《99回告白したけどダメでした》212話
「先輩!!」
その聲を聞いた瞬間、栞は聲のした方向を振り返る。 そこには、嬉しそうに手を振り栞の元にやってくる誠実の姿があった。
「せ、誠実君……」
栞はなんだか、誠実と會うのが怖くなってしまった。 沙からの話しを聞き、もしかしたら振られるのでは無いかという不安が一層強まっていたからだ。
「探しましたよ……って沙……お、お前も居たのか……」
「なんだよぉーその顔わぁー」
誠実は複雑そうな顔で沙を見ていた。
沙と誠実が會うのは、あの海の日以來久しぶりのことだ。
だから誠実はなんだか沙と會うのが気まずかった。
「い、いや……別に……げ、元気だったか?」
「誰かさんのせいで、あんまり元気じゃないかも」
「うっ……す、すまん……」
「冗談だって! 気にしてなくもないけど、誠実君は何も悪くないよ」
誠実が沙と話しをしている間、栞は不安と期待でがいっぱいになっていた。
もしかしたら私を選んでくれるのではないか、そう思いながら栞は我慢出來ず、誠実の袖を摑む。
「せ、誠実君」
「え? あぁ先輩! 探しましたよ! 大丈夫でした?」
「私は大丈夫です……そ、それよりも早く行きましょう……」
「あ、そうですね。先輩の家の人も心配しているでしょうし……じゃあ山瀬さんと沙もまた今度!」
誠実と栞はそう言って、沙と綺凜の前から姿を消した。
沙は顔を膨らましながら、誠実と栞の様子を眺めていた。
「沙……大丈夫?」
「え? 何が?」
「だって……」
「あぁ、振られたこと? 本當に気にしてないよぉ~、それに私は決めたから」
「何を?」
「絶対に誠実君を振り向かせるって……誰の影響だろうね、諦め悪くなっちゃった」
笑顔でそういう沙を見た綺凜はなんだか安心していた。
「そっか……頑張ってね」
「うん! 綺凜には負けないからね!」
「え? なんで私?」
「だって、誠実君の好きな人って綺凜でしょ? まぁ、それ以外にも結構ライバルいるけど……」
「あ、あぁ……そ、そっか……そうだ……もんね……」
最近普通に接する事が多くなり、綺凜はすっかりその事を忘れていた。
あれ以來、誠実から告白されることも無くなり、すっかり諦めたのだと思っていた綺凜だったが、誠実本人は自分の事を今はどんな風に思っているのだろう?
そんな事を考えながら、綺凜は誠実が歩いて行った方向を見る。
*
誠実と栞は花火大會の會場を歩いていた。
會場に殘っている人もなくなり、盛り上がっていた會場は靜かになりつつあった。
「いやぁ~、先輩が見つかって良かったっすよぉ~」
誠実は栞の告白など忘れてしまったかのように、いつも通り栞と話しをする。
しかし、栞は告白の返事を今か今かと待っており、それどころではない。
「そ、そうですね……」
栞にとっては、人生始めての告白。
栞は早くその返事がしくてしくて仕方なかった。
「あ、あの……誠実君」
「なんですか?」
「そ、そろそろ……返事を聞かせてしいのですが……」
「え? あ……」
誠実は栞からのその一言で、告白の事だと気がついた。
出來れば今で無い方がありがたい誠実。
しかし、栞は今返事をんでいる。
「先輩……あの……俺は……」
「………」
誠実の表はなんだか複雑だった。
拳を握り、栞の顔を見ようとしない。
そんな誠実の態度から、栞は何となく、直でわかってしまった。
自分は振られるのだということが……。
「誠実君は………まだ山瀬さんが好きなんですか?」
「そ、それは……」
誠実が話す前に栞は誠実に尋ねる。
栞は真剣な表で真っ直ぐに誠実を見つめていた。
誠実はそんな栞の顔を見られず、相変わらず顔を反らして答える。
「正直に言うと……そうです……だから、先輩の気持ちには答えられません……」
「そう……ですか……」
気まずい沈黙が二人間に流れる。
花火大會が終わり、既に時間は22時近い事もあり周囲に人は居ない。
誠実は栞の顔が怖くて見られなかった。
「誠実君……」
「な、なんですか?」
「あなたは私が嫌いですか?」
「え? な、なんでですか!? 嫌いな人と花火なんて見に來ませんよ!」
「……でも、好きではないんですね……」
「そ、それは……その……としては……殘念ながら……で、でも! 俺、先輩の事は友人として好きですよ! いい人だし! 尊敬もしてます!」
「……友人として……ですか……じゃあ、その尊敬している先輩から、こんな事をされたら……貴方はどうしますか?」
「せ、先輩!?」
栞は誠実を壁際まで追いやり、を著させる。
誠実は突然の栞の行に驚き、顔を赤らめる。
「山瀬さんは……誠実君にこんなことしてくれますか?」
「せ、先輩! わ、悪ふざけはやめて下さい」
「ふざけてませんよ? 私なら誠実君がむことすべてしてあげられますよ?」
栞は誠実のに抱きつき、そのまま誠実のに顔を埋める。
「せ、先輩! やめましょうよ! こんなこと!」
「でも、誠実君も男の子ですよね? の子のに興味があるのではないですか?」
栞は悪い笑みを浮かべながら誠実にそういう。
誠実は自分の頬が熱くなるのをじた。
栞のはらかく、良い匂いがした。
そんなの子のに、誠実の心臓はどんどん早くなっていった。
このままでは、誠実は理を保っていられなくなりそうだった。
だから誠実は……。
「先輩!」
「キャッ!!」
誠実は栞のを自分から無理矢理引き剝がし、顔を真っ赤にさせながら栞に言う。
「こ、こういうのはダメです! こういうのは……人とやることです!!」
誠実は顔を真っ赤にさせ、息を荒くさせながら栞にそう言った。
そんな誠実の顔を見て、栞は噴き出す。
「ぷっ……フフフ……」
「せ、先輩?」
「じょ、冗談ですよ……そ、それを本気にして……フフフ……誠実君って以外と純なんですね」
「じょ、冗談……せ、先輩!」
からかわれた事に腹を立て、誠実は栞に文句を言おうとする。
「振られたんですから、これくらいは許していただきたいですね」
「うっ……そ、それは……そうですけど……」
そう言われると、何も言えなくなってしまう誠実。
栞は誠実から離れると、笑顔で誠実の方を見て話しだす。
「でも、良かったです。誠実君がそういう人で……」
「ど、どう言う意味ですか?」
「そのままの意味です……流されず、自分の意思を強く持っている人と言うのは、立派だと思います」
「は、はぁ?」
いまいち何を言われているのか理解が出來ない誠実。
「誠実君」
「は、はい?」
「私はやっぱり貴方が好きです」
「え! あぁ……いや……だから……その……」
「困するのは分かります。でも、私が貴方を好きと言う事実は変わることはありません。だから……貴方を私は振り向かせることにしました」
「は、はい!?」
なんだか最近こう言うじの出來事が多いとじる誠実。
栞は誠実の手を取り、笑顔で言う。
「ですから誠実君」
「は、はい……」
「早く私を好きになって下さい」
「え……えぇ……」
満面の笑みでそういう栞に、誠実は複雑そうな表で空を見上げる。
沙に沙耶香、それに栞が同じ事を言い始め、誠実は戸う。
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