《99回告白したけどダメでした》145話
*
「あれ? 奈穂の奴どこに行ったんだ……」
彼氏役を演じ終え、誠実と恵理は店を後にした。
二人は奈穂と合流しようと向かいのドーナツ屋に向かったのだが、先ほどまで奈穂がいた席に奈穂は居なかった。
「あいつ、トイレか?」
「暇で、他のお店でも見てるんじゃ無いかな?」
「そんな、恵理さんじゃないんですから」
「それはどう言う意味かな? 彼氏君」
「調子に乗りました、すんません」
ちょっと調子に乗って言い過ぎたと思い、誠実は恵理に謝罪する。
「とりあえず電話してみます」
誠実は自分のスマホをポケットから取り出し、奈穂に電話を掛ける。
何度かのコールの後に、奈穂は電話に出た。
「あ、お前どこに居るんだよ? こっちは終わったぞ?」
『あ、えっと……ちょっと他の買い思い出して……悪いけど先に帰ってて…なるべく別々に!』
「ん? そうなのか? てかなんで別々なんだ?」
『気にしなくて良いから、じゃあ私は買いするから! 良い! 絶対に別々に帰るのよ!』
「あ、おい! ……切れちまった」
通話の終了したスマホを見ながら、誠実は呟く。
隣で見ていた恵理は、不思議そうな顔で誠実を見つめながら、首をかしげて尋ねる。
「奈穂ちゃんなんて?」
「いや、買いを思い出したから、買ってから帰るらしいです。それとなぜか別々に帰れと
……」
話しを聞いた恵理は、ニヤリと口元を歪ませて、奈穂の考えを察した。
(奈穂ちゃんの事だから、私と誠実君をいつまでも二人っきりにしたくないのね……)
恵理はなるほどと、自の予想に納得する。
そうと決まれば、一刻も早く誠実から離れようと考える恵理だったが、それではつまらないと考えを改める。
「うーん、私はそれでも良いけど、まだあの男が近くで私たちを見張ってたら、すぐに分かれるのまずいんじゃない?」
「確かに……言われてみればそうですね」
「じゃ、そう言う訳で、し私たちも買いしていこうか」
「え……あ、ちょっと!」
恵理はそう言って、誠実の手を引き、買いを始める。
(半分くらいは本當の事だし……別に良いわよね? 奈穂ちゃん)
誠実と恵理は、ショッピングモールをブラブラと歩きながら、目にとまった店にって商品を見るのを繰り返していた。
「あ、ごめんね、ちょっと失禮」
「え? どこ行くんですか?」
「もう、レディーに対してデリカシーが無いぞ! お手洗いだよ」
「あ、はいっす…」
軽く恵理に怒られてしまった誠実。
とりあえず、スマホを弄りながら恵理を待つことにした。
「しかし、急にどうしたんだ? 奈穂の奴……」
誠実は奈穂に、自分も買いをして帰るから、時間が合えば合流しようという容のメッセージを送る。
「これでいいか……ん、健からメッセージ?」
奈穂にメッセージを送り終えた後、健からメッセージが屆き、誠実はそれを確認する。
健のメッセージにはこう書かれていた。
『今回のアルバムの特典が神、一人一個までしか予約出來ないから、協力求む』
「あぁ……いつものあれか」
メッセージを確認し、誠実はため息を吐く。
健は、好きなアイドルのグッズ販売などで、購に個數制限がある場合、誠実と健に頼み、購を手伝ってもらっていた。
今回もその頼みで、誠実はいつものことかと「了解」とメッセージを返そうとする。
すると、急に目の前が真っ暗になった。
「だ~れだ?」
「なにしてんすか、恵理さん?」
「正解! ご褒にお姉さんにご飯をごちそする権利をあげよ~」
「いりませんよ。全然ご褒じゃないじゃないですか……」
呆れた様子で恵理にそう言い、誠実はスマホをポケットにしまう。
「あそこの雑貨屋さん行ってみない? 面白そうなが々あったよ!」
「またですか……まぁ、いいですけど」
「なんだよぉ~、お姉さんが聞き分けのない子供みたいだとでも言いたいのかい?」
「そんな長した人を子供とは言いませんよ……」
「きゃっ! 誠実君が私のを見ながらそんな事を言うなんて……エッチ!」
「の事だなんて誰も言ってないでしょうが!」
こんな調子で話しをしながら、誠実と恵理は雑貨屋にって行く。
「誠実君は……これだね!」
「なんで貓耳なんすか……」
恵理は誠実の頭に、貓耳カチューシャを付けて満足そうに言う。
誠実は貓耳を付けたまま、満足そうな恵理を見て、肩を落とす。
「これはどっちかって言うと、恵理さんの方が似合うんじゃないですか?」
「え? あ、こら!」
誠実はそう言うと、恵理の頭に自分が付けていたのと同じ貓耳のカチューシャを恵理に付ける。
「うーむ……普通に可くてイラッとしますね」
「それは褒めてるの?」
最後の一言が気になる恵理だったが、それでもストレートに可いと言われた事が嬉しく、わずかに頬を赤く染める。
「お客様、良くお似合いですよ~」
「げ! 貴方は……」
誠実と恵理が貓耳で遊んでいると、店員さんが近づいてきた。
しかも、その店員さんに誠実は見覚えどころか、苦い思い出まであった。
「あら~あらあら、お客様よくお會い致しますね~」
「俺は會いたくないですよ……てか、あんたアパレル店員じゃないのかよ……なんで雑貨屋に……」
「ここは私の姉の店なんですよ、だからたまに手伝いに來てるんです」
「は~い、姉で~す」
「増えた……」
誠実は知った顔の店員の登場に、嫌な予しかしなかった。
しかも、店員の姉まで登場し、誠実は絶していた。
誠実が、肩を落として深いため息を吐いていると、不思議そうに恵理は誠実と店員さんを見ていた。
「それにしても……お兄さんも罪な人ですねぇ~一何人彼がいるんですか?」
「え、舞(まい)じゃあ、このお客様が前に言っていた?」
「(あい)姉さんそうよ、毎回可い子ばっかり連れてくる、謎のパッとしない普通の男の子」
「えぇ! 本? 確かにパッとしないけど……」
「どうでも良いけど、あんたら失禮だな…」
さんざん々言われ、誠実は店員二人に怒りを覚える。
「あ、つい……すいません、これも何かの縁ですから、これ私の名刺です」
「あ、じゃあ、私も」
誠実は店員の姉と妹の二人から名刺をもらう。
どうやら、姉の方が(あい)、妹の方が舞(まい)というらしい。
「あの……どうでも良いんですけど……なんで名刺のがピンクなんですか?」
「え? 可いじゃないですか? それと、そのはショッキングピンクです」
「どっちも同じですよ……キャバ嬢の名刺かと思いましたよ……」
誠実は名刺をポケットにしまい、放置していた恵理の方を向く。
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