《99回告白したけどダメでした》183話
「まだまだお若いのに、何かありましたか? 他人だからこそ、言える事もあるかも知れません。それに、お店には、私と貴方の二人だけですから」
「じ、実は……」
私は店員さんに、會社での愚癡を話し始めていた。
話している間、店員さんは「うんうん」と相づちを打って私の話を聞いてくれた。
地元から離れて就職したため、私には仕事の愚癡を話せる人が近くに居なかった。
だからなのか、私は思いっきり會社の愚癡を店員さんに話していた。
「……ってなじです」
「そうなんですか……隨分苦労をなされているんですね」
「はい……でも、苦労して見つけた就職先なので、辭めるに辭められず……」
「そうですよね……就活って大変ですし」
「辭めた後の事を考えると、どうしても不安で……」
「でも、本當に嫌なら辭めても良いんじゃないでしょうか?」
「え?」
「このまま無理に仕事を続けていても、いつか誰かに迷を掛ける事になってしまうと私は思います。今日知り合ったばかりの私が言うのもなんですが、多分貴方はきっと無理をしすぎています。もっと自分を大切にして下さい。辛かったら、逃げても良いと私は思います」
なんでだろうか、そこまで良いことを言われている訳でも無いのに、この人の言葉に、私は気持ちが軽くなるのをじた。
逃げても良い……逃げるのは行けない事としか思っていなかった私にとって、その言葉は衝撃だった。
「でも……社會って辛いものですし……ここで逃げても、他でもやっていけるかどうか……」
「貴方は何故、今の會社に就職したんですか?」
「そ、それは……定が取れた中で、一番好條件だったからで……」
「その職に就きたかったのでは?」
「いえ、正直仕事の容は全く興味が……でも、仕事だから興味とかの話しでは無く、やらなければと……」
「興味を持てと言われて、興味を持つことは難しい事です」
「そ、そうですけど……」
店員さんはコップを拭きながらそう言って來る。
「貴方は何故働くのですか?」
「そ、それは……生活の為で……」
私はその質問の答えが自分でもわからなくなって來ていた。
なんで働くんだっけ?
生活の為? 家賃の為?
生きる為に働いている?
それなら、アルバイトでもしていればお金はなんとかなる。
なんで私は、あんな嫌な職場に毎日通って仕事をしているんだっけ?
別に夢もない、人もいない。
私は私が生きるために働いている。
じゃあ、生きていても良いことが無かったら?
生きてる意味はないんじゃ無いか?
じゃあ……死んでも良いんじゃ……。
そんな危ない事を考えていた矢先、店員さんがニコっと笑って話してきた。
「私はずっと、自分のお店を持つ事が夢でした……」
「え、はい……」
「頑張って働いて、資金を貯め、一週間前にこの店をオープンしたのですが……客足はご覧の通りです……」
「えっと……は、はい……」
この人は夢は葉ったけど、その後が上手くいっていない様子だ。
お店にもう數十分は居るのに、お客さんがってくる気配が微塵も無い。
この調子だと、経営は上手くいっていないのであろう、店員さんの表からもそんな様子が覗えた。
「店を持ちたい一心で、仕事をしたので、前の仕事は長く続きました。しかし、店を持った後はなかなか上手くいきません……売り上げもびず、苦しい毎日です……」
「は、はぁ……」
「でも、お客さんが來てくれると、楽しいんです」
先ほどまでの表が噓のように、店員さんの表は晴れていた。
「ようやく葉った夢…やりたかった事が出來て、私は今楽しいんです。そりゃあ辛い事もあります。でも……仕事の中に楽しみがあると、人は案外頑張れるものです」
そう言った店員さんの表は、無邪気な子供のような笑顔だった。
「辛いだけの毎日を繰り返すのは、にも神にもストレスを與えてしまいます。もちろん、仕事は辛くて當たり前ですが、好きなことややりたい事の為なら、人は頑張れます。貴方も仕事の中にそんな生きがいみたいなを見つけてみてはいかがでしょうか? それでもダメなら、立ち止まってまた違う道を考えれば良いんです。貴方はまだ若いのですから」
「……」
私は今日、ここに來て良かったと思った。
もうし頑張ってみよう、そう思えた。
難しく考える必要なんて無い、自分が何の為に仕事をしているかもう一度考えてみよう。
それでもダメなら、転職を考えよう。
私は肩を軽くして、家に帰って行った。
*
「ま、そんなじかな?」
「店長って、そんな事言えるんですね……」
「まぁ、確かに基本頼り無いけど……たまに格好いいのよね……」
木崎の話しを聞き、綺凜と木崎はカウンターでコーヒーをれる店長の姿を見る。
「あぁ! 洗剤買い忘れた…」
「店長しっかりして下さいよ……俺この前それ言ったっすよ?」
「アハハ、面目ない」
カウンターにはいつもの頼りない店長がいた。
綺凜はそんな店長が、木崎の話しに出てきた店長とは思えず、本當にそんな事があったのか再度木崎さんに尋ねようとして、木崎の方を向く。
しかし、木崎の橫顔を見た綺凜は言葉を発するのをやめた。
その理由は、綺凜が見た木崎の橫顔が、まるでする乙のような表だったからだ。
(えっと……まさか木崎さんって……)
綺凜は木崎を見ながらそんな事を考える。
(しかし、悩みを聞いてくれただけで、木崎さんが店長にそんな事を思うだろうか?)
綺凜の頭の中はますます混していった。
「えっと木崎さん……その後はどうなったんですか?」
綺凜はどうしても、木崎のその表のが気になり、話しの続きを木崎に尋ねる。
「どうって言われても、それから私が仕事を辭めて、ここで働きだしたってだけだけど?」
「で、でも店長言ってましたよ! よく商店街で會ったって」
「そ、それは偶々買いで……」
「じゃあ、なんで木崎さんはわざわざ二駅も離れたところの商店街に來ていたんですか? 木崎さんの家の近くにも、スーパーとかお店ありますよね?」
「えっと……そ、それは……」
「なんでですか?」
「う……う~」
綺凜に迫られる木崎。
これはもうダメだとじたのだろう、木崎は「はぁ~」っと深く息を吐くと、顔を赤くしながら話し始めた。
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