《99回告白したけどダメでした》144話
「志保ちゃんみたいにほどよくある人にはわからないわよ!」
「鈴、謝るから落ち著いて……」
「綺凜ちゃんも言ってやんなよ、あのおっぱい星人に!」
「えっと……の子がそういう言葉は使わない方が良いんじゃないかな?」
綺凜は顔を引きつらせながら鈴にそう言う。
志保も頭を押さえながら、呆れた顔で鈴の背中を押して、その場を離れる。
「あ~あ、あたしも沙耶香ちゃん位とは言わないけど、志保ちゃん位はしいなぁ~」
「まだまだ長するわよ」
そんな話しをしながら、綺凜達三人は水著売り場まで向かって歩く。
「それにしても、あの二人にはまいったねぇ~」
「あの二人って? 沙耶香と沙の事?」
後ろに腕を組みながら、鈴が言う。
沙耶香と沙が誠実を好きな事は、料理部の中では有名だった。
今では、どっちが勝つかで賭けまで行われるしまつなのだが、全員が沙耶香に投票している為、賭けとして立しなくなっていた。
「伊敷君ってたしかに親切だし、優しいけど、そこまでモテるじじゃないよね? 前までは綺凜にべったりだったし」
「伊敷君は普通にモテると思うわよ……私が言うのも何だけど、好きな人には一途だし……」
寂しげな表で、鈴の言葉に答える綺凜。
そんな綺凜を見て、鈴はこの話をするべきでは無かったと思い、口を押さえてハッとする。
「えっと……ごめん、そう言う意味じゃ……」
「良いのよ、私が彼を振り続けた事は事実だし……何を言われても仕方ないもの……」
三人の間に、気まずい空気が流れる。
そんな空気の中で、志保がため息を吐いて二人に言う。
「まぁ、人間だもの好みがあるわよ……それに、今は仲良くやってるんでしょ? なら良いじゃ無い?」
「志保……ありがと」
「ま、正直うちの部長がこの旅行で何かしでかさないか心配だわ……」
「え?」
「無理矢理伊敷君を押し倒さないか……」
志保は再び頭を押さえて、ため息を吐きながらそう言う。
綺凜も沙耶香の話しを聞いていた為、完全には否定できず、苦笑いで答える。
「あ……あはは……いくら好きでもそれは……」
「うーん、薬局であれ買わせとく?」
「鈴、一何を買わせる気?」
「えっと……コン……」
「あぁ、もう良いわ……さっさと行きましょう」
鈴が危ない事を言おうとしたので、志保は鈴の口を押さえて話題を無理矢理終わりにさせる。
「なんだか、いろんな意味で疲れる旅行になりそうね……」
「でも、私は楽しみよ…こんなに大勢で出かけた事ないから…」
「え? でも、綺凜って友達多そうなイメージだけど?」
不思議そうに綺凜を見ながら、鈴が尋ねる。
そんな鈴に綺凜は笑みを浮かべながら答える。
「學校で話しはするけど、プライベートでも會うのは沙くらいなの……昔々あって……」
綺凜の話しに、またしてもまずいことを聞いてしまったと、鈴はまたしてもハッとする。
「ご、ごめん……えっと、私で良ければいつでも付き合うし!」
「えっと……気を使わなくても大丈夫だよ?」
気をつかわれてしまい、逆に困ってしまう綺凜。
困っている綺凜を見て、志保は助け船をだす。
「鈴、いい加減にしなさい、人にはそれぞれ々と事があるのよ」
「あぁ、志保が武田君を好きみたいなじで?」
「鈴、黙らないとパーンするわよ?」
「ご、ごめんなさい……」
志保の言葉に鈴は顔を強張らせながら、謝罪する。
綺凜は志保の言う、パーンとは何だろうと考えながら、二人の様子を見ていた。
そんな時だった、鈴と志保の背後に、見慣れた人の顔を見かける。
「あれ? あれって……伊敷君?」
「え、本當? たしかお客さんが來て、先に帰ったんじゃ……」
「でも、確かにあれは伊敷君ね、聲かけてみましょう」
そう言って志保はし離れたところでスマホを見ている誠実の元に向かおうとした。
しかし、丁度そのとき、その場の三人は同時にきを止めた。
「えっと……あのの人って誰?」
スマホを弄る誠実の背後から、綺麗なが現れ誠実の目を両手で隠し「だ~れだ?」をしている。
それだけでも二人が親しい間柄だとわかる上に、誠実の服裝がファミレスで見た時と変わっており、かなり気合いのった服裝と髪型になっていた。
三人は咄嗟に柱のに隠れ、互いに顔を見合わせる。
「なになに! 誰あの! 伊敷君、お客さんが來て帰ったんじゃなかったの!?」
「し、知らないわよ! しかもすっごい人だったわよ!」
「彼みたいだったわね」
鈴、志保、綺凜の純で興した様子で言う。
そして三人は、ファミレスでの沙と沙耶香の會話を思い出す。
『だって…誠実君って、最近いつの間にかの子と仲良くなってる事が多いから……今回ももしかしてと……』
(((もしかしてが當たった!!!)))
三人が同時にそう思った。
まさか本當にそんな事になっていると思わず、三人は驚きながら誠実の様子を覗き見る。
誠実とは仲よさそうに二人でショッピングを楽しんでいる様子だった。
先ほどまで三人が居た、雑貨屋で商品を見ていた。
楽しそうに、貓耳カチューシャをが誠実に付けて寫真を撮っている。
「まさか……伊敷君って既に……」
「そ、そうなの? でも、まだ沙耶香ちゃんにも沙ちゃんにも返事をしてないんじゃ……」
「そ、そういえば…」
「何か知ってるの綺凜?」
「この前一緒に帰った時に、沙に電話で……」
綺凜は沙との電話で話していた言葉を思い出す。
『ありがと、それと……そのとき返事もするから……』
その言葉を思い出し、綺凜はすべてに納得が言った。
もしかしたら、今回の旅行で、沙の事を完全に振るつもりなのではないかと。
もう既に決まっている人が居るから、諦めてくれと…。
綺凜がそのことを鈴と志保に教えると、二人はフリーズしてしまった。
「な、なに……じゃあ、伊敷君は、この旅行であの二人に決著付ける気でいるってわけ?」
「まずいよ、まずいよ! 主に沙耶香ちゃんがまずいよ!」
「と、とにかく、このことは鈴と志保と私のって事で……」
綺凜の提案に、鈴と志保は親指を立てぐっと自分の前にだし、了解した事を伝える。
三人が再び雑貨屋を見た時には、誠実との姿は無くなっていた。
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