《99回告白したけどダメでした》55話
「す、すいません……お待たせして」
「いえ、構いませんわ。もう出発してもよろしいですか?」
「あ、はい。大丈夫です……」
誠実は若干疲れた様子で栞にそう言い、靴を履いて外に出る。
すると、誠実の母親が何やら不自然なほどの笑みを浮かべて、玄関の方にやって來た。
誠実は、母の顔を見ただけで嫌な予がしていた。
「ふつつかな息子ですが、よろしくお願いします」
誠実の母親は、いつもの様子とは違い、凄く丁寧な口調で栞に頭を下げる。
そんな誠実の母親に、栞も丁寧に応える。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。お母様」
お母様と呼ばれ、誠実の母はどこか嬉しそうな表で誠実を見送る。
ただ遊びに行くだけなのに、なぜだか結婚の挨拶みたいになってしまったようで、誠実は複雑な心境だった。
「伊敷様」
「はい?」
「本日、運転手を務めさせていただきます。栞様の執事の竹村義雄(たけむらよしお)と申します」
「あ、どうもご丁寧に……」
家を出て車に乗ろうと近づいた瞬間、車の影から60歳くらいの白髪の男が、誠実にあいさつをしてきた。
執事まで居るのか、などと誠実は驚きながら、義雄にあいさつをする。
「蓬清家までは、約35分ほどです。中でおくつろぎになってお待ちください」
義雄はそう言って車のドアを開け、誠実に中にるように促す。
誠実はお禮を言いながら、車の中にる。
中は車の中とは思えないほど豪華だった。
無駄に座り心地の良い椅子に、しっかり車はクーラーが聞いており、実に居心地がよかった。
「す、すごい車っすね……」
「そうでしょうか? 普通こんなものではないのですか?」
「いや、こんなのに乗ってる一般人は居ません」
車に乗車し、誠実は周りをキョロキョロ見まわしながら、栞に言う。
広い車だというのに、栞はなぜか、誠実の隣に覚を詰めて乗って來た。
「……あの、先輩?」
「はい?」
「なんか……近くないですか?」
「そうですか? 車ですから、こんなものではないでしょか?」
「先輩の方、かなり余裕があるような……」
「気のせいです」
「いや、でも……」
「気のせいです」
「はい……」
狹い車で、こんなにも近い距離に子が居ると思うと、誠実は変に張してしまう。
誠実がそんな狀況の中、車は目的の場所へと向かい始める。
運転手である義雄は、バックミラーで2人の様子を伺いながら、こう思っていた。
(今のところは大丈夫なようじゃな……)
義雄は気が気でなかった。
栞が、特定の男子に対して好意を持ったことなど一度もなく、こんな風に男子を家に招待などもしたことがなかった。
(あれが、お嬢様の思い人……なんとも普通じゃな)
は自由。
義雄はそうは思っていたが、やはり気になってしょうがなかった。
子供に恵まれなかった義雄にとって、栞は孫のような存在であり、生まれてからずっと、世話係として傍に仕えていた。
そんな栞が、初めて好意を持ち、お禮という名目ではあるが、家にまで招待したのだ。
どんな男か、義雄が気になるのも無理はなかった。
(しかし、第一印象は悪くなかったの、挨拶もハキハキしていた……だが、そういう輩こそ、信用ならん!)
今まで、栞に言い寄ってくる男は數多くいた。
大政治家の息子やどこぞのアイドルグループのリーダーなど、どいつもこいつも金目當ての最低野郎だった。
しかも栞のあの貌もあって、是非妻にというアラブの石油王なんかもいた。
そんなアプローチを栞はすべて跳ね除け、今日まで生きてきた栞が、自らアプローチをかける男。
もしかしたら、騙されているのではないか?
義雄はそんな悪い方にばかり考えてしまい、いつも以上に警戒していた。
(もし、あの男がお嬢様に何かしようものなら………殺(や)ろう)
義雄はそんなことを考えながら、屋敷に向かう。
アメリカ陸軍に居た経験もある義雄にとって、男子高校生一人を抹殺するなど、針のに糸を通すよりも簡単だ。
しかし、栞が惚れた男。
そうやすやすと信用を裏切られては困る。
義雄は今日一日、誠実の行に注目することにした。
「う……な、なんか悪寒が…」
「あら? クーラーが聞きすぎていましたか?」
後ろの誠実は、何やら嫌な予をじながら、黙って屋敷につくのを待っていた。
さっきから栞が楽しそうに話をしてくるにも関わらず、全く頭にってこない。
理由は簡単だった。
栞がこんなにも近くにいて、しかもなんだか子特有の甘い匂いを漂わせてくる。
さらに、笑顔はどこか子供っぽいのに、素の狀態だとしっかりと年上の、といったじの雰囲気にドキッとし、誠実は上手く栞と話せずにいた。
「伊敷君?」
「は、はい!」
「もぉ~、ちゃんと聞いてますか?」
「あ……す、すいません……なんか張しちゃって」
「そんなに張しなくても大丈夫ですよ。そんな大した家じゃありませんから」
(大した事ない家の人は、こんな車で迎えに來ないと思いますが……)
心の中でそんなことをツッコミながら、誠実は外の景を眺めて気を紛らわす。
そのころ、運転席から栞と誠実のやり取りを聞いていた義雄は……。
(話相手もまともにできんのか! まぁ、一般人がこんな車に乗って張しない方が無理なのじゃろうが……男ならそこはドシっと構えておけばいいんじゃ!!)
誠実に対して敵意を現し始めていた。
しかし、その様子を義雄は決して表に出さない。
主人に使える主として、出すぎた真似をしないようにしているのだ。
だが、今回はそれがもどかしい、こんな立場でなければ、すぐにでも誠実に説教の一つも始めたい気持ちの義雄。
(お嬢様は一あの男のどこに魅力をじたのじゃ……確か、絡まれているところを助けてもらったと聞いたが……そんなことが出來るようにはとても……)
バックミラーで誠実の様子を伺いながら、義雄はそんな考えを巡らせる。
そうこうしている間に、屋敷の近くまで來ていることに気が付く義雄。
「お嬢様、もうそろそろで到著いたします」
「わかりました。ありがとうございます」
栞の明るい聲に元気をもらう義雄。
そんな栞の為にも義雄は誠実が本當に栞に見合うような男なのか見極めようと、やる気を出していた。
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