《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第2章 キス、プレゼント、ランド!?(5)妹ですが、なにか?

仁のマンションに引っ越しをして二週間が過ぎた。

「あ、品薄。

ちゃんと補充してくださいねー」

近所のスーパーのお菓子売り場で、つい顔が緩む。

仁が打ち出した、新たな宣伝戦略のおかげか、商品は話題でこのスーパーにも荷するようになっていた。

「さてと。

帰ってごはんの準備しなきゃねー」

習慣の定點観測も終わったので、會計へ向かう。

支払いはブラックカードで。

八雲社長から仁経由で渡された。

ファミリーカードだから気にせずに使いなさいって言われたけど、生活費だけありがたく使わせてもらっている。

社長はさらに、奨學金も全額返済してくれた。

いや、いままでだって會社から一部、補助が出ていたのだ。

それだけでも謝だったのに。

『涼夏さんはもうすでに私の娘だ。

それにもっと早く有希さんと出會っていれば、こんな苦労をさせることもなかった』

って仰ってくださって。

母は本當に、いい人と結婚したんだと思う。

「ただいまー、と」

もう初夏と行っていいほど暑い外とは違い、部屋の中は快適だ。

二十四時間空調管理されているのはさすがだけど、庶民の私としては料金が気になって怖い。

部屋著に著替え、ごはんの準備をする。

ご飯をセットして、ほうれん草のおひたし、豚、お漬の準備と手際よくやっていく。

メインの塩鯖は食べる直前に焼けばいい。

「仁はいつ、帰ってくるんですかねー」

仁の帰りはまちまちだ。

私と一緒くらいだったり、深夜になったり。

一応、九時まで待って帰ってこないときは、先に食べるようにしている。

二度ほど、接待と付き合いで食べて帰ってきた日があって、盛大にため息をつかれた。

『いつ、食事がいらなくなるかわからない。

今日だってわれたのは會社を出る直前だ。

だから、僕の分は作らないでいいと言ったのに』

仁が私を気遣ってくれているのはわかる。

でも私が食事を作らなかったら仁は、よくて試作品のお菓子、悪いと食べない、だ。

もうこの二週間で學習した。

だから私は、嫌がられるのがわかっていて、仁にごはんを作る。

ちなみに無駄になった夕食はお弁當に転用して次の日のお晝に食べようと思ったら、翌日の夕飯にするからと、仁はちゃんと食べてくれた。

「ただいま、涼夏」

「お、おかえりなさい」

私を抱き締めた仁のが、額にれる。

本當に嬉しそうな顔で。

仁との生活は慣れてきたが、これだけはいつまでたっても慣れない。

「今日は夕食、どうしますか」

「いらないって言っても、涼夏は作ってるんだろ」

ちらっと眼鏡の奧から仁の視線が食卓へと向いた。

「はい、もちろんです。

塩鯖焼いちゃいますので、ちょっと待ってくださいね」

「……はぁっ」

諦めたようにため息を落とし、仁が仕方ないな、とでもいうように笑う。

鞄をソファーにおいてネクタイを緩め、仁はテーブルに著いた。

待っている間、仁は頬杖を突いて私を見ている。

食卓には絶対、タブレットも攜帯すら持ち込まない。

「はい、お待たせしました!」

溫めた豚とご飯をよそい、焼いた塩鯖を置いたら今日の晩ごはんは完

セレブ家庭の食卓としては地味すぎると思うが、私にはそれしかできないから仕方ない。

「いただきます」

仁は作ってあれば、文句は言いつつ必ず食べる。

食べない、なんて拒否されたことはない。

だから作るっていうのもある。

「何度も言うが、僕の分は作らないでいい」

この話がはじまるのも、毎度のこと。

「でも仁、私がごはん作らなかったら、お菓子で済ましちゃいますよね?

それは絶対、によくないからやめた方がいいです」

「……はぁーっ」

仁の口から大きなため息が落ちた。

箸まで置かれ、今日こそ本格的に怒らせたのかと構えた。

「君は僕の母親か」

口うるさい私は仁からすればそうなのかもしれない。

でも私は。

「妹ですが、なにか?」

平然と事実を宣言してやった。

「……そう、だな」

ニヤリ、と口もとを歪ませて仁が笑う。

箸を取り、再び食事をはじめた。

「これからはなるべく、いらなくなったときは早く連絡するようにする」

お?

これって、この先もごはんを作って待っていていいってことですか。

「はい、お願いします」

「それと」

「はい」

なにかまだ、注文があるのかと張したけれど。

「豚、人參がっている。

僕の分は人參を抜いてくれ」

「あ、つい……。

すみません、次から気をつけます!」

「うん」

穏やかに食事は進んでいく。

こんなに溫かい食卓はいつぶりだろう?

母は忙しくてひとりでの食事が多かったから。

別にそれを恨んだことはない。

しでも淋しくないようにと母は職場へ私を連れていっていたし、編集部の人たちも可がってくれた。

――それでも。

ひとりでの食事は、淋しかったのだ。

「うまかった。

ごちそうさま」

「はい、お末様でした」

必ず仁はうまかったと言い、食をキッチンまで下げてくれる。

きっと、いい旦那様になるんだろうな。

そういえば、婚約者もいるって言っていたし。

仁が私以外の誰かに同じことをしているのを想像したら、ツキンとの奧が一瞬、針で刺したかのように鋭く痛んだ。

……いまのはいったい、なんだったんだろう……?

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