《99回告白したけどダメでした》179話
*
「恵理さん、タマネギどんだけ剝いてるんですか……」
「だって、中が出てこないんだもん!」
「……はぁ……本當に貴方って大學生なんですか?」
「大學生だよ! そんな殘念な人を見る目で見ないでよ!」
「だって、今時そんな事もわからない人は居ないと思いますよ……」
「あ、またそう言う目をする! もう、折角上手く出來たら、お姉さんがご褒にほっぺにチューしてあげようと思ったのに……」
「うわー、激しく要らないご褒だ」
「ねぇ誠実君、そろそろお姉さん本気で怒って良いよね? ね?」
「包丁を構えながら言わないで下さい、謝りますので」
誠実と恵理の夕飯作りは、恵理のおかげで難航していた。
恵理は料理がからっきしダメで、包丁の持ち方さえもたどたどしい。
誠実は、恵理が最低限の料理を作れるようにと、基本的な包丁の持ち方などを教えながら、料理を作っていた。
「カレーってこうやって作るのね……」
「知らなかったんですか?」
「うん」
「何となく知ってるものだと思いました……」
「だからその目はやめてよ! 居るからね! 絶対私みたいの子いっぱい居るから!」
「はいはい、じゃあアクを取ってみましょうか」
「アクって何? 正義と関係ある?」
「……そういうボケはいいので……」
誠実は溜息を吐きながら、恵理に料理の基礎を教える。
メニューはカレーだ。
小學生でも作れるし、工程もシンプル、以上の點から誠実は恵理にカレーの作り方を教える。
教えられている、恵理はこんな軽口を叩いているが、実際は頭の中は混していた。
(あぁ~!! 何よ! 何なのよ! 誠実君の隣に居るだけで、こんなにドキドキするなんて!! 違う! これは違う!! これはそういうアレじゃ無い!!)
誠実と並んで料理を始めてから、恵理はずっとこんな調子だった。
表面では、誠実に軽口で話しをしているが、それは誠実に対してドキドキしている事がバレないようにするためのカモフラージュだ。
(なんで、包丁握る時に後ろから抱きつく格好で教えるのよ! 誠実君のアホ! そりゃあその方が教えやすいのはわかるけど……)
恵理は顔を赤く染めながら、料理を教わる。
しかし、恵理は全く集中できず、さっきから失敗ばかりだった。
「先輩、それじゃあアク以外にもどんどん水分が減っていきます」
「だ、だってっちゃうんだもん!」
「良いですか、こんなじでアクを取って、アク以外の水を逃がすんです」
「な、なるほど……ね」
(あぁー! もう馬鹿! なにさりげに手を握ってるのよ!!)
「恵理さん?」
「にゃ、にゃによん!?」
「? あの、顔赤いですけど、暑いですか?」
「あ、暑くなんてな、無いわよ? さぁ、アクを取ったら次は?」
恵理はなんとか平靜を裝いつつ、料理に集中しようとする。
そんなこんなでカレー作りは進んで行き、ようやくカレーが完した。
「ま、こんなじでカレーは出來上がるんです」
「はい、先生ありがとうございました」
「で、肝心のお米は?」
「炊けてません!」
「………」
米はあるのに、炊飯の使い方がわからないと言う理由で、放置されていた炊飯を引っ張り出してきた恵理だったが、何かの弾みでコンセントが抜けたようで、今はご飯が炊けるのを待っている。
時間はもうすぐ夜の二十時になろうとしていた。
ご飯が炊けるのを待つ間、恵理と誠実は座って話しテレビを見ながら、ご飯が炊けるのを待っていた。
見ているテレビ番組は「彼氏が彼に求めること」という趣旨の元、リポーターが街でインタビューをするというバラエティー番組だ。
『え? 彼に求める事っすか? う~ん……やさしさ?』
今は二十代前半の男が、インタビューに応えていた。
「ちなみに誠実君は?」
テレビを見ている誠実に、恵理が突然質問してくる。
「俺、彼居ないんで」
「じゃあ、彼が居たとしたら?」
「そうですね……やっぱり優しさですかね?」
「おぉ、じゃあ優しいお姉さんに誠実君はメロメロな訳だね?」
「あり得ないっすね」
「もう~照れちゃって~、可いなぁ~」
「いや、照れとかじゃないんで」
「なんだとぉ~、可く無いなぁ~うりうり~」
「ちょっと、やめて下さい。脇をつんつんしないで下さい」
恵理は誠実の隣に座り、誠実の脇を人差し指でつついて攻撃する。
誠実はくすぐったくて、を恵理の居る逆側に反らせる。
「はぁ……俺とこんな事してると、いつまで経っても彼氏なんか出來ませんよ?」
「じゃあ、もう誠実君が私の彼氏って事で」
「え?」
恵理はそれを言って激しく後悔した。
自分は何を言っているのだろうか?
一歩間違えば、この発言は告白と捕らえられかねない。
恵理はそんな事を考えながら、誠実の様子をうかがう。
「何を言ってるんですか……冗談はやめてくださいよ」
平然と當たり前のような顔でいう誠実。
恵理はそんな誠実に、なぜだか腹が立った。
(え? 何? 私は異としても見られてないの? しくらい反応しても良いんじゃ無い? 顔を赤面させるとかさぁ!)
こうなったら、もうしからかってやろう。
そう考えた恵理は、誠実にぴったりとくっつく。
「恵理さん?」
「そんなにお姉さん……魅力無い?」
先ほどとは違った雰囲気と、聲で恵理は誠実に上目遣いで尋ねる。
しかし、誠実は……。
「あ、あの暑いんで離れてもらっていいですか?」
「え?」
(薄い! 反応が薄い!! なんで?! これでも私、一応モデルだよ! なんで顔赤くしないの! なんで可い反応出來ないの!)
恵理の誠実に対する不満はエスカレートしていった。
続いて恵理は、誠実の太ももをなで始める。
すると誠実は冷靜に、落ち著いて恵理に言う。
「あの、くすぐったいんでやめてもらって良いですか?」
(だからなんでドキッとしないのよ!!)
全くじない誠実に、恵理はどんどん不満を募らせる。
としてのプライド、そして年上としての意地が恵理を更に積極的にさせた。
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