《99回告白したけどダメでした》203話

花火大會の當日、栞は自室で浴を選んでいた。

「はぁ~、どうしましょう。これでしょうか? それとも……」

大きなウォークインクローゼットの中で、栞は悩んでいた。

一番自分に似合う浴はなんなのか、改めて考えてみると難しい。

こんなに著ていく服で悩んだのは初めてだった。

「はぁ……ダメですね……自分では決められません」

一人で悩んでいると、部屋のドアがノックされた。

「はい?」

「失禮いたします。お嬢様、まだお決まりにならないんですか?」

ってきたのは、栞の家で働くメイドの一人だった。

約束の時間が迫ってきているため、栞の事を呼びに來たメイドだったが、栞の準備は全く出來ていない。

「えぇ……その……今日は大切な日ですから……」

「お嬢様もお年頃ですからねぇ~」

「な、なんですか! もぉ!」

ニヤニヤしながら栞にそういうメイド。

栞はそんなメイドに顔を真っ赤にして答える。

「お嬢様の気にったお方なら、見てくれだけで印象を変えるような人とは思えないのですが?」

「好意を持っている方には、一番綺麗な自分を見せたいんです」

「お嬢様はいつも綺麗ですよ。心配せずともよろしいと思いますが……」

そう言われても栞は気合いをれて行きたいのだ。

ただでさえライバルの多い相手、しかも栞はそこまで誠実と接點があるわけでは無い。

だからこそ、こういうときに一気に距離をめたい。

「はぁ~どうしましょう……」

「でしたら、この黒の浴はいかがですか?」

「黒ですか?」

「はい、黒はを綺麗に見せるんですよ。それにお嬢様のの白さま際だってよろしいかと」

「そう……でしょうか?」

「絶対にそうです。私を信じて下さい」

メイドに自信満々にそう言われ、栞は黒の浴を手に取る。

正直これが一番似合っているのか、自分には良くわからない。

しかし、これ以上悩んでいては約束の時間に遅れてしまう。

「そ、それではこれにします!」

「お嬢様! 頑張って!」

「はい!」

栞は浴を決定し、著替えを始める。

「い、一応……下著も黒にした方が良いでしょうか?」

「お嬢様、まさかそんな予定が!?」

「ち、違います! 一応です! 一応!!」

結局下著も黒にした。

「あぁ~、なんか夕方なのに熱そうだなぁ~」

「あんた今日花火に行くんだっけ?」

「そうだけど、それが何?」

誠実は夕焼けの空をみながら、母親に聞き返す。

リビングにいる誠実と誠実の母の葉は、ソファーに座ってテレビを見ていた。

奈穂も出かけるって行ってたから、私もお父さんとビアガーデンにでも行ってこようと思って」

「飲み過ぎだっての。まぁ、俺は飯はあっちで済ませようと思ってるから良いけど……」

「昔はアンタと奈穂を連れて家族で行ったけど、今じゃみんな皆バラバラだものねぇ~。月日が経つのは早いわ」

「そんなもんだろ?」

「そう言えばアンタ、今日は栞ちゃんとお祭りに行くんでしょ?」

「あれ? 俺、お袋に言ったっけ?」

「そんな事はどうでも良いの。で、どうなの?」

「どうって?」

「栞ちゃんとの関係よ!」

「は?」

誠実は母からの問いに間の抜けた聲で聞き返す。

葉はそんな誠実の目を見て、再び尋ねる。

「付き合ってるの?」

「いや、ただの先輩後輩の関係だから、そんなん無いよ」

「栞ちゃんも大変そうね………」

「はぁ? なんで先輩が大変なんだ?」

「何でも無いわよ……こういうところはお父さんそっくりよね……」

肩を落としてそう言う葉に、誠実は不思議そうに首を傾げる。

「そろそろ栞ちゃんが迎えに來る時間でしょ? 準備は出來たの?」

「出來てるよ、そんな子供じゃないんだから」

そんな事を言っていると、家のチャイムが鳴った。

誠実は栞が來たのであろうと、急いで玄関に向かう。

「はーい」

誠実がドアを開けると、そこには黒い浴を包んだ栞の姿があった。

「先輩、わざわざありがとうございます」

「いえ、おいしたのはこっちですから、もう行けますか?」

「はい、大丈夫です。今日はよろし……」

誠実がよろしくお願いしますと言おうとした瞬間、栞と誠実の間に執事の義雄が割ってってきた。

「久しぶりですね、クソが……誠実君」

「いまクソガキって言いかけましたよね!」

義雄と誠実は仲があまりよろしく無い。

理由は簡単で、義雄が栞を溺しているからだ。

「ふん! 本當だったら、お嬢様から100メートルは離れてしいところじゃがな……」

「離れ過ぎだろ!! 過保護なのも大概にしろよ!」

「何じゃと! お前だってお嬢様に暗闇で何かいかがわしい事をしようと企んでおるのじゃろ! そうはいかんぞ!!」

「アホか! んなこと出來るわけねーだろ!!」

「貴様の目は節か! こんなに可らしいお嬢様と一緒でせんとは!」

「どうすれば良いんだよ! 俺は!!」

いつも通り言い爭う誠実と義雄。

そんな二人を見て、とうとう我慢の限界だったのか、栞は黒い笑みを浮かべて二人に靜かに言う。

「お二人とも……早く行きますよ」

「「は、はい………」」

その圧倒的な威圧に、誠実と義男は思わず息を飲む。

誠実と義男は直ぐさま言い爭いをやめ、お互い靜かになる。

「それでは行きましょうか、誠実君」

「は、はい……」

誠実は言われるがまま車に乗り、義雄は運転席に座る。

    人が読んでいる<99回告白したけどダメでした>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください