《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》42.ゴール下を制するものはゲームを制するって誰かが言っていた

いつまで直狀態が続くのかと思っていたけど、試合は意外に早く、的に言えば第2クオーターの中盤できだした。

フォワードの夕凪さんがドライブからレイアップに行った時に相手のセンターがカバーにきてファールをしてしまった。その直後相手チームの監督がタイムアウトを審判に要求する。

タイムアウトっ言うのは試合の途中で時計を止めて監督やコーチが選手に指示を出したりするんだけど、その時に選手の代も出來るんだ。

「あちゃー……やっちゃったね。あのセンターファール3つめでしょ?」

「うん、そうだね。この時間帯で3つは代せざるを得ないね」

バスケットの試合ではファールが個人で累積五回になるとファールアウト、つまりは退場になってその試合にはもう出ることが出來なくなる。相手チームのセンターは試合の前半だと言うのにすでにファールを3つおかしている。

今後、更にファールを重ねて退場になる恐れがあるから今は一旦ベンチに下がる他ない。

ピーっと笛が鳴り、両チームの選手にコートへ戻るように審判が促す。タイムアウトはたったの1分しか時間が貰えないから、その短い時間でいかに的確な指示が出せるか…それは指導者の腕次第ってじだ。

「正直相手チームはきついよね?  控えのセンターがどれくらいのレベルが分からないけど……」

「うん。確かこのチームの控えセンターは一年生だったと思う。プレーを見たことはないからどれくらい上手いかは分からないけど、ちょっと厳しいね」

「弓月、あんたほんとに詳しいよね。バスケ好きなんだねえ」

「まーね。バスケするのも好きだけど、観るのも好きだから!」

バスケのチームにおいてセンターというポジションは、オフェンスの柱であり、ディフェンスの要でもある重要なポジションだ。

オフェンスではゴールに近い場所でプレーするから、フリーになる事が出來たら當然シュートの功率は高くなるし、ゴール下では接プレーが多くなるから相手からファールされる機會も増える。シュート中のファールであればフリースローが貰えるので得點のチャンスは倍増する。

更にインサイドでの攻撃で相手の意識が中に集中すれば、すかさず外で待つシューターやフォワードにパスを返してフリーでシュートを打たす事も可能だ。

外→中→外のインサイドアウトプレーはもはやバスケの基本ですらある。

ディフェンスで言えば味方が相手にドリブルで突破された場合、カバーに出たセンターが最後の砦になる。センターが居なければ軽々とレイアップを決められてしまうけど、背の高いセンターが待ち構えていれば、シュートブロックを恐れて相手は直接ゴールに向かうことは難しくなる。

今、挙げただけでもどれだけ影響が大きいか分かるけど、それらを差し置いて一番重要と言えるのはやっぱりリバウンドだろう。

プロバスケットプレーヤーでも試合中にシュートが100パーセントの確率でるなんてことはあり得ない。

NBAプレーヤーですら試合中のシュート功率はよくて50〜60パーセントくらいらしい。しかもそれはフィールドゴール……つまりツーポイントシュートの話で、スリーポイントシュートに至っては40パーセントの功率で絶賛されるレベルと聞いた事がある。

バスケットをやってない人からしたら、[え?  50パー?  それくらいなら私にも出來るんじゃね?]ってじるかもしれないけど、試合中はフリーでシュートを打てることの方がない。相手ディフェンスとをぶつけ合いながらボールを貰い、シュートブロックをかいくぐりながらシュートを打つ事もなくない。

そんな中で半分以上の確率でシュートを決めれる人がいたら、コートの中でプレーしている人間のとしては、[むっちゃシュートるこの人ヤバイ、まじヤバイ]だ。

まあ、何が言いたいかというと、シュートは結構な確率で落ちるもんなんだから、リバウンドをしっかりやらないと勝てませんよって話だ。

「それにしてもやっぱり夕凪さんは半端じゃないね。狙ってやってるんだから、本當に化けだよ」

「狙ってやってる?  どういう意味??」

「気付かなかった?  あのセンターからファールをもらったのって、3回とも夕凪さんだよ」

「え?  そうだったっけ?」

「うん。1回目はなんとも思わなかったけど、2回目のファールの時、そのままシュートにいけたのにワンテンポ遅らせてわざとファールをもらいにいってた様に見えたんだ。気のせいかと思ったけど、3回目で確信したよ。明らかにコース変えてセンターに突っ込んでいったもん!」

「あー、確かに……あれ、オフェンスファールになるかと思ったよ」

「結構際どいタイミングだったけど、ディフェンスが半分コースにれてなかったから、あれはディフェンスファールだったね」

「ってことは、夕凪さんは相手の控えセンターが弱い事を分かってて、レギュラーのセンターをベンチに引っ込める為に狙ってファールをもらいにいったってこと……?」

「そういう事!  ファールもらった後で夕凪さん笑ってたから絶対に確信犯」

「はあ。レベルが違いすぎて訳わかんないや」

相手のセンターがベンチに下がった事で戦力差は更に広がる。ここで一気に畳み掛けるのかと思ったけど、高橋さんは相変わらずディレイオフェンスに付き合っていた。

強者の余裕……とまでは言わないけど、ここで焦って攻め急ぐような判斷はしない。

レギュラーのセンターがいてもいなくても私たちのやる事は変わらない。そんなプレッシャーが相手チームをより追い詰める。

試合のペースは相変わらずゆっくりだけど、結局相手チームは逆転の手がかりを摑めないまま、ズルズルと點差は開き、3クオーターが終わる頃には45-20とダブルスコア以上の點差が開いていた。その、夕凪さんが取った點數は30點だった。

こうやって他の人の試合を観たり、テレビで試合を観たりしていると、自然と目が追ってしまうプレーヤーに出會う事がままある。

スター選手の素質というか、人を惹きつけるプレーというか。次はどんな點の取り方を見せてくれるのか、と人を期待させる様な獨特の雰囲気。

っていうのはこういう人の事を言うんだろうなと、改めて自分とのレベルの違いを思い知らされた。私も、もっと頑張っていたら、この人の様なプレーが出來たのかな……?

一瞬そんな考えが頭をよぎったけど、意味のない事を考えるのはやめておいた。

    人が読んでいる<みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください