《99回告白したけどダメでした》158話

「おい、こらそこの馬鹿二人」

「あら、こっちを見ましたわよ」

「わー恐い、いきましょ」

「いつまで続くんだよ、その茶番!」

武司は、後ろでコソコソ話しをする二人に向かって聲を上げる。

「冗談はこれくらいして……さっさと謝って來いよ。お前が悪いんだろ?」

「そうだ、武司が悪い」

しは俺の話も聞けよ!」

不満をらす武司に対し、健と誠実は大人しく話しを聞くことにした。

「んで、俺は見てないんだが、大話しは聞いた。お前が悪いと思ったが?」

「まぁ、確かにそうなんだが………」

「じゃあ、さっさと謝れよ、その方が楽だ」

砂浜に腰を下ろし、誠実達三人は話しをしていた。

健は話しに飽きたのか、一人で砂の城を作り始め、武司は眉間にシワを寄せながら話しをしていた。

「謝ったんだよ! だけど、頬を毆られるわ、許してもらえないわ、泣かれるわ! なんか調子狂うんだよ!!」

「なるほどな……良し、謝ってこい!」

「それだけか! もっと良いアドバイスとかねーのかよ!」

「こういうときは、必死に謝るのが一番なんだよ、古賀だってただ意地になってるだけだと思うしよ」

「まぁ、そうかも……しれないが」

武司は考えながらも、誠実の意見に納得していた。

時間が経ち、落ち著いた事もあったのだろう、先ほどよりも分かりが良い。

「はぁ……気まずいけど行くか……悪いの俺だし」

「こう言うのは、謝っちまうのが一番楽なんだよ。なぁ、健」

そう言って誠実が健の方を見ると、健は砂の城を完させるところだった。

そして、最後の仕上げをして健は靜かに言う。

「出來た」

「「出來たじゃねーよ!!」」

健は全く話しを聞いていなかったようだった。

そんな健の目の前には、立派な砂の城が出來ていた。

   そんな健を無理やり連れて、誠実達三人は志保の元に謝罪に向かった。

「………なによ」

あからさまに不機嫌な志保に、武司は気が重くなる。

志保の橫では、沙耶香が志保をなだめていた。

誠実と健は、遠目でその様子を見守っていた。

「いや……さっきはその……悪かったって言うか……すいません」

歯切れは悪かったが、武司は確かに謝った。

その様子を見た志保は、目を見開いて驚いた。

きっと素直に謝られるなんて、想像していなかったのだろう、若干戸いながら志保は武司に言う。

「……わ、わたしも……ちょっと………やり過ぎたわよ」

(あれでちょっとかよ……)

なんてことを思いつつも、高志は許してもらえた事に安堵し、溜息を吐く。

二人の間に、気恥ずかしい空気がながれ、次の言葉が出てこない。

   そんな中で、最初に口を開いたのは、志保だった。

「な、なに黙ってるのよ………」

「べ、別に……黙ってる訳じゃねーよ……お前があんまり分かりが良いから、びっくりしただけだ!」

「な、なによそれ! それじゃあ私が分かりの悪い、面倒な見たいじゃないの!」

「実際そうだろ~、謝ってすぐに許さないんだからよ!」

「なんですって!!」

「んだよ!!」

再び言い爭う志保と武司に、誠実と沙耶香は溜息を吐き、健は鼻を鳴らして戻っていった。 誠実と沙耶香も「もう勝手にしてくれ」と言った様子で、二人の元から離れる。

「誠実君、ちょっと良い?」

「どうした沙?」

武司と志保の一件の後、誠実はビニールシートに座りながらラムネを飲んでいた。

そんな誠実の元に、沙がなにやらニコニコしてやってきた。

「ちょっと、お晝食べに行かない?」

「ん、もうそんな時間か……じゃあ、他の奴らも一緒に…」

「よし! じゃあ行こう! 二人で!!」

「え? おいちょっと!?」

沙は誠実の手を引き、意気揚々と海の家に向かう。

誠実は沙に連れられ、先ほど沙耶香と來た海の家にる。

先ほどよりも忙しそうではなく、席も空いており、誠実達は並ぶ事無く席に座ることが出來た。

「何食うよ?」

「うーん……ラーメンかな?」

「海に來てラーメンかよ……」

味しいじゃん、海の家のラーメン」

「それは、泳ぎ疲れて食べるからだろ?」

「じゃあ、海の家らしい食べってなによ?」

「焼きそば?」

「似たようなでしょ……」

海らしい食べとはなんだろう?

そんな事を考えながら、誠実と沙はメニュー表を見ていた。

「いや、別に無理して海らしいを食べなくても……」

「折角だし、いつもは食べないものを食べたいじゃない……でも、なんか近所の定食屋さんとあんまりメニュー変わらないわね……」

「腹減ったし、なんでも良いだろ?」

「うーん……じゃあ、私は……醤油ラーメン!」

「結局か! ……じゃあ俺も焼きそばにするよ。腹減ったし」

誠実と沙は結局最初に食べようとしていたメニューに決め、店員を呼んで注文する。

來たのは、沙耶香と一緒に來た時とは違う店員で、エプロン姿のだった。

いつも行く飲食店と違い、Tシャツにエプロンというラフな姿の店員が新鮮で、誠実はなんとなくその店員に見ってしまった。

「それでは、々お待ち下さい」

人でしたねー」

「何不機嫌になってんだよ?」

「べっつにー」

不機嫌に頬を膨らませながら、沙は誠実に不満そうに言う。

「しかし、大変そうだな、海の家のバイトってのも……」

先ほども思っていた誠実だったが、店の中にって、じっくり見ていると、更にその忙しさがわかった。

誠実は、自然と自分のバイト先と忙しさを比べてしまう。

「そう言えば、綺凜とバイトしてるんでしょ? どんなじ?」

「どんなじって言われてもな、バイトなんて初めてだし、まだわからねーよ」

「大変とか、忙しいとか無いの?」

「まぁ、晝時は大変だけど、その他はあんまりお客さん來ないしな…そこまでじゃねーよ」

誠実が始めた、喫茶店のバイトは、そこまで大変では無かった。

店として認知され、前よりは遙かに忙しくなったらしいが、それでもお晝以外は暇だった。

「ま、社會勉強にはなるよ」

「ふーん…私もバイトしようかな?」

「どこでだよ?」

「コンビニ?」

誠実は沙がコンビニで働く姿を想像する。

元気は良いし、案外良いんじゃ無いか?

などと誠実は思った。

「いいんじゃ無いか?」

「そう? うーん……考えておこうかな」

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