《ただいま冷徹上司を調・教・中・!》誰も知らない彼の(6)
正直に言います。
私……めっちゃくちゃ怒ってます。
平嶋課長が私との(仮)人関係を了承した際に、三つの約束をした。
一つ目は、自分達から公言はしないが、人から聞かれたりした際にはハッキリと人関係を認めること。
二つ目は、思ったことは必ず伝え合うこと。
仮とはいえ……いや、仮だからこそ、事細かに報告連絡相談のホウレンソウが大事なのだ。
そして三つ目は、平嶋課長は私を本當の人のように扱うこと。
平嶋課長の偏差値を正確に知るためにも、この顔がありながら毎回フラれる原因を探るためにも。
平嶋課長は私を本當の人に置き換えて接し行すること。
これが私達の決めた大事な約束事だったのに。
木、金と會社ではいつもと全く変わらず、わした言葉は仕事の連絡事項のみだった。
まあ確かに仕事は忙しいし、平嶋課長は大學病院の新館設備などでほとんど社にはいない。
なので、それはそれで仕方のない部分もある。
大目に見よう。
しかし。
今日は月5月1日火曜日。
付き合い始めた男が初めて迎える週末三連休明けだ。
初めてのデートで心が踴っていておかしくない。
なのにっ!
私は金、土、日、月の三日間、ずっっと鳴らない平嶋課長からの連絡を待ち続けていたのだ。
水曜日から今日まで、平嶋課長は一度も私に連絡ひとつよこさなかった。
あの冷徹イケメン野郎は、元カノのビンタでいったいなにを學んだというのだろうか。
「學習能力のないヤツだ……」
朝禮前、デスクで電話をしている平嶋課長を膨れっ面で睨みながら、私は小聲でポツリとそう言った。
木曜日の朝一で平嶋課長と付き合うことになったと、紗月さんと瑠ちゃんには報告した。
本當ならば事細かに仮であることを説明した方がいいのだろうが、そうしてしまうと平嶋課長のいろんな欠點を話さなくてはならない。
なので私は結論のみを報告したのだ。
そりゃ二人の驚きようといったら大変なものだったが、これからの私達を暖かく見守ると言ってくれた。
二人が期待している週末デートの報告。
どうしてくれるんだ。
どんなに平嶋課長を恨めしそうに睨んでも、彼は一向に私の視線になんて気付かない。
しらーっとした顔して朝禮して営業に出ていった。
「週末はどうだったの?」
「デートしたんですか?」
紗月さんと瑠ちゃんと質問に、余裕の笑顔で「今週はお互い都合が付かなくて」とわしたが、心では帰ってきたら説教だな、と思っていた。
そんな私の腹の中を知ってか知らずか、平嶋課長はいつもより早めに社に戻ってきた。
私はさりげなく平嶋課長のデスクに向かう。
「どうした?なにか報告か?」
あくまでも事務的な平嶋課長の態度にイラつく。
「帰るの何時くらいになります?待ってますんで」
別に小聲で話すわけでもなく平嶋課長に問いかけると、課長は予想通り固まった。
その顔も見慣れてきたぞ。
「19時半には……」
「わかりました」
それだけ確認して私は自分のデスクに戻る。
平嶋課長を含め、會話が聞こえた全ての人の視線を一にけるが、私は表ひとつ変えずにパソコンに向かった。
あと1時間半後、平嶋課長はきっと私に頭を下げていることだろう。
平嶋課長は私の機嫌の悪さを察したのか、いつもよりも仕事のスピードを上げて予定よりも早めに終わらせた。
帰る準備を始めたのは見えていたけれど、私は敢えて気付かぬふりをして平嶋課長の行を待っていた。
カバンを持ち、同課の殘っている社員達に「お疲れ様。お先に」と聲をかけると、戸いがちに私のデスクに向かってくる。
さあ、どうする?
わざと視線も合わさずパソコンに向かったまま平嶋課長がどうするのか待つ。
平嶋課長ほ私の後ろに立つと小さな聲で、「給湯室にいる」と囁き足早にその場を去っていった。
この些細な遣り取りでも注目を浴びるなんて、平嶋課長という男がどれだけみんなに慕われているかが嫌でもわかる。
悔しい気持ちになりながら、私はさっさとパソコンの電源を落とし、平嶋課長同様に「お先に失禮します」と挨拶をして給湯室へと向かった。
足音を立てないようにそっと給湯室を覗くと、平嶋課長は溜め息をつきながら冷蔵庫に背を預けて腕を組んでいた。
私の不機嫌な行と言がなぜ自分に向けられているのか、原因を考えているのだろうか。
「お待たせしました」
笑顔も見せず、私は平嶋課長に聲をかけた。
「いや……。どうしたんだ?」
「どうしたもなにも、人同士が一緒に帰るのは自然なことでしょう?」
「そうか……?」
「そうなんです」
平嶋課長にとっては自然でもなんでもないんだろうけど。
だから休みの間、なんの音沙汰もなかったわけだから。
……あ。
自分で言って、また腹が立ってきた。
「帰りますよっ」
溜め息混じりにそう言って給湯室を出ると、平嶋課長は慌てて私の後を著いてきた。
會社を出ても私はムスッとして半歩先を行く。
「どこ行くんだ?」
頃合いを見てそう聞いた平嶋課長をチラリと振り向きぷいっと逸らしてみた。
「おい、久瀬」
私の肩に手を乗せて振り向かせようとした平嶋課長に向かって、「私の家ですっ」と有無を言わせぬ強い視線でそう言った。
徒歩十分の道のりを黙って歩き、電車に乗った。
「久瀬もこの路線だったんだな」
「平嶋課長はいつも朝早くて帰りも私より遅いから會ったことないですもんね。私もこの前、平嶋課長のお家にお邪魔した時に知りました。一駅しか離れてないんですよ」
「へぇ……そうなのか」
特に驚くでもなく興味を持つわけでもなく、車窓を眺めながら呟いた平嶋課長に、私はなんだかまたイラッとした。
確かに仮の人関係は難しいかもしれない。
それでもちゃんと人として接してくれと言ったのに。
何一つ変わらないんだから……。
変わらないなら変えるしかない。
私の家に呼んだのは、その第一歩を踏み出してもらうためだ。
平嶋課長の下車駅を通り過ぎ次で降りる。
歩くこと十五分で私の住む六戸二階建てのコーポに著いた。
「2階です」
そう言って階段を上り始めた私の後ろで、平嶋課長はピタリと歩みを止めてしまった。
「……なにしてんですか」
「いや……一人暮らしの部下の家に上がり込むのはどうなのかと……」
……人として接してくれって言ってるのに。
「どうでもいいから早く來てください」
素っ気なく言い放つと、私は構わず階段を上り部屋の鍵を開ける。
それを見て平嶋課長は慌てて階段を駆け上ってきた。
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