《代わり婚約者は生真面目社長に甘くされる》35 代わりよりもずっと前に
土曜日。悠馬さんは會社に行っている。
働きすぎではないかと心配しているが、これでも休みを取るようになったらしい。それ以前はどうだったのか、考えるとぞっとしなくもない。もっと自分のを大切にしてほしい。
特に來週は抱えている案件が一気に終わる一週間だそうで、今日はその確認だそうだ。
掃除洗濯を済ませる。これで家のことは大終わった。溜まっていたドラマでも見ようかな。
そんなことを思いながら何の気なしに玄関を見る。黒いファイルが置いてあった。
こんなのあったっけ? と思いながら中を見ると、図面だとかなんか大事そうな書類がぎっしりと詰まっている。
……。これって大事なものじゃない!?
いつもより早く出ると言って慌てていたから、忘れてしまったのだろう。
屆けないと!
バタバタと悠馬さんの會社に行っても浮かないような服を選び、化粧もそこそこに家を飛び出した。電話をするも繋がらない。
電車に飛び乗り、教えてもらった會社を検索し地図を呼び出す。駅からし遠い。迷うといけないからタクシーで行こう。
見送りの時に気がつけばよかった……。今となっては遅いけれど気をむ。
待ち侘びた駅名を聞き立ち上がる。初めての駅なので改札がどこか分からず右往左往した後、見かねた人に道を教えてもらった。
外に出るとちょうどタクシーが止まっていたので行く先を告げて乗った。
「お姉さん、遅刻かい?」
「あ、違うんです。えーと、家族が忘れしたから屆けに行こうと……」
家族……と言っていいかは分からないけど。
「その家族の人も幸せもんですねえ。そんなに焦った様子で屆けに來てくれるのはされている証拠だ」
そ、そんなに焦っていただろうか。
恥ずかしくなり俯いているうちに目的地に著く。
「わあ……」
見上げて、思わず聲が出る。
シックな印象のお灑落な會社だ。悠馬さんのお父さんとデザインしたらしい。
ってすぐの窓口のに話しかけようとして、言葉に詰まる。
――なんて言えばいいんだろう。
婚約者ですとは言えない。本條家に知られたら困る。なにより悠馬さん、會社で婚約者がいるって言っているのかな。
だからといって渡すだけ渡して逃げるのは不審者だ。
「あの――?」
もうこの時點で不審者となってきている。
姪あたりの関係でいいだろうか。でも姪が仕事関係のモノを持ってきているって傍から見たら奇妙ではないか。
ええいもう、どうとでもなれ。
「ほ、本條つばきと言います。香月社長に――」
「本條!?」
後ろから大きい聲が響いた。
びっくりして振り返ると男がいる。
「あ、失禮。――本條つばきさんですか?」
「そうです。あの、忘れがあったので」
黒いファイルを見せると目を大きくさせた。
「午後に必要なものです。ありがとうございます、たすかりました」
「あ、いえ。良かったです。それでは」
いそいそと帰ろうとすると、男が待ったをかける。
「香月社長、もうそろそろお話が終わると思うので――しお待ちしていただけませんか?」
〇
通された社長室は、父親や正一郎おじさんとは違う非常にシンプルなところだった。
デスクの上はちょっと散らかっているけれど。最近の書類はデータ化しているから昔みたいに積み重ならないのだと父親に言われたことを思い出した。
「すみません、呼び止めてしまって」
東と名乗った男は書だそうだ。
「あなたに會ったら香月社長のモチベーションがあがるだろうと、こちら側の勝手な考えです。お許しください」
「それは……どうでしょう。あがるでしょうか」
「なくとも、あなたに會って以來、彼はとても生き生きしていますよ」
生き生きしているんだ。
紅茶を出してくれた。そっとシュガーをれる。
「ちゃんと食事もとるようになったし、家でまとまった時間寢ているらしいし、仕事以外のことを口にするようになったし……。本當に謝してもしきれません」
ちょっと涙ぐんでいた。苦労していたのだろう。
というより、どんな人だったんだ。
「……なので、もうしあいつに素直になってもいいと思います」
「素直に…?」
「部外者からのお願いですけどね。頼られた方がうれしかったりするんですよ、男って」
「はぁ……」
素直なほうだし、頼りにしているのだけど。
首を捻っていると東さんは腕時計を見る。
「私もそろそろ行かなければ。十分ほどで社長が來るはずです。しばらくお待ちください」
「あ、お構いなく」
突然の來客に対応してもらっているだけでありがたい。
それがどれだけ大変な事なのかは私もに覚えがあるので。
とはいっても手持ちぶさただ。室をきょろきょろ見回していると、棚に納められたトロフィーが目にった。すごいなあ、こんなに賞しているんだ。
端から順に視線をらせていると、隅の方にテディベアが居た。
「……あれ?」
ずきりと傷痕が痛んだ。
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