《99回告白したけどダメでした》142話
「はぁ……はぁ……やべーな、まずはシャワー浴びたい」
汗でベトベトになってしまい、汗臭いまま恵理と會うのも失禮だと思い、誠実は取り合えずシャワーだけ浴びさせてもらおうと考えながら家のドアを開けた。
「ただいまー」
「お、やっと帰ってきたか~恵理ちゃん待ってたんだぞ~」
「なんすかその変なキャラ……」
家のドアを開け玄関で誠実を待って居たのは、フリル袖の紺のトップスに白いスカート姿の恵理だった。
家の中は日差しが無い分、外よりも涼しかった。
「々聞きたいところなんですが、とりあえずシャワー浴びて良いっすか?」
「うむ、許してしんぜよう」
「だからそのキャラなんなんすか……」
恵理から許しが出たところで、誠実は著替えを準備し風呂場に向かう。
自宅には両親は居なかったが、奈穂が家に居た為、恵理の相手をしていたようだった。
軽くシャワーを浴び、誠実は著替えを済ませ、エアコンのガンガンに効いたリビングに向かった。
「あぁ……生き返る…」
思わずそんな言葉出てしまうほど、外との溫度差は大きかった。
「馬鹿な事言ってないで、さっさとドア閉めてよ。冷気が逃げる」
「あ、奈穂も居たのか……はいはい」
誠実は言われるがまま、リビングのドアを閉める。
リビングには、ダイニングテーブルに座って向かいあう恵理と奈穂が居た。
「んで、今日は急にどうしたんですか? 俺を訪ねて來るなんて」
「いや~、実はお姉さん、今困っててさ~」
「何かあったんですか?」
誠実がそう尋ねると、恵理は視線を下に落として話しを始めた。
奈穂も気になるらしく、黙って聞いていた。
「最近、同じ大學の先輩に告白されたんだけど……」
「あぁ、恵理さんモテそうですもんね」
「そりゃあ、男共が放っておかないわね」
恵理が告白されたと言う話しを聞き、伊敷兄妹は疑う事もなく話しの続きを聞く。
「でも、正直タイプじゃないから斷ったんだけど……」
「あ、もしかしてその後もしつこく告白してきたんですね、全くあきらめの悪い奴ですね~」
「おにぃ…それ自分で言ってて恥ずかしくない?」
兄の言葉に、奈穂は頭を押さえ呆れた様子で言う。
「まぁ、その後もしつこく迫ってきて……正直怖くて……それで本當は彼氏居るって言ったら……」
「あぁ、私なんかなんとなくわかった……」
「え? 諦めたんじゃ無いのか? そいつ?」
不思議そうな顔をしながら、誠実は恵理に尋ねる。
そんな誠実に、恵理は話しを続けた。
「うん、どんな彼氏か見たいって……それで……」
「この後連れて行く予定で、丁度いい人もいないから、咄嗟にうちのおにぃを頼って來たって訳ですね」
「奈穂ちゃんってエスパー?」
どうやら奈穂の言うとおりらしく、恵理は驚いていた。
誠実は話しを聞きながら、頭の中で話しを整理する。
「えっと……要するに……俺が彼氏役をやるって事ですか?」
「まぁ、そんなじです……お願いします」
「う~ん……俺は良いけど…俺で良いのかな? 全然釣り合ってないと思うけど……」
お願いされる誠実だったが、あまり乗り気では無かった。
自分なんかでは、直ぐに偽の彼氏だとバレてしまうのではないかと心配だった。
「ま、案外適任かもよ? 相手はおにぃの同族みたいなもんだし」
「おい妹よ、それはどう言う意味だ?」
「同じストーカーって意味」
「一緒にするな! 俺は……否定できない……」
確かに自分も綺凜に何度も告白したし、々しつこくやってしまった事を考えると、すべて否定する事が出來ない事に気がついた誠実。
「大丈夫! 一緒に居てくれるだけで良いし! あとは私が上手くやるから!」
「まぁ……それで良いなら……海でもお世話になりましたし……」
「本當?! ありがとう! じゃあ、早速準備しようか!」
「え? 準備?」
「奈穂ちゃんも手伝ってくれる?」
「いいですよ、いつもお世話になってますし」
そこから、恵理に告白してきた男に対抗する為の作戦會議が始まった。
まずは簡単に二人の馴れ初め話を作り、その後どのように際してきたのかを話しあう。
その後、誠実は服を著替え、髪をセットし、しでも恵理に釣り合うように頑張った。
そして、約束のショッピングモールのカフェテリアに三人はやってきた。
「で、なんで奈穂までついてきたんだ?」
「々気になるし、その男の顔も見てみたいし」
「ただの興味本位かよ……」
「じゃあ、私はここで待ってるから、相手が來たら來てもらって良いかな?」
「わかりました、じゃあ俺と奈穂はとりあえず隠れて様子をうかがってますんで」
恵理はカフェテリアにり、外からでも様子が覗える席に座る。
誠実と奈穂は向かいの大手ドーナツ店の店先の席で、ドーナツを食べながら様子を覗っていた。
「全く、しつこい男は嫌われることも知らないなんて、とんだお間抜け野郎だぜ」
「その言葉、おにぃに全部帰ってくるわよ」
ドーナツを食べながら、誠実と奈穂は相手の男が來るのを今か今かと待っていた。
「なんだか探偵になった気分だな」
「探偵はドーナツじゃなくて、あんぱんと牛じゃない?」
「それは刑事だろ?」
などと話しをしていると、恵理の座る席に一人の男が座った。
「來たみたいだな…普通にイケメンだ……死ねば良いのに」
「はいはい、嫉妬してないで行った行った」
「お、おう……」
奈穂に背中を押され、誠実は向かいのカフェテリアに向かう。
中にり、誠実は恵理の元に向かい、恵理の隣の席に座った。
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