《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》34.夕凪 花火
「より〜。ストレッチ付き合って〜」
「あ、花ちゃん。いいよー」
チーム練習が終わり、シューティングをする者、筋力トレーニングをする者、フットワークや幹トレーニングをする者。それぞれ自分に足りない部分を補うために自主練習に勵んでいる。
今、聲を掛けてきたのは三年の夕凪花火。通稱、花ちゃん。まあ、そう呼んでいるのは私だけなんだけど。
一つ上の先輩ではあるが、元々同じ中學でバスケをしていた事や、それ以前から知り合いで子供の頃よく遊んでもらっていた事もあって、部活の先輩というよりは近所の仲の良いお姉さんってじだ。私がバスケを始めたばかりの時はよく教えてもらっていた。
ほぼ同じ長、同じポジションな事もあって、私のプレースタイルは花ちゃんから多大な影響をけている……訳では実はない。
バスケを始めたばかりの時は花ちゃんに憧れてプレーも真似をしてばかりいた。いや、憧れているというのは今でも変わりないんだけど、ある時點で気付いてしまったんだ。
ある時點っていうのは、今から何年前の何月何日とかそういうのでは無いんだ。ある程度バスケットが上達してきた頃としか言いようが無い。
つまり何が言いたいかというと、私は花ちゃんのプレーを手本にするのを自分の意思でやめたんじゃ無い。勿論、花ちゃんにやめろと言われた訳でもない。
自ら、この人の真似は自分の能力ではできないと悟ったんだ。悟って真似をするのを諦めた。ここでいう能力ってのは能力のことでは無くて、なんていうのかな、センスというあまり的では無い言葉に頼るしか無いんだけど、とにかく花ちゃんのきは獨特過ぎる。
型にはまらないというか、良い意味でセオリーを無視しているというか……バスケ以外でも結構不思議なところがあって、つかみ所のない格をしている。
他の後輩から見たら、何を考えているかよく分からないのでちょっと怖いらしい。その格がそのままバスケのプレーに出ているというじなんだよね。
どのスポーツもそうなんだけど、このの向きならこういうプレーをしてくるだろうとか、その勢からはこっちには來ないだろうとか、経験からくる読みってのが重要になってくると思うんだけど、花ちゃんの場合はそれを見事なまでに裏切る。
しかも考えてやっている訳ではなく、直でをかしているから、対戦相手からすれば余計に質が悪い。初見であの人のきを読み切ることは、ほぼ不可能だ。長年一緒にプレーしている私でさえも意表を突かれる事はなくないからね。
「ねえ、前から思ってたんだけど、花ちゃんのきって凄い獨特だよね」
「え〜、そう?  私は行きたい方へ行くだけだよ〜」
「それが出來ないからみんな苦労してると思うんだけど……それにしても相変わらずらかいね」
「ま〜ね〜。唯一自慢できるところだよ〜。みてみて〜」
そう言いながら両足を180度に開いて更には上を前に倒して床におでこをつけてみせる。新選手並みののらかさが、あの突飛なきを実現している重要なファクターなのかも知れない。
「花ちゃんってよくフリーの練習時間にストレッチしてるよね。これだけらかかったらそんなにやる必要ないんじゃない?」
「よりは分かってない〜。ここまでやればオッケーとか、これ以上やる必要は無いとか、そ〜ゆ〜のってバスケには無いんだよ〜?  それに……」
「それに?」
「うち、練習の中でストレッチが一番好きなん〜。てかストレッチ以外あんまりやりたくない。うち、走るの嫌いなん……」
「そ、そうなんだ」
なんでこの人はバスケをやっているんだろう、とたまに不思議に思うけど、それでもやっぱり得點への嗅覚はピカイチなんだよね。
この人からスターティングメンバーを奪うことが高校にってからの一番の目標だったんだけど、このままでは葉いそうにない。
「ところで、よりはさぁ〜、ナンバープレーとかって得意〜?」
ナンバープレーって言うのは、予め決められたきをチーム全員でして、フリーの選手を作ったりすることだ。ちょっと違うかもだけど、野球でいうサインプレーと似てるのかな?
「んー、得意とまでは言わないけど別に苦手じゃないよ。フォワードはフィニッシャーになることも多いし、チャンスをみんなで作ってくれるのはありがたいと思ってるよ」
「そうなんだ〜。いいな〜」
「え、花ちゃんナンバープレー苦手なの?」
「うち、苦手〜。だって決められたきするより、好きなようにいた方が楽しくない〜?」
「それはそうだけど、どうしても點が取れない時とか流れを変えたい時のために、いくつか攻撃パターンを作っておくのは大切な事だよ」
「それは分かってるよ〜。あくまで點が自分で取れそうだな〜って時の話だよ〜。相変わらずよりって頭が固いよね〜」
にやにやしながら私の頭を指でつついてくる。私が固いんじゃなくて花ちゃんの頭がらかすぎる気がするんだけど。
ナンバープレーの指示が出た時に、花ちゃんはたまに決まったきをしてない時があるんだけど、大抵自分で點を決めてしまう。
最初はいくら點を決めたとしても、決まったきをしない事に対して監督やコーチに怒られてたらしいんだけど、いくら言っても聞かないから二人とも諦めたらしい。
あの鬼コー……い、いや、鈴コーチに怒られても我が道を行くとか、この人どんなメンタルしてるんだろ。
でも、私が一番すごいと思うのは、そんな自由奔放な花ちゃんの思考ときを読んで的確なパスを出す桜先輩なんだけどね。自分でも得點できるし、パスで味方を活かすこともできる。相手にとっては厄介極まり無い。
そう考えるとやっぱり三年生と二年生の実力の差はまだまだ大きい。もっともっと頑張って、1日でも早く差を埋めたい。
「花ちゃんは……進路はどうするの?」
「ん〜?  まだ考えてないよ〜」
「バスケは続けるの?」
「さ〜、どうかな?  まだ、考えてないよ〜」
「あはは。花ちゃん何も考えてないんだね」
「それがうちの良いところだと考えている!」
「確かに。花ちゃんにはずっとそのままでいてしいな」
「よりの頼みなら斷れないな〜。あ! でももしかしたら、うちくらいの選手になると、どっかの大學からスカウト來るかも〜。にひひ〜」
茶化して言っているけど、それは十分あり得る話だ。私たちの県で花ちゃんはかなりの有名人だ。獨特なプレイスタイルもそうだが、花ちゃんの得點力は県トップクラスだし、しがる大學はいくつもあるはずだ。
「大學かー。花ちゃんにはバスケ続けてしいからなー。でも県外に行っちゃったら寂しいな……」
「今日のよりは要求が多いな〜。甘えんぼさんだ〜」
そう。花ちゃんの言う通りだ。私は今、急激に寂しさをじている。時期的にセンチメンタルになるには些か早いんだけど、[三年生最後の大會]が始まるという事実を前に、そう遠くない未來に控えている先輩達の引退をどうしても意識せずにはいられない。
今まで當たり前の様に毎日一緒に汗を流していた先輩達が、たったの一敗で翌日から居なくなってしまうんだから。
「より。大丈夫。怖くない怖くない。私がついてるよ〜」
そう言いながら花ちゃんに突然頭をでられた。その瞬間、の奧にしまい込んでいた恐怖、不安、寂しさが涙となって一気に溢れ出した。
「ご……ごめん花ちゃん……泣くつもりなんて、全然無かったの……に。」
「うん、うん。大丈夫。泣きたい時はなけばいいさ〜」
ボロボロと涙を流す私の頭を花ちゃんは優しくで続けてくれた。
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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