《99回告白したけどダメでした》154話
   誠実達が電車に乗って、十數分が経過していた。
鈴が持ってきたトランプで、誠実が座っているボックス席の四人はトランプを楽しみ。
沙耶香と沙が座っている方のボックス席でも、なにやらゲームをしていた。
「………」
「健く~ん、早く取ってよ~」
「黙れ、集中できん」
誠実と綺凜は早々に上がり、殘ったのは関係が謎に包まれている、健と鈴だった。
今は健がカードを鈴から引く番で、健は殘り二枚となった鈴のカードを真剣に選んでいた。
「こっちだ」
「フフ~外れ~」
「クソ! さっさとダイヤのエースをよこせ……」
どうやら健はババを引いてしまったらしい、健は後ろにカードを隠し、カードを混ぜ再び鈴の前に出す。
そんな二人の姿を見ながら、誠実はスマホで駅に著いてからの道のりを確かめていた。
「誠実君、何してるの?」
「あぁ、あっち著いてから迷わないように、地図アプリで道のりを調べてたんだ」
隣の綺凜が誠実に話し掛けてくる。
夏休み前の関係からは考えられない景だが、駿の一件やバイトで會話をする事が多くなり、今ではすっかり良いお友達になりつつあった。
「駅からどれくらいあるの?」
「バスで十分くらいかな? 道を調べるほどでもないんだけど、一応ね」
「そっか、それにしても終わらないわね……」
「ん……確かにな、健も目がガチだからな……」
いつまで経っても向かいの二人のババ抜きが終わらず、誠実と綺凜は暇だった。
「こっちだ……っち」
「ウフフ~可いなぁ」
「うるさい黙れ」
すっかり二人のガチンコバトルになっており、當分終わりそうも無い。
誠実と綺凜は、溜息を吐き隣のボックス席の沙耶香達を覗く。
隣は子三人と言う事もあって、子トークで盛り上がっている。
そんな中で、一人だけの男子の武司は窓に寄りかかって寢ていた。
「誠実君って、友達多いよね」
「え? そんな事ないよ?」
急に話題を振ってきたのは綺凜だった。
「山瀬さんの方が、多いでしょ?」
「そんな事無いよ……こうして友達と遠出なんてしたこと無いし…」
寂しそうに話す綺凜を見て、誠実はこれ以上この話しはしない方が良いなと、話題を変えようと、話題を探す。
「そ、そう言えばこの前武司が……」
誠実は綺凜を笑わせようと、自分から話題を振り話しを続ける。
誠実の話しに綺凜は笑顔を浮かべる。
そして、誠実は気がつく。
その笑顔も、あのときの駿に見せていた笑顔には及ばない事を……。
*
「あ、そろそろ到著だね」
「そうね、そろそろ下りる準備しないと……鈴ちゃん起こしてもらえる? 古沢君」
時間が経ち、あと二駅ほどで目的の駅に著くというところまできていた。
結局、トランプは健が負け、罰ゲームで鈴に膝枕をしていた。
健は今までに無いような屈辱そうな表で、鈴の頭を膝の上に乗せている。
鈴は膝の上で寢息を立てて寢ている。
「くっ……屈辱だ……」
「う~ん……ムニャムニャ……」
「起きろ、このちんちくりん、さっさとどけ」
健が鈴を起こしていると、志保も隣で寢ている武司を起こし始める。
「起きなさい、武田! もう著くわよ」
「ん……う~ん……」
「え……!?」
武司は肩を揺さぶられ、寢ぼけて志保の方に寄りかかる。
「な…な…何してんのよ! この変態!!」
「ぐぇ! な、なんだ……急に頬に激しい痛みが!」
志保は寄りかかって來た武司を、顔を赤く染めながら毆る。
毆られた武司は、窓の方に押し戻され目を覚ます。
頬を押さえながら、何が起こったのかわからず戸っていた。
丁度そんな時、目的の駅に到著した。
「あ、著いたな、じゃあ行くか」
「いい加減起きろ! このちんちくりん!」
「う~ん……おんぶ~」
「ガキか!」
結局鈴は起きる事が無く、健が鈴を背中におぶって行くことになった。
*
駅を下りてから十數分。
「著いたな……」
「あぁ……太がまぶしいぜ~」
「……帰りたい」
誠実達は目的の海に到著した。
男陣は著替えを済ませ、荷を預けて一足早く砂浜にやってきていた。
「おい誠実、健がいきなりクライマックスだぞ?」
「無理もない、島崎をずっとおぶって來たからな……」
「クソ……なんで俺が……」
健は不満そうにそうつぶやきながら、海の家で借りたパラソルを地面に立てる。
武司はビニールシートを敷く。
「しかし……絶景だな」
「誠実、それは海か? それとも……」
武司と誠実は、砂浜で水と戯れるを見ながら同時にぶ。
「「絶景だな!!」」
「アホ」
そんな二人を見ながら、健は呟き、飲みを買いに行ってしまった。
誠実と武司は、目をキラキラさせながら砂浜を見ていた。
「おい! 見ろ誠実! あのスタイルの良いお姉さん!!」
「おぉ! すげーな! モデルみたいだ!!」
興しながら、誠実と武司が砂浜を見ていると、武司が健が居なくなっている事に気がつく。
「あれ? 誠実、健は?」
「ん、あれ? 居ないな……一どこに………って! 武司あれを見ろ!」
「あ、あれは!!」
誠実達が健を探して周辺を見ていると、し先の自販機の前で、見知らぬ二人に聲をかけらていた。
いわゆる逆ナンと言うやつだ。
武司と誠実は、そんな健を見て急にテンションが下がる。
「神様って殘酷だ……」
「なんであんなドルオタが…」
「って、ちょっとまて誠実! お前だって健と同じようなもんだろ! なにしょげてんだよ!」
「は? お前何言ってんだよ、俺は逆ナンなんてされた事……」
「最近、二回も告白されたモテ男が、俺と同じだと思ったら大間違いだボケ! 俺みたいな真のモテない男だけが、あぁ言うイケメンクソ野郎を恨む権利を持ってんだよ!!」
「お前……それ自分で言ってて悲しくない?」
誠実と武司が騒いでいると、健が飲みを買って帰ってきた。
「マジで帰りたくなってきた……」
戻って來た健に武司は凄い勢いで迫って行く。
「おいコラ、このクソイケメン!」
「いきなり失禮だな……どうした?」
「子と一緒に來てんだぞ! 逆ナンなんてされてんじゃねー!」
武司の言葉を聞きながら、誠実は自分たちがさっきまでやっていた行為を思い出し、が痛くなった。
「武司、その言葉お前にのしつけて返すよ」
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