「はぁ……まぁ昨日飯を奢ってもらったしな……」

「わかれば良いのよ、じゃあ土曜日開けといてね」

「へいへい」

話をしている間に、いつの間にか誠実の通っている西星高校の校門前が迫っていた。

「じゃ、私行くから」

「気を付けてな～」

校門前で誠実と奈穂は別れ、誠実は學校にっていく。

そこで誠実は、いつもはじない、大勢の人間の視線をじた。

そんな視線が若干気味悪く、誠実は後ろを振り返る。

「な、なんだお前ら！！」

振り返ると、なぜか登校中の生徒、主に男子が、誠実を凝視したり、睨んだりしていた。

「い、伊敷君………」

「な…ぶ、部長……」

そんな視線の中で、誠実に話かけてきたのは、誠実のクラスメイトであり、昨日告白まがいの事を言われた沙耶香だった。

なんだか若干顔が悪く、目元には涙を浮かべていた。

誠実は昨日の事があり、し沙耶香と話すのが気まずかった。

「お、おはよう……」

「お、おう……おはよう」

「あの……一緒に登校してた、すっごく可い子って……だ、誰？」

「え？」

誠実は沙耶香がなんでそんなことを聞くのか、不思議だった。

昨日あったことを気にして、雑談をして、気まずい雰囲気を無くそうとしているのだろうか？　などと誠実は考えながら、さらっと答える。

「い、妹だけど？」

「え？　妹？？」

「「「妹？？？」」」

「おわっ！！　なんだお前ら！」

いつの間にか、登校中の生徒、やっぱり男子が近くまで寄ってきており、ちゃっかり誠実と奈穂の話を聞いていた。

「そ、それより！！　妹って……ほ、ほんと？」

「あ、あぁ…奈穂って言って、正真正銘俺の妹だよ」

それを聞いた途端、沙耶香の顔は健康的なに戻り、表も明るくなる。

そして、それを聞いていた男子生徒の集団は、誠実に言い寄り始めた。

「なぁ君、僕と友達にならないかい？」

「それより僕と友達になろうよ」

「こんな不細工達よりも俺と友達になろう！　お兄様」

「誰がお兄様だ！　お前ら、奈穂目當てか！」

誠実はそこで気が付いた。

今まで奈穂の事は、健と武司以外には話したことがなかった。

まさか誠実に、あれだけの妹が居るとは誰も予想出來ず、それを知った男子生徒たちは、奈穂と是非ともお近づきになろうと、まずは誠実に近づいてきたのだ。

「やめろ！　腕をつかむな！！　離せ！！」

「頼むよ～伊敷く～ん」

「俺たちに、あのの妹さんを紹介してくれ！！」

「あぁぁ！！　うるさい！」

誠実は男子生徒達に迫られるのが嫌になり、全速力で走って逃げていく。

「あ！　伊敷君！！」

「逃げたぞ！」

「追え！　逃がすな！！」

「待ってくれ！　將來のお兄様！！」

誠実を追って、男子生徒たちはその場から一気に消えた。

しかし、一人だけその場にポツンと沙耶香が取り殘されていた。

「伊敷君……良かった……」

沙耶香はほっとをでおろし、安心する。

＊

「あ、朝から散々だった……」

「おぉ、朝っぱらからお疲れ、奈穂ちゃんと一緒に來たんだって？」

「珍しいな、確かお前って、奈穂ちゃんから嫌われてるんじゃなかったか？」

無事教室にたどりついた誠実は、いつものように健と武司の元に向かい、雑談をしていた。

「あぁ、それがなんか、俺の勘違いだったみたいでよ。なんか嫌われてなかったらしい」

「「まぁ、そうだろうな」」

「なんでそこでハモる？！」

健と武司の言葉に、誠実は不思議そうに尋ねると、二人はなぜか呆れた表で誠実に言う。

「まぁ…奈穂ちゃんの事だから、チャンスだと思ったんだろ？」

「昔はよく遊んだもんだよなぁ～、今じゃあすっかり大人になっちまったけど…」

昔を懐かしむ二人を見ながら、誠実は不思議そうな表で二人に話を続ける。

「參ったよ、なんか今度の土曜に買い行こうとか言いだすし、今朝は俺を馬鹿にするし……本當に俺の事嫌いじゃないんだか……」

その話を聞いた健と武司は、二人で顔を合わせてため息を吐く。

何か言いたげな二人に、誠実は不思議そうに尋ねる。

「おい、言いたいことあるなら言えよ、どうした？」

「いや、兄妹の事をとやかく言うのは、俺達にはできないだろ？」

「？　言ってる意味が分からんが……まぁいいや、そんな事より今は……」

「お、おはよう……い、伊敷君……」

誠実が二人に沙耶香の事を相談しようとした瞬間、ちょうど良いタイミングで、本人が登場してしまった。

朝の出來事のせいで、すっかり放置してきてしまったが、こうして教室で再び顔を合わせると、なんだか気まずくなってしまう誠実と沙耶香。

「あ、あぁ……おはよ……」

とりあえず挨拶を返す誠実だが、次に何を話せば良いかがわからない。

助けを求めようと。健と武司を見るが、先ほどまで近くに居たはずの二人はいつの間にかどこかに行ってしまった。

「ね、ねぇ……放課後…用事あるかな？」

「ん？　あ、あぁ…何もないけど……」

「じゃ、じゃぁ……ちょっと話良いかな？」

言われて誠実は「來た」と思った。

きっと昨日の話だろうと誠実は予想する。

誠実もそのことで話がしたかった為、丁度良いと思った。

「わ、分かった。じゃぁ…どこが良いかな？」

「育館倉庫か、誰も居ない空き教室か、先生の居ない保健室が良いな……」

「何その、特殊な場所？！」

誠実は沙耶香のよく分からない場所指定に、誠実は思わずツッコミをれてしまう。

「じゃ、じゃあ、四階の空き教室で良いかな？　あそこなら誰も居ないし……」

「う、うん、じゃあ放課後ね……」

わずかに頬を染めながら、沙耶香は了承し、すぐさま誠実の元を離れ、自分の席に戻って行った。

「はぁ……放課後か……」

何とか放課後までに、昨日のことに対する回答を用意せねばと思う誠実。

改めて告白されるのか、それを斷るべきかどうなのか、誠実は昨日からどうしようか悩んでいた。

「大変だな～、まぁ頑張れよ！」

「前橋は良いと思うぞ、惚れた男に盡くすタイプだな」

「お前ら、どこ行ってたんだよ……」

「「ちょっと、星を見に……」」

「今は朝だろ！！」

しょうもない事を言う二人にツッコミをれる誠実。

放課後の運命の時間まで、沙耶香になんと言うかを考え始める。

相談しようと思った二人の友人は、なんだか頼りなく、誠実はどうしたものかと考え込む。