《99回告白したけどダメでした》182話
「え? なんでここでバイトしてるかって?」
「はい」
「どうしてそんな事を?」
「えっと、なんとなく気になって……ですかね」
綺凜は掃除から戻ってきた木崎に、なんでここでバイトしているかを尋ねてみた。
「まぁ、當時は仕事をやめたばっかりで、早く次の仕事先を見つけたかったからってじね……」
「そうなんですか。でも、最初はここにお客さんとして來てたんですよね?」
「そうだけど……なんで知ってるの? あ! 店長でしょ! もう、かってに人の話しを……」
綺凜は店長から聞いた話を踏まえて、木崎さんに尋ねる。
「まぁ、この店に來たのは偶々よ……」
「そうなんですか?」
「まぁ、あの日は……々あってね……」
「?」
そうこうしているうちに、お客さんが來てしまい、この話は中斷された。
綺凜はどんどん気になり始めていた、木崎がなぜここでバイトをすることにしたのかが……。
「お疲れ様です」
「はい、お疲れ~」
その日のバイトの時間が終了し、綺凜と木崎は著替えを済ませてお店のテーブルに座って休んでいた。
「あぁ~今日も疲れたわね……」
「そうですね、毎回こうやって終わった後に店にり浸ってもいいんでしょうか……」
「良いのよ、どうせこの後お客さんなんてそんなに來ないし」
綺凜と木崎は、店の一つのテーブル席に座って談笑するのが、最近では日課になっていた。
の子に、あまり遅くまで働かせるのは良くないと、店長が言い、二人を早めにあげているのだが、その二時間後には店が閉まるので、二時間くらい誠実と店長だけでも大丈夫なのだ。
「そう言えば、なんでここで働く事にしたのか、聞いてきたわよね?」
「あ、はい。何か特別な理由でもあるんですか?」
「う~ん……まぁ……ちょっとね……」
*
私は就職した會社が合わなく悩んでいた。
仕事に行けば、上司に謝ってばかりの毎日。
社會人二年目になり、私は心が病んでいた。
理不盡に怒られ、その度に怒號をあげられ、ストレスが溜まる一方だった。
「はぁ……今日が終わった……でも明日も仕事……」
仕事が終わっても、寢て目を覚ませばまた仕事。
今日は早く帰れるが、明日はどうかわからない。
休日出勤は當たり前、殘業だってない日が珍しいくらいだ。
「明日……休んじゃおうかな……」
私はそんな事を考えながら、自宅へと足を進める。
社會が厳しい事はわかっているつもりだった。
だけど、正直わからなかった。
これが世に言う社會の厳しさなのか。
ミスをする度に怒鳴り散らす上司。
セクハラをしてくる部長。
強制參加の飲み會。
すべてが嫌だった。
私はそう考えた瞬間、明日は休んでリフレッシュしようと心に決めた。
このままでは、自分はいつかどうにかなってしまう。
そう考え、これからの自分について考えようと思った。
「はぁ……休みの連絡に二十分もかかるなんて……」
休みの連絡も大変だった。
なんで休むの?
風邪でも大した事無かったら來て!
君が休むと、その分誰かが苦しむんだよ?
なんて言う説教をされた。
簡単に休みも取れない……正直辛い。
「外にでも行こう……」
私は財布とスマホだけを持って家を出た。
散歩をしながら、これからの事を考えようと思った。
考え事をしながら歩くと、人は長い距離を自然と歩けてしまう。
私はいつの間にか、二駅離れた街の商店街に來ていた。
「あ、結構歩いたんだ……」
折角だから、どこかお店にろう。
私はそう思って、喫茶店やファミレスを探す。
しかし、なかなか見つからない。
諦めかけたその瞬間、民家に紛れて分かりにくいが、真新しい喫茶店を見つけた。
正直民家と區別がつかず、ドアの脇に掛けてある「OPEN」の札が無かったら気がつかなかっただろう。
「いらっしゃいませ」
私は中にり、カウンター席に座った。
店には、三十代前半位の店員さんが一人だけ立っていた。
他にお客さんはおらず、靜かで、店にはクラシック音楽が流れていた。
私は近くのメニュー表を見て、メニューを選び始める。
飲みの種類が多く、値段もそこまで高く無かったので、私はとりあえずコーヒーを注文する事にした。
「じゃあ、コーヒーで」
「はい、かしこまりました」
店員さんはニコッと笑みを浮かべると、私の目の前でコーヒーを作り始めた。
本格的な道を使い、コーヒー豆もどことなく良さそうなのを使っていた。
私は普段インスタントコーヒーしか飲まないので、良くわからないが、かなり手間を掛けてコーヒーを淹れていた。
「お待たせいたしました」
「どうも……」
出て來たコーヒーは、見た目は普通のコーヒーだった。
しかし、インスタントよりもなんだかちゃんとしたコーヒーの匂いがする。
そんな気がした。
「あ、おいしい」
一口飲んで私がそう思った。
今まで飲んでいたコーヒーがただ苦いだけの黒いお茶だとしたら、この店のコーヒーは本だ!
私はそう思い、もう一口、もう一口とコーヒーを飲む。
そんな私の姿に、店員さんも嬉しそうだった。
「おいしいですか?」
「はい! とっても! こんなに味しいのに……なんで……」
なんでお客さんが居ないのだろう?
そう言いかけたが、失禮にあたると思い、私は口を閉じた。
店員さんは、らかい笑みを浮かべながら私の飲みっぷりを嬉しそうに見ていた。
そして丁度飲み終わった時、店員さんが笑顔で尋ねてきた。
「もう一杯いかがですか?」
「はい! いただきます!」
私はもうおかわりを注文した。
店員さんはニコニコしながら、私の空になったコップを取り、別な綺麗なコップにコーヒーを淹れる。
「どうぞ……それと、こちらも味しいので、お試し下さい」
そういって、店員さんはおかわりのコーヒーと一緒に、小皿に生クリームを乗せて私に差し出した。
「あの、これは?」
「コーヒーにれる生クリームです。コーヒーに生クリームをれると、ウインナーコーヒーという、また違ったコーヒーになるので、よろしければ」
「へ~そうなんですか……ありがとうございます」
「いえいえ」
私は早速ウインナーコーヒーとやらを試す。
苦みが緩和され、クリーミーな味わいのコーヒーがを伝っていく。
これも味しかった。
「この飲み方も味しいですね」
「それは良かった、失禮ですが、隨分お疲れのご様子でしたので、糖分をと……」
「あぁ……やっぱりそんな顔をしてますか?」
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