天さん…これ以上“勇人”って言われると心拍數上がりすぎて心臓発しちゃいます…」

「ご、ごめんなさい!……でもそれって…勇人って言われると嬉しいってことですよね…」

変なところで勘が働くなぁ。

「ふふっ♪可いですね♪」

はっはぁーん―殺す気?

そんな俺は相変わらずドキドキと高鳴る心音。これを新天さんにも味わってしいと思った。

だから―

「新天さんもとても可いですよ」

と言ってやった。

【セーブする?】

はい

いいえ

畫面にそう表示させたのは日が傾き、地平線に近くなった頃だった。

俺は“はい”を選び、ゲームを終了させる。

【次の登校を待ってるよ!】

と、まるでアーケードゲームのようなセリフを殘し、畫面は暗転した。

あれから新天さんは現在進行形で俺止めを合わせようとしない。

何が悪かったのだろうか。

普段は言わないことってたまに言うから嬉しいのであって、ましてや“可い”って怒られるようなことじゃないと思うんだけどなぁ。

「き、今日はありがとうございました…っ!明日は頑張りましょう!!じゃ!おじゃましました!」

新天さんはゲームが終わったのを確かめると、そう言って早足で部屋を出ていった。

「あ―ちょっと!」

不意をつかれたため、出遅れてしまったが、俺もそんな新天さんの背中を追うように部屋を出る。

「あ、円香さんパンツ―」

新天さんはリビングからパンツ(俺の)を持った結花の言葉もスルーして、玄関へと向かう。

パンツでも止まらないなんて……ッ!!

―てかお前そのパンツどこから出した!さっき全部片付けたはずだろ!!

そんなことをしている間に、新天さんは靴を履いて我が家をあとにしようとしていた。

「―また!……またいつでも來てください!」

俺は気づけばそう告げていた。

新天さんに帰ってしくなかったのか?

怒らせてしまったからただ機嫌を取ろうとしてたのか?

―自分でもわからない。

でも俺の投げかけたそんな言葉に、新天さんは振り返って、

「はい!また來ます!おじゃましました」

ひまわりのように無邪気な笑顔で言った。

【新天円香】

「可いって…勇人くんが可いって…」

これは死ねます!むしろこの幸せな気持ちのまま一生を終えてしまいたいくらいです。

私はベッドに投げ出したを転がしながらあの時の勇人くんの言葉をリピートします。

『新天さんもとても可いですよ』

「きゃっ!…んふふ♪……明日、“勇人”って呼んだらまた“円香”って呼んでくれますかね…!?」

そんなことをしているうちに、いつしか日をまたいでしまっていました。

そう気づいて、眠るために目を閉じても浮かぶのは彼の顔。そして、

『円香』

『新天さんもとても可いですよ』

の聲。

こうして私の、オープンスクール前夜はゆっくりと更けていくのでした。

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