《99回告白したけどダメでした》216話

「こんなところで奇遇ですね」

「そ、そうですね……」

誠実は自然と栞から目を反らしてしまう。 理由は簡単で何を話して良いか分からないのだ。

この前の花火大會で、誠実は栞に告白され、その告白を斷った。

しかし、栞は諦めないとそう言った。

好意を持ってくれている相手と話すのは中々に張してしまう誠実であった。

「お、俺はちょっと妹を探してて……すいません先を急ぎますんで!」

「あ、待って下さい」

「すいません先輩! 事は一刻を爭うので!!」

「それなら尚更です、私も協力いたします」

「え?」

栞の言葉に誠実は足を止めて栞の方を見た。

「義雄さん」

「はい、お嬢様」

「直ぐに奈穂さんを探していただけますか?」

「はい、かしこまりました………っち」

探すのを手伝ってくれるのはありがたいと思う誠実。しかし、なんでこの執事さんは毎回舌打ちしてくるんだろうと心でそう誠実は思っていた。

「先輩ありがとうございます……」

「困った時はお互い様です、それに……未來の妹の為ですから」

「え……」

栞はそう言って誠実にウインクをしてきた。 そんな栞の可らしい仕草にドキッとしながら、誠実は栞に尋ねる。

「あ、あの……俺は貴方を振ったのに……なんでこんなに……普通に接してくれるんですか?」

「誠実君……私は言ったはずですよ、貴方を諦める気は無いと……」

「で、でも……俺は」

「誠実君、早く奈穂ちゃんを探しましょう、理由は分かりませんが、一刻を爭うんでしょ?」

栞はそう言って強引に會話を終了させた。 恐らく栞はあまり気にしないでしいと言う意味で言ったのかもしれない。

しかし、振った相手にこんなに親切にしてもらうのは、なんだか気が引けると思う誠実。

「見つけたら連絡致します」

「お願いします」

そう言って栞は車に乗って言ってしまった。 これで捜索の範囲は広がった、恐らく奈穂が見つかるのも時間の問題だろう……。

そう考える誠実だったが、誠実の中の不安はまったく消えない。

奈穂……」

誠実はふと奈穂の事を考える。

中學三年生の奈穂にとって、あの事実は衝撃だっただろう。

誠実も初めて親父からそう聞いた時は驚いた。

驚きはしたが、奈穂が本當の妹では無いと教えられた時、誠実はなんとなくそんな気がしてしまっていた。

昔から奈穂は可いと評判だったし、本當に自分とが繋がっているのかと疑う事が誠実は多かった。

だからだろうか、昔から奈穂を妹としてよりもの子として見てしまうことが誠実は度々あった。

『おにぃちゃ~ん』

昔から、奈穂はそう言って誠実の後を付いてきていた。

あの頃は可かったなぁ……。

なんて事を思いながら、誠実はあの泣きそうな表奈穂を思い出す。

「……なんて言えば良いんだろうな」

見つけたとして、自分は奈穂になんと言ってやれば良いのだろうか?

奈穂が真実を知ってしまった限り、今まで通りとはいかないのかもしれない。

大事な妹に兄はこんな時、なんて言ってやれば良いのだろうか、誰か教えてしい。

そう思う誠実であった。

誠実が栞と會っているころ、奈穂は一人公園のベンチに座っていた。

仕事から帰って聞いてしまった衝撃の事実に驚き、思わず家を飛び出してしまった奈穂。

「……はぁ……」

口からはため息しか出なかった。

今まで家族だと思っていた人たちが、まさか他人だったなんてと思ったら、奈穂は急に孤獨じるようになっていた。

「私って……一誰なんだろう……」

そんな事を考えながら、奈穂はふと公園の外の歩道に視線を移す。

そこには恐らく姉妹であろうと思われる、小さい男の子との子が居た。

「おにいちゃんまって~」

の子はお兄ちゃんの後ろを追って走っていた。

お兄ちゃんはそんな妹の様子を確認しながら、どこかに急いでいた。

そんな風景を見て、奈穂も昔を思い出していた。

「……お兄ちゃん……か」

誠実が本當の兄では無い事を知り、奈穂は複雑な心境だった。

本當は喜ぶべきなのかもしれない。

これで奈穂は合法的に誠実と結ばれる事が出來る。

しかし、本當の兄妹では無い事を知り、今までの誠実との関係が噓だったような気がして、奈穂は分からなくなっていた。

兄としての誠実が奈穂にとっては対処だったのか、それとも男としての誠実が奈穂にとっての対象だったのか……。

心の整理のついていない奈穂にとって、今は分からなかった。

「……おにぃ……」

ベンチでうずくまりながら、奈穂は目に涙を浮かべていた。

何も考えられなくなり、奈穂はただその場で一人泣いていた。

「なぁ……」

「何? 奈穂見つかったの!?」

「いや……もっと早くに言うべきだったのかと思ってな……」

誠実の父、忠志は妻である葉に尋ねる。

奈穂を探して外に出てきた二人。

今は商店街を探して歩き回っていた。

「今はそんな事より奈穂でしょ!」

「……あぁ……そうだよな」

忠志は悩んでいた。

もっと早くにこの事実を伝えるべきではなかったのかと……。

そうすればこんな事にはならなかったのでは無いかと……。

「お父さん! 次はあっち行くわよ!」

「あぁ……」

「いつまでしょんぼりしてるのよ!」

「ぐえっ!! か、葉さん……蹴るのはやめて……」

「考えるのは後にしなさい!! 今は奈穂よ!! あの子は……あの子は私達に大事な娘で……あの二人が命がけで殘していった命でしょ!!」

葉にそう言われ、忠志は気がついた。

葉の言うとおりだ、考えるのなんて後でいくらでも出來る。

今は大事な娘を見つけなくては行けない。

今の奈穂の神狀態は不安定で、何をするか分からない。

忠志は再び立ち上がり、必死になって奈穂を探す。

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