《初めての》錯する心06
でも、僕は自分で決めたのだ。いつか必ず春香にこの想いを伝えることを。だから、今は春香の誤解を解くことが大事なのだ。そう、この奈緒と僕の関係が今後も問題――障害――になるとは知らず、その場限りの弁解をつづけた。
「そうなんだ。私、あんまりそういうの好きじゃないよ」「ごめん、春香。私からちゃんと説明するから怒らないでよ」「別に怒ってないよ。怒ってないけど、悲しいの……」「みやび、先に行っててあたしたちトイレ行くから」
春香はたぶん、怒っていた。何に対して怒ったのか分からないが、初めて春香は不機嫌な表を見せた。まるで、好きなお菓子を誰かに取られた時の子供の様に、頬を膨らませ僕に対してそっぽを向いたのだ。 それに、奈緒のあの慌てようも相當である。弱い立場の者が強者にすり寄る。そんなニュアンスのある発言で春香を連れてトイレの方へと歩いていくのだ。その、歩きだす瞬間に奈緒と目が合ったが不安そうであり、なんだか僕に謝っているような仕草もした。 この狀況は一なんなのだろうか。登校する者たちの喧騒で溢れる駐場の片隅で、僕は人込みで見えなくなったりする二人の背中をずっと見つめていた。
「お前ってやつは、どうしてそうも鈍なのか」
視界の外からそう聲がして振り返ると、そこには見るからに寢起きな拓哉があくびをしながら立っていた。
「二人が仲いいのは分かるけどさ、俺らの気持ちも考えてくれよ? 二人がいくら「私たちは単なる馴染で決してやましい気持ちはありません」って言ってもさ、それはお前らだけが思ってるだけだよ。俺たち部外者からしてみれば、二人はもしかしたら家では……って変な妄想しちまうよ」「でも、噓じゃないし、家でも普通に何もしてないよ。たしかに、夜にお互いの部屋に行くことも簡単だけどさ」「ならよ、俺と春香ちゃんが馴染だとするじゃん? どう、一緒に仲良く人の様に著して二人乗りで登校してきたら? 俺らってに多な高校生だぜ? 普通あそこまで著できるようになるには、一線超えなきゃ無理だ」「一線ってのは?」「抱いたのか? 奈緒ちゃんを?」「は? いや、は? え、は? ん?」
親指を人差し指と中指の間に挾む形で握りこぶしを作った拓哉が、意味が分からないことを言っている。そのハンドサインを洋畫で良く見たことあるが、これってつまりあれだよな――。
「まあ、それはないか。本當にお前たちはよく分からない関係だな。困った困った、俺はどうしたらいいモノかな」――、鞄を持った手を頭の裏に回し深いため息を拓哉が吐く。「あの、拓哉さん? どうした?」「え、ああ、いやこっちの話しだ気にすんなって。とりあえず、春香ちゃんと仲良くなりたいのならそんな行は慎めってことだよ」
確かに拓哉の言うことは一理ある。一線がどうとかは置いておいて、拓哉と春香が自転車で仲良く二人乗りして登校して來たら、僕は間違いなく発狂するに違いない。もしかしたら、拓哉に嫌悪を抱いてしまうかもしれないし、春香のことを避ける様になるかもしれない。そう、きっとこれが僕と奈緒の関係が周りに與える影響ってやつなのだろう。
「拓哉、ごめん。拓哉の気持ちも考えず、軽はずみな行してた」「頭を上げろよ雅。お前は何も悪くないさ。だって、ずっとお前たちはそうしてきたんだ。俺だってそれは高校學してから何度も目撃してる」
それに、と拓哉は一呼吸置いてから、頭を垂れる僕の肩に手を置きスポーツマン特有のさわやかな笑みをした。
「お前のおで俺は奈緒ちゃんと今こうして話せる様になって、すげー幸せなんだよ。好きな子と夜通しラインできるこの気持ち、お前も分かるだろ? そう言うことだから、お前が気に病むことはないぞ?」
やはりこいつはイケメンである。抱かれても良い。そう思えるほど、拓哉の言はイチイチカッコよかった。
「ただ、春香ちゃんがどう思うかは俺には分からないから、難しいなその辺」「怒ってたよな?」「怒ってるような悲しんでるような、微妙な表してた。あれは俺達には分からん想いがあるのかも」
校舎へ向けて歩き始め、さっき春香が見せた表を二人で思い出す。
「春香ちゃんが、奈緒ちゃんに焼きもち焼いたのか。はたまた、雅に焼きもち焼いたのか。謎は深まるな」「なあ、二人の関係は普通だと思うし、僕に好意あるとは思えないんだけど」「でも、明らかに昨日までの雅と春香ちゃんの関係とは今は違うっしょ? 呼び捨てにしてるし」「それは、昨日電話で説明したじゃんか」
自分だけ進展させやがってムカつくぜって昨日言っときながら、わき腹を小突いてくる拳には祝福の意味合いが込められていた。拓哉だって念願の奈緒との連絡先換で昨晩すげー浮かれてたくせに。それを小突かれた代わりに言うと、拓哉は大きなため息を吐き出した。
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