《非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果》私のお泊ばびと俺の苦悩
百六十三話
【新転勇人】
「やです!」
「やですじゃない!可く言ってもダメなものはダメ!」
「やーだー!やですやです!」
「小學生か!駄々こねないで!」
「やーだー!やだやだやだやだやだ!!」
「はぁ……」
「勇人くんのいじわる!いけず!」
・・・・・・うん。
安心して?
俺にも意味がわからないのだから。
まぁこんな駄々っ子円香になってしまったのには理由があるのだが……。
そう。
時は一時間前に遡るのだ・・・。
︎
「んじゃおつかれ。また明日!」
「おう!じゃあな!」
「また明日!」
「またね〜」
俺たちは駅に著き各自解散となってすぐそれぞれの帰路についた。
俺は円香と。
左道さんは親の迎え。
淺見くんは一人で。
うむ。
まずこれが引っかかったのだ。
淺見くんは俺たちと同じ帰路のはずで、もちろん駅からも途中まで共に帰るものだと思っていた。
だが淺見くんは俺たちとは違う道を行った。
そんなことを疑問に思った俺はつい聲をかけてしまったのだ。
「淺見くーん道こっちじゃなくていいの?」
と。
今覚えばこれが悪かったんだ。
今考えてみれば聲をかけなくても良かったじゃないか、円香と二人きりで帰れるんだから。
後悔先に立たずとはよくいったものだ。
振り返った淺見くんは割と大きな聲で、俺に手を振り、なんかよくわからない鼻歌を歌っている円香にも聞こえるような聲で言った。
「今日先輩んちに泊まるんだ!だからこっちー!」
鼻歌が止まった。
と同時に隣からものすごい圧をじた。
「いいなぁいいなぁ……」
目を合わさないよう橫目で見てみると、荒くなった鼻息と共に眼力による威圧を放っていた。
NARUT〇のサ〇ケが天照使う時みたいになってるもん。
「そ、そっかー!またねー」
「おう!」
淺見くんの背を見送り……俺はその場からけなくなった。
もちろん彼の手によるもので。
「勇人くん勇人くん!――私たちも!」
と。
たかが外れてしまったかの如く、もはや羽い締めといっても文句は言われないくらいの力で抱きしめられたのだ。
淺見くんの行が気になった俺の発言により円香にひらめきを與えてしまったというわけだ。
これが事の始まりである。
︎
――そして今に至る。
今は抱きしめられてはいないが手をブンブンされている。ブンブン。
「絶対うちに泊まるんですー!」
「ダメだって言ってるじゃん!疲れてるから家で寢かせてよ!」
「私の膝の方が効きますよ!」
「うっ……」
悔しいが、一瞬でも効きそうと思ってしまった自分がいる。そりゃよく寢られるだろうよ!
だけど違うだろ!それとこれとは!
「だから!ね!泊まるのー!」
「やだよー結花も待ってるし!優香さんも……円香のお土産話聞きたいと思うよ?」
危ない。
急じゃダメって言うに決まってるじゃん!って言おうとしたけどあれだよな、優香さんならむしろウェルカムだよな。危なかった。
「あ、その點は大丈夫です。」
と、俺の安心もつかの間。スマホの畫面を見せてくる円香。
その畫面には、
『今日勇人くんうちに來ちゃいなよ!』
と。
ユー踴っちゃいなよ的なノリで招待をくらってた。
ジャニ〇ズもビックリだ。
「い、いや……さすがに申し訳ないしさ……?ほ、ほら!結花に殺されちゃうよ俺!早く帰ってきてって言われてるんだし!」
「あ、それも――」
『そういうことなら仕方ないです。
先生の告白上手くいくといいですね!』
・・・・・・・・・あれ?
「あ、明日早いからうちに泊まるって伝えたらこう返ってきました。」
・・・・・なんでこんなにいい子ちゃんになっちゃってるの?
なんかもっとこう、
『またにぃを誑かして!ないくせに!』
とか、
『じゃあ私も泊まります!なんならうちに泊まりますか?貓用のケージ買ってきますから。玄関、玄関でいいですよね?』
とか言ってもおかしくないじゃない?あの子。
なのになんで?なんでこんな時に限ってものわかり良くなっちゃうの?
「あ、いや、あの……あ、あ!あれ!もしかしたら親帰ってくるかもじゃん?だか」
「――それも大丈夫ですよ?」
『次帰る時にはお赤飯作らなきゃだわぁ〜』
と。
送信者欄には俺の母親である新転瑠璃子の文字がハッキリとうかんでいた。
・・・・・・俺もしかして外堀がっつり埋められてる?なんなら埋めすぎて山みたいになってる?
てかいつメアド換したんだよ!
ああああああああああそもそも帰ってくるなら結花から連絡ってるはずじゃん!
俺もう無理なのでは?
今日は円香の家に泊まるのが運命なのでは?
運命と書いて【さだめ】と読むのでは?
「勇人くん!だから!ね!?お泊まりですよ!お泊まり!」
屈託のない瞳を向けて無邪気に笑う円香に、俺の心は告げていた。
――もういいんじゃないか?
と。
「はぁ……もう分かったから。」
「ホントですか!!?」
「うん。」
嫌なわけじゃないんだけど、ただえげつないほどに疲れてるのよあたし。
次の休みの方がいいんだけど、多分それ提案したら「今日と次の休みの二回です!」とか言うだろうしな。
正直いたいけな男子學生を無自覚にするのはやめてほしい。もたないから。
「お泊まりっお泊まりーっ」
「んじゃとりあえず俺からも結花に連絡れとくね」
「お泊ばびっ!!?」
「ばび?」
るんるんで浮かれ散らかしていた円香の口がこんがらがった。
円香に執拗に目線を向ける。
「ど、どうしたんでしか?」
じーーーーーっ。
「な、ななっなんですか!」
じーーーーーっ。
「さっきのはたまたま噛んじゃっただけです!別に連絡してないとかじゃないです!」
じーーーーーっ。
「うぅっ……」
こりゃ本當は連絡してないんだろうな。
きっと左道さんと手を組んで送信者の名前とことかいじったんだろう。
疑問がひとつ晴れたな。
「まぁ連絡してなくてもいいよ。」
俺は結花へ電話をかける。
「うぅ……ごめんなさい……」
『にぃ!』
「うぉっ」
音割れしそうなくらいの瞬発力を持った聲が耳を劈いた。
『いつ帰ってくる!?すぐ!?すぐ帰ってくる!?』
「あ、ちょっと、一旦落ち著こう。出ちゃってる、いろいろ出ちゃってるから!」
『あ、ぅ…………っで、何兄貴そろそろ帰ってくんの?』
お、おう……。
早著替えならぬ早意識変え。
もはや多重人格のそれだな。
「う、うん。お兄ちゃん今結構驚いちゃってるんだけど」
『ん?でなに、なにか用?』
「いや、あのな?」
『ん』
…………さてなんて言おうか。
バカ正直に「円香のいを斷れなかった!」とか言ったら『じゃあゆいが斷ります。無理にでも斷ります』とか言いかねないし……。
だからといって噓をつくわけにはいかないだろうし……。
『なに?はやくして。ゆいやることあるの』
「あー……あのな?」
『うん』
…………だめだ。何も思いつかない。
もういいか?
うん、いいな。円香も待ってるし。
「俺今日泊まるわ。円香んちに。」
ええいままよ!なるようになれだ!
『は?』
︎
「私が隣です!」
「ゆいが隣!兄妹だから!」
「兄妹?はっ!笑わせないでください!私は妻ですよ?そしてあなたの姉!つまり私が隣に寢るのが決定事項です!」
「はーいじゃあ婚姻屆見せてくださーい!証拠!証拠を見せてくださいなー!」
「え〜?まさか〜結花ちゃんって〜婚姻屆が〜手元に〜殘らないこと〜知らないのぉ〜?おっくれてるぅー☆」
「キーーッ!ばか!ばか!ばーか!」
なんでこんなくそウザ円香が生まれてしまったか。
それはね、さっき円香も言ってたけど今日の寢る場所を決めているのよ。
あの電話で、結花も一緒に泊まると言って、なんなら俺達が帰るよりも早く円香のいえの前にいた。
そして現在。
セミダブルのベッドに二人、布団に一人。
円香すごいいい子だから最初は自分が布団に寢るって言ってたんだけど、そうなると俺と結花が同じベッドで寢るということに気づいて騒ぎ始めた。
・・・・・・俺が布団で寢れば済む話だと思うんだが――
「あのぉ……」
「「うるさい!」です」
(^ω^)
「きっと勇人くんは自分一人が布団で寢れば解決!とか思ってるんでしょうが逃がしませんからね」
蛇に睨まれた蛙ならぬ、に睨まれた一般男子高校生だ。目が合わせられない。これはきっと円香が可すぎるからだろう、そう思おう。
「にぃ……兄貴が円香さんに変なことしないように來てるのに一緒に寢させるわけないでしょ!」
「ふ〜ん、でも別にいいですよそれ。余計なお世話です。変なことされ待ちみたいなとこありますから」
何言ってんのこの子高生。
ナニ言ってんのまじで。
すました顔してとんでもない事言ってるぞ、さも當然かのように。
「それより結花ちゃんこそどうなんです?勇人くんと一緒に寢たら変なことしちゃうんじゃないですか?うぇ〜」
うぇ〜じゃねぇようぇ〜常習犯が。
「そのうぇ〜なこと毎日されてる兄貴が可哀想だわ」
「何をォ……ッ!」
「そっちこそッ!」
一即発。
火花散る睨み合いが繰り広げられている。
まるで龍虎図屏風のようだ。
でもこう見ると我が妹ながら円香と並んでも遜ないくらいの顔してるな。さすがにジャンルが違うから比べられないしそんな無粋なことはしないが。
――そろそろこの不な爭いをやめさせないといけないよな。
晩飯もそろそろできる頃だしね。
「一ついいかい?」
「「なに!」」
あの円香が敬語を捨ててしまうくらい余裕ないみたいだ。
まぁそんなことはどうでもいいよな。
今はこの爭いを終結させるのが先決だ。
「――喧嘩するなら俺帰るけど」
「あぅ」
「・・・」
「ご飯よー」
二人が気を落としてる時、優香さんの良く通る聲が響いた。
自分ではそんなおかしい事書いてないと思ってたからコメント見て作中にマジで何かやらかしたのかと思った。
あのね、小説書くこと再開してからいろんな語考えるの楽しくなっちゃってたくさん考えてるんだけど、それ読みたい?
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