《99回告白したけどダメでした》60話

「今までそんな事する親父じゃなかったから、最初は驚いたんですけど、そのうち帰ってくるだろうと思って、ほっといたんです。そしたら、事故にあってて……」

「それは、びっくりですね……」

「まさかと思いましたよ。幸い足を折ったくらいだったんですけど、なんで直ぐ探しに行かなかったんだろうって……だから、今日先輩のお父さんの話を聞いた時、親父と似てるなって思って、なんだか心配になったんです」

あの日の出來事を思い出し、誠実は真っ先に探しに行こうと切り出した。

誠実の父親が家出した時に、誠実はそれが出來なかった。

そのことを誠実はし気にしており、自分勝手に罪滅ぼしの意味で、こうして栞の父を探していた。

「多分、俺たち子供にはわからない悩みが、親父達にはあるんだと思います。俺たちにも悩みがるように……」

「そうですよね、いくら親と言っても、同じ人間ですもんね……」

「だから、先輩がお父さんと話そうとしたことは、間違いじゃないですよ。話をしないと、何も分かり合えませんから」

後輩から笑顔でそういわれ、栞は自信を持つことが出來た。

栞は自分よりも年下の男子に勵まされ、なんだか年上の自分がけなくなった。

しかし、同時に誠実の事を頼もしくじた。

「にしても、すごい人ですね……はぐれないように気を行けないと」

「そうですね、ではこうしましょう」

「え! せ、せんぱい、あの……手を握るのはちょっと……」

栞は満面の笑みを浮かべながら、誠実の手を取る。

誠実はそんな栞の急な行に、ドキッとし、顔を赤らめながら栞に言う。

しかし、栞は誠実の手を強く握って離さない。

「人も多いですし、迷子になっては元も子もありませんわ」

「で、でも…こんなところ、誰かに見られたら」

「私は構いませんよ。さ、行きましょう」

「あ! ちょっと先輩!」

栞は誠実の手を引いて、ズンズンと街中を歩いていく。

こういう時に限って、知り合いと會ってしまうのではないか。

誠実はそんな嫌な予がしながらも、今は栞の父を探すことに集中しようと、改めて捜索を再開する。

「いませんね……」

「そうですね……お父様…」

探し始めて既に2時間が経過しようとしていた。

栞は次第に不安を募らせ、表も暗い。

誠実はなんとか栞を安心させることはできないかと考えるが、何も思いつかない。

早いとこ、栞の父親を見つけ出して、安心させよう。

それしかないと思った誠実は、辺りを見回す。

しかし、そう都合よく見つかるわけもなく、それらしい人は、見當たらない。

考えてみれば、晝飯も食べずに捜索しており、腹も減っていた。

「あ、先輩。し休憩してあれ食べませんか?」

「え、クレープですか?」

ちょうど近くにあったクレープ屋に、栞をう誠実。

そのクレープ屋は、ここら辺では味しいと有名で、何度か雑誌にも取り上げられた事もある店だった。

中でも、男で食べると必ず結ばれるというクレープは、カップルの間で有名であり、休みの日には、毎日行列が出來ていた。

しかし、今日ははたまたま空いているらしく、行列は無い。

誠実と栞は店にり、テイクアウト用にクレープを注文する。

「先輩は何にしますか?」

「じゃあ、私はストロベリーのを……」

「じゃあ、俺は……ラズベリーにしようかな」

それぞれ注文が決まり、レジの店員に注文を伝え、代金を払う。

すると、なぜか店員の若いが、ニヤニヤしながら誠実と栞を見ていた。

気になった誠実は、店員に尋ねる。

「あの、何か?」

「あ、すみません。お客様もカップルクレープを食べに來たんだなぁ~って思ったら、つい和んでしまって」

「え? カップルクレープ? 俺たちそんなの頼んでませんよ?」

「あ、もしかして知りませんでした? ストロベリーとラズベリーの二つのベリー系のクレープをカップルでそれぞれ頼んで食べると、必ず結ばれるっていう噂」

「む、結ばれ……え?」

「それにしてもかわいらしい彼さんですねぇ~、何て言うか、品があるって言うか。お兄さんは普通なのに」

「悪かったですね!」

「すいません、冗談ですよ! お似合いですよ~、コレを食べてさらに仲良しになって、子化を食い止める運をドンドンしてくださいね!」

「そ、そういう関係じゃないですので!!」

誠実は顔を赤くしながら、二つのクレープをけ取り、栞とともに店を出た。

幸い先ほどの話を栞は聞いて居なかったようで、気まずい雰囲気にはならなかった。

「先輩、どうぞ」

「あ、すいません。えっと…今お代を……」

「気にしないでください、俺のおごりです」

「で、ですが……」

「疲れた時は甘いが良いですよ」

誠実はそう言って、栞から代金をけ取らなかった。

理由はただ単に、子に金を出させるというのが、なんだか男としてかっこ悪くじたからだ。

「ん、やっぱり味いな、流石有名店」

誠実と栞は、公園のベンチの腰を下ろして、2人でクレープを食べる。

栞の父はどこに行ってしまったのやら、そんなことを考える誠実の橫で、栞はクレープを食べる。

「本當ですね、甘くて味しい……」

久しぶりに栞の笑顔を見た気がした誠実。

本當に味しそうに、笑いながらクレープを食べる栞を見て、誠実は思わずこんなことを言ってしまった。

「やっぱり、先輩って可いっすね……」

「え……」

「……あ」

誠実のいきなりの発言に、栞の顔は見る見るうちに赤くなっていく。

誠実も自分が何を言ったのかに気が付き、急に恥ずかしくなって、栞とは反対側の方向を向く。

「す、すいません! つ、つい……」

「い、いえ……あ、あの…ありがとうございます」

なんだか傍から見たら、付き合い始めたばかりのカップルのようで、誠実と栞の周辺だけ、溫度が高くなっているようなじだった。

しかし、ながら今はそんな狀況を楽しんでいる場合ではない。

探し始めて、すでに2時間ちょっと、全く手掛かりのつかめないままで、不安はどんどん大きくなる。

誠実たちは、早々とクレープを食べ終え、公園を後にし再び捜索に戻る。

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