《初めての》錯する心08
「わ~正解! なんで分かったの?」
僕に手渡された特定の銘柄の紙パック式ココアを春香は嬉しそうに眺める。
「え、なんでって言われても、……なんでだろ?」――、一瞬、視界が歪んだ。「どうかした?」
頭が痛い。なぜか分からないが、片頭痛に見舞われて頭を押さえてしまう。 こちらも昔から変わらないパッケージの定番中の定番であるココアだ。別に、他意はないのだがなぜ僕がこれを選んだのか分からないのだ。春香がこれを呑んでいたのを見たことがないのに、僕はどうしてこれを迷うことなく買ったのか自分でも分からないのだ。
「いや、ごめん何でもない。ほら、奈緒から聞いたんだよ」「奈緒から? そっか、そうだよね奈緒なら知ってるもんね」
拓哉と談笑している奈緒に視線を向け、何かを納得した春香は変に追及することなく、昔から変わらないマグカップに注がれたココアがいい香りを放ちそうなパッケージを施されたココアにストローを通してご満悅な表をする。 駐場でのことが噓かのような天使スマイルに癒される僕。しかし、いまだに頭には鈍い痛みが走っており、大好である命の水を飲む気にもなれないでいた。
「そんじゃ、そろそろ時間だし行こうぜ~」「そうだね~、拓哉君昨日話してたことなんだけどさ~」「あ、そうだねどうしようか?」
拓哉の號令に習い奧の二人から順に來た道を戻るべく歩き出す。拓哉が先に僕を追い越し教室に戻っていき、そのし後に奈緒が僕の脇を通過する間際、
「上手く誤魔化しておいたから」
ってウインクした。たぶん、僕が元気がないのは春香に変な誤解を與えてしまったのを気に病んでいると思ったからに違いない。
「さ、雅君もいこ? それとも保健室に行く?」「いや! いい! 絶対に保健室にはいかない!」「ご、ごめんなさい……、何か気に障ること言ったかな私……?」
保健室と聞いて思わず大聲を出してしまった。
「あ、ごめん大丈夫。気にしないで、あんまり保健室が得意じゃなくてさ昔から」「そうなんだ……。あ、奈緒大丈夫だから先に行ってて」
僕の大聲に驚いた春香であったが、遅れている僕たちの狀況を察して先に行く奈緒達が振り返って戻ってこようとしたからそれを僕の代わりに制してくれた。
「どうかしたの? 本當に大丈夫?」「うん大丈夫。ごめん大きな聲だしちゃって」「ううん、ちょっとびっくりしたけど、誰にも苦手なモノあるから。どうして保健室嫌いなの?」
脂汗が出て変に汗ばむ右手の震えが収まらない。なんでこうなったのか理解が出來ない。生まれて初めてだこんな覚になるのは。それを見て春香はもう一度僕の隣に寄り添うように立ち僕の顔を覗き込む。
「何故かはわからないけど、昔からあの消毒くさい匂いと真っ白な空間が嫌いなんだ」「……昔から?」「うん、心ついて記憶がある小學二年生くらいからずっとね」
人によるかもしれないことであるが、僕が期の事で記憶しているのは小學二年生の春からである。保育園の記憶はほとんど殘っていないし、小一の記憶もないに等しい。寫真だってほとんどないのだ。その理由を聞いたら父親が「うっかり捨てちまってな~」って晝行燈よろしく言い放ちやがった。 まあ、その辺は特に気にしてもいないし、心つくころなんてのは人それぞれだし、奈緒もあまりその頃の記憶はないと言っている。寫真だって別に二年生の頃のがある。だから、別段記憶の始まる時期を気にしたこともない。
「何も覚えてないの? 一年生の頃のこと?」
けど、春香は気になる様だ。
「全然。春香はあるの?」「うん、私は絶対に忘れたりなんかしない。忘れたら私はもうここにはいられないもん」
それはどう言う意味だろうか? 質問しようとしたが、予鈴が鳴ってしまって僕は無理やり命の水の蓋を開けるとそれを一気に飲み干した。
「さあ、行こうもう大丈夫だよ」「うん、無理はやめてね、雅くん?」「ライフガードは僕の命! 元気満タンさ!」
酷く心配したような表をする春香に、僕はできる限りの強がりでそれに答えた。本當は今にでもベッドで寢たいけども、唯一ベッドがあり急病人が休める保健室が、僕は大嫌いなんだ。だから、そこに行くくらいなら空元気でもいいから教室で春香の笑顔を盜み見ている方がよほどに良かった。
今のが予鈴後ということもあり、まばらになった生徒達の流れに僕と春香は乗っかり教室へと向かった。
その日、僕は一日中、調がそんなじでろくに春香と話せないで一日が終わってしまった。
狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著愛〜
古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。 とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。 そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー 住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに觸れ惹かれていく美桜の行き著く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社會の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心會の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※R描寫は割愛していますが、TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団體、グループの名稱等全てフィクションです。 ※隨時概要含め本文の改稿や修正等をしています。文字數も調整しますのでご了承いただけると幸いです。 ✧22.5.26 連載開始〜7.15完結✧ ✧22.5 3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ ■22.8.30より ノベルバ様のみの公開となります■
8 127星乙女の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~
■電子書籍化されました レーベル:アマゾナイトノベルズ 発売日:2021年2月25日(1巻)、4月22日(2巻) (こちらに投稿している部分は「第一章」として1巻に収録されています) 夫に浮気され、結婚記念日を獨りで過ごしていた林原梓と、見た目は極道の変わり者弁護士桐木敬也が、些細なきっかけで出會って、夫とその不倫相手に離婚調停を申し立て、慰謝料請求するお話。 どう見ても極道です。本當にありがとうございました。 不倫・離婚がテーマではありますが、中身は少女漫畫テイストです。 ■表紙は八魂さま(Twitter→@yadamaxxxxx)に描いて頂きました。キラキラ! →2021/02/08 井笠令子さま(Twitter→@zuborapin)がタイトルロゴを作ってくださいました。八魂さまに調整して頂き、表紙に使わせて頂きました~ ■他サイトに続編を掲載しています。下記をご參照ください。 (この作品は、小説家になろうにも掲載しています。また、この作品を第一章とした作品をムーンライトノベルズおよびエブリスタに掲載しています) 初出・小説家になろう
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