《99回告白したけどダメでした》202話

誠実が花火大會の事を栞から聞いている頃、綺凜はバイトをしていた。

「え? 花火大會の観覧席のチケットを貰ったって?」

「はい、どうしましょう……やっぱりこういうの良くないんでしょうか?」

真面目な綺凜は、常連客から気にられている。

そんな常連の中でも、毎日やってくる近所のおばあちゃんに綺凜は花火大會のチケットを貰ったのだ。

「大丈夫だよ、きっとおばあちゃんが渡したくて渡したんだろうし」

「は、はぁ……」

チケットは一枚で二人分だった。

「でも……別に花火大會に行く予定も……」

「誠実君と行ってきたらどうだい?」

「え?」

何も知らないマスターが、さらりとそう言い放つ。

しかし、それは綺凜にとっては結構勇気のいる行だった。

振った相手を花火大會にうなんて、そんなデリカシーの無いことは出來ない。

「えっと……そ、それは……」

「アハハ、そうだよね。學校の友達とかに勘違いされたくないよね」

「そ、そうですね……」

苦笑いをしながら綺凜はマスターに答える。

バイトが終わった後も綺凜はチケットをどうしようか考えていた。

「はぁ……やっぱり誰かにあげようかしら」

しかし、真面目な綺凜はおばあちゃんから好意を無下にする事になるのではと考えてしまう。

「やっぱり悪いわよね……」

綺凜は息を吐き、スマホを取って連絡先のアプリを開き、沙に電話を掛ける。

「もしもし」

『もしもし? どうしたの綺凜?』

「今度二人で花火大會にでも行かない? 観覧席のチケット貰ってさ」

『いいね! 行こうか! もしかしたら會場で誠実君にも會えるかもしれないし』

「じゃあ………」

綺凜は日時と集合場所を伝え、電話を切った。

こういうときは同士で行くのが一番だろうと綺凜は沙をったのだ。

この前の海でも々あったようなので、沙の気分転換にもなるかと思ったのだ。

「誠実君も行くのかな?」

沙の先ほどの言葉を聞き、綺凜はそんな事を考える。

會場で出會ったら沙が騒ぎそうだな、なんて事を考えながら、綺凜はスマホを充電に刺して機の上に置く。

「おにぃさ」

「ん? なんだ奈穂」

栞からの電話の後、誠実はリビングで奈穂に話し掛けられていた。

「おにぃは花火大會行くの?」

「ん? 行くけどそれがどうかしたか?」

「ふーん……そうなんだ……ちなみに誰と?」

「お前には関係無いだろ」

「誰と?」

「イダダダ!!! 足を踏むな!」

誠実は寢っころがっていたところを立っていた奈穂に踏まれる。

何か気にることでも言っただろうかと思いつつ、誠実は栞と行くことを奈穂に話す。

「お、お前も知ってるだろ! 蓬清先輩と一緒に行くんだよ!」

「ふーん……」

「ぎゃあぁぁぁ!! 痛い! 痛いって!!」

栞と行くことを告げると、奈は更に強い力で誠実の足を踏む。

誠実はなんで奈穂の機嫌が悪いのか全くわからず、のたうち回っていた。

「それって、デート?」

「違う! 違います!! そういったものではけして無いと思います!!」

「ふーん……」

冷たい目をしながら奈穂は誠実にの足から自分の足をどける。

「あぁ……痛かった……」

「二人で行くんだ……やらし」

「アホか! ただ一緒に花火行くだけだっての!」

奈穂はソファーに座り、麥茶を飲みながら誠実に冷たい視線を送る。

「私も友達と行くから」

「え? あぁ、そうか」

「……男の子と……行くかも」

「あっそ」

「フン!」

「イダ! 何すんだよ!!」

「別に! もう知らない!!」

奈穂はテレビのリモコンを誠実に投げつけ、気分を悪くして部屋に戻っていった。

誠実はなぜ奈穂が怒っているかわからず、頭を抑えていた。

「何なんだよ……」

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