《99回告白したけどダメでした》160話
「沙……それは明日にしよう」
誠実は沙の方を向かづに答える。
そんな誠実の言葉に、沙は短く答えた。
「……わかったわ」
誠実と沙は、その後無言で皆のところに戻った。
なんとなく気まずくなり、その後誠実は沙とはあまり話しをしなかった。
やがて、日も暮れだし、そろそろ旅館に向かはなければならない時間となり、誠実達は準備をしていた。
「にしても、あそんだなぁ-」
「武司、隨分焼けたな……」
「あぁ、真っ黒だ、そう言う誠実はそこまでじゃないな…」
「まぁな、健は……當たり前だが、全く焼けてないな」
「あぁ、なるべく日に居たからな…」
「海に來てんのに、何をしてたんだよ……」
男子三人で、海の家から借りたパラソルを片付けながら、お互いのを見て、そんな話しをしていた。
真っ赤な夕焼けが、海を照らし、真っ青だった海を真っ赤に染める。
そんな景を見ていると、誠実はし離れた場所で、同じく海を眺める綺凜を見つけた。
「何してるの?」
「あ、伊敷君。ちょっとね……」
綺凜の隣に行き、誠実は尋ねる。
夕日に照らされた綺凜の橫顔に、誠実はドキドキしながら、何か話さなければと考え込む。
「きょ、今日はどうだった?」
「楽しかったわ、こんなに楽しいのは、初めてかも……」
「そっか、良かった……」
綺凜の表を見て、誠実は安心する。
綺凜も綺凜で楽しんでいた様子で、連れてきて良かったと誠実はホッとする。
「お母さんがね……海が好きだったの…」
「そっか……」
「子供の頃は、お母さんとお父さんと、夏になると必ず海に來てたの……でも、最近はお父さんも忙しくて、さっぱり行かなくなっちゃって……」
「じゃあ、海も久しぶり?」
「うん。本當に來て良かった……」
綺凜は笑顔でそう言い、それ以上は何も言わなかった。
そんな綺凜を見た誠実は、海を見ながら綺凜に言う。
「また、これるよ……きっと……」
そんな誠実の顔を見て、綺凜はどこか安心したようにうなずく。
「そろそろ行こう、皆まってる」
「うん、そうだね」
そう言って、綺凜は皆が居るところに戻っていった。
一方の誠実は、綺凜の後を見送り、遠目から友人達を見つめて呟く。
「……來年は……これるのかな?」
そう呟く誠実の目はどこか寂しそうで、どこか悲しそうだった。
「おーい! 誠実!! さっさと行くぞ!」
「あぁ! 今行く!」
武司に急かされ、誠実はその場からき出す。
*
「あぁ~疲れた~」
「早く風呂に行こう」
「ちょっと待て、スマホ充電してからにしようぜ」
誠実達は旅館にチャックインを済ませ、それぞれの部屋に居た。
誠実達男子三人は、部屋に著くなり倒れ込み、遊び疲れたを休ませていた。
「ここの溫泉混浴とかじゃないの~」
「武司、そんな溫泉を俺が選ぶと思うか? それに子が半數を超えてるんだぞ、そんな溫泉は卻下される」
「まぁ、予想はしてたけど……じゃあ行くか!」
「行こう、俺も疲れた」
「健、お前は何もしてないだろ?」
三人はガバッと起き上がり、著替えの浴を持って溫泉に向かう。
平日と言うこともあり、客はないが、それでもちらほら客がいた。
「ねぇねぇ、知ってる? この溫泉って、お見合い風呂っていうのがあるんだって~」
「何それ? 混浴って事?」
「混浴は混浴でも、男一人づつしかれないんだって、しかも混浴って言っても、男子と子で浴槽が分かれてて、その間が大きなガラス張りになってるだけなんだって!」
「じゃあ、でお話出來るだけ?」
「だからお見合いなんじゃ無い、アンタなに考えてんのよ~」
「良い男がいたら、食べようとおもって」
「え! アンタりに行く気?」
誠実達とは反対方向から歩いてくる子大生らしき二人組が、そんな話しをしながら誠実たちの橫を橫切る。
「俺ちょっと忘れ……」
「待て、武司。お前行く気か?」
振り返って、部屋に戻ろうとする武司を健が止める。
「止めておけ、そんな事が子連中に知られたら、明日帰るまで気まずくなるぞ?」
「それでも興味はあんだろ! 俺は行きたい! いや、行かなければ男じゃ無い!」
「おい誠実、お前も何か……」
「へ?」
「お前もか……」
    誠実も武司同様、部屋に戻ろうとしていた。
さっきまで自分で言っていた事を思い出してみろ、そう誠実に言ってやりたい健だった、呆れて何も言う気になれない。
「武司! 俺が先だ!!」
「お前には前橋と笹原がいるだろ! ここはモテない俺に譲れ!」
「先に行くからな…」
健はそう言って、二人を置いて先に風呂に向かう。
「全く、何を考えてるんだか……」
呆れた様子で、健はのれんをくぐり風呂に向かう。
しかし、そこで違和に気がつく。
著替えをれるスペースが一つしか無い。
それに風呂も異様に狹い気がする。
「お客さん、今空いてるから、おすすめだよ」
丁度掃除をしていた従業員の男にそう言われ、健はついでに尋ねる。
「すみません、この風呂は一人用なんですか?」
「えぇ、そうですよ。景も良いですし、お勧めですよ~」
「あ、そうですか、なら……」
大勢でるのも良いが、一人でゆっくり浸かるのも悪くない。
健はそう思い、服をいで浴槽に向かった。
「ほう……良い眺めだ」
風呂は天風呂で、目の前に海が見えた。
浴槽は一人用にしては大きめで、十分足がばせた。
「大分湯気が多いな……しかし、良いきもちだぁ~」
健は、浴槽にり外の景に見る。
間違えて一人用の風呂に來てしまったが、これはこれで正解かも知れないと満足し、健は風呂を楽しむ。
すると、健は再び違和に気がついた。
浴槽は何故か、ある一部分だけがガラス張りになっていて、壁に張り付いているような形になっていた。
しかも、そのガラスの向こうにも浴槽が見えた。
そこで健は、ようやく理解した。
「ま、まさか……この風呂は……」
お見合い風呂。
壁には大きくそう書かれ、注意事項が書いてあった。
健はしまったと思い、浴槽から上がろうとしたが、遅かった。
「あれ? 誰か居るの~?」
隣から聲が聞こえて來た。
しかも、聞き慣れたの聲に、健は激しく揺した。
その聲の主とは……。
「あ~健君! なに~の子のが見たくてこのお風呂に來たの~」
そこに居たのは、ニヤニヤと笑みを浮かべる、鈴の姿だった。
健はそんな鈴の姿に、顔を真っ青にして思った。
(最悪だ……)
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