《初めての》友達06
「いえ~い、雅君最高!」
ノリノリであった。控えめに腕をあげ「のってるぜ~」って言っている。
「マジか。マジなのか? こっち系もイケる口なの春香ちゃんは?」
呆れているともとれる拓哉をそっちのけで僕の雄たけびに共鳴する春香さん。
「ジーザス!」――、これ春香さんのです。
間違いない。彼は最高のの子である。僕のこのびを聞いてけれてくれるなんて、奈緒以外初めてだった。中學の卒業式の後、みんなで集まった時なんて、子から大ヒンシュクを買いぼろくそ言われた記憶はまだ生々しく心の隅に殘っているからこそ、深層の令嬢と評される春香さんが髪のを揺らし、肩を揺らし、腕を振り上げ一緒にんでくれるのがとても嬉しかった。
「あ、ありがとう……」「すご~い! 雅君もrock ‘n’ rollなんだね! カッコ良かったよ」「くは……」
歌い終わりマイクを置くと、春香さんが大絶賛してくれた。長いまつがキュートな瞳を輝かせ男子が喜ぶ褒め言葉を僕にプレゼントしてくれたのだ。もう、この際死んでもよかった。なぜ、春香さんがここまでノリノリなのか聞くことも忘れるほど、僕は嬉しくて心地よい心臓の鼓に酔いしれてしまった。
「なるほどね~。春香も知らないところでいろんな経験してるんだね」「そんなことないけど、私も一人じゃなかったから彼のおで」
拓哉が次の曲を探す合間、二人は肩を寄せ合い耳元でささやき合う。
「そっかそうだよね。そのうち會えるかなその子にも?」「……、どうだろ? 分からない。避けられてるから……私はまたお話ししたいのに」「そうなの? ん~、せっかくまた一緒のクラスになれたんだから、――ころの様にまた――人で遊べたらいいのになぁ。もちろん、その子も一緒にさ」「……うん、だから今日私本當に楽しい。また――」
次の曲が流れ二人の會話はそこで終わってしまった。 僕には二人が何を話しているのかさっぱり理解できなかった。理解できたのは、春香さんにはもう一度會いたい人がいる事だけであり、僕には真意も意図もわからない二人だけの會話である。これが何を意味していたのかは、この時の僕にはまだ知る由もない。でも、このまま僕が春香さんを思い続ければ、をもってその意味を知り苦悩することになるのであった。
「拓哉歌いま~す」「いえ~い! さすが拓哉くんナイスチョイス!」
春香さんに褒められて浮かれた僕は、拓哉が歌ういま渋谷のギャルの間で大人気と歌われるダンスグループの曲をぼーっと聞いていた。奈緒と春香さんは二人とも本當に楽しそうに拓哉の歌聲にタンバリンやマラカスで味付けをしている。その二人の表を見比べて僕は思った。 なんだろう。懐かしい気がする。薄暗い部屋で青白いで照らされる馴染の奈緒の橫顔と出會って間もない春香さんの橫顔が並ぶこの景。どこか懐かしい気がしてならない。 そう思った矢先、僕は目まいと頭痛に襲われその場で頭を抱えてしまった。 どうしてそう思ったのか理解できないし、の異常も原因不明である。楽しそうにキャッキャと笑い合う彼たちを見ていると、涙が出てきそうだ。 結局、僕はそのあと一回も歌うことはなかった。歌える狀態ではないのを隠し「聲の出し過ぎでが痛い」と言い傍観者へと転しずっと二人を観察していたのだ。カラオケボックスを後にしてからゲームセンタ―でプリクラを撮っている最中も、どうして二人から目を離せなくなってしまったのか考えたけど答えはでず、今は拓哉に肩をつかまれ耳元で男らしい企みを囁かれているところだ。
「俺が奈緒ちゃんを送るから、雅は春香ちゃんを家まで送るんだ」「え、いや、僕の家奈緒の隣だぜ?」「言いたいことは分かるよな雅? お前も春香ちゃんと帰った方がいいだろ?」
首に巻きつく拓哉の腕に必要以上の力がり、ゲームセンターの口で出來立てホヤホヤのプリクラを見てまさしく子高生らいく笑顔を咲かせている子二人を見る。 なるほどなるほど。拓哉は奈緒を狙っているわけで、僕は春香さんともっと仲良くなりたいわけだ。拓哉の言っていることは至極まっとうであった。
「その話し乗った!」「よし、じゃあ作戦開始だ!」
肩を組み合ったまま不敵に笑い合った僕らは、各々目當てのの子の前に歩みを進めて立ち止まる。
「あの、春香さん、うちまで送るよ」「奈緒ちゃん! ぜひ家まで送らせてくれない?」
なんとも見えいたいであろうか。ほら見ろ、二人が顔を見合わせて小首をかしぐ。
「みやび、あんたのうちは私の隣でしょ? 何を言ってるのよ? 無駄過ぎないその帰り方?」「あれ、拓哉くん家は私ん家の方だって言ってたよね? 二人とも逆だよね?」
ガッテーム! 分かってはいたがそうなのである。気が付かない二人ではない。彼たちが言うように、僕と拓哉が聲をかけるべきの子は逆である。だから、僕らの好意を知らない二人は至極真っ當で合理的な意見を言う。
「ち、違う! 學校に忘れしたんだよ! だから、そのついでに春香さんを送ろうと思って」「なら、私も一緒に行くわよ」「待って待って奈緒ちゃん! 俺は俺で奈緒ちゃん家の方に用事があるんだよ。それを雅に言ったら、雅は雅で學校に忘れもあるって話になってさ」「ふ~ん、忘れのね~」
見るからに僕を怪しむ奈緒。そりゃ、さっきまでし離れたところで緒話していた男二人が突然意味不明なことを言ったら怪しむだろうな。
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