《同期の曹司様は浮気がお嫌い》3
「優磨、ごめんね」
麗さんは優磨くんを真っ直ぐ見つめた。
「今までたくさん優磨の大事な人を傷つけた。こんなお姉ちゃんでごめんね」
優磨くんの頭を優しくでる。それに驚いたのか優磨くんは抵抗しないで大人しくでられる。
「めちゃくちゃなことばっかやっても麗を見捨てないでくれてありがとう。これからは自分の幸せのことを考えて。波瑠ちゃんを大事にするんだよ」
麗さんの目が潤んでいる。優磨くんも目元が赤い気がする。
「麗のことは心配しないで。これからは困ったら泉ちゃんに頼るから」
ん? やっぱり二人はそういう関係? とり口に立つ泉さんの顔を見ると額に手を當て溜め息をついている。
「二人の結婚式にはもちろん麗も呼んでね」
「慶太さんを呼ぶんだから姉さんは來るな」
「なんで! 麗は新郎の姉なのにぃ!」
また姉弟喧嘩が始まってしまった。するとり口から「麗さん」と泉さんが聲をかけた。
「私たちはもう行きますよ」
この言葉に麗さんは怒るのをやめて立ち上がった。
「さて、麗お腹空いたから帰るね。後は二人でごゆっくりー」
そう言って手を振るとり口の泉さんの元へ歩いていく。
泉さんは私と優磨くんにお辭儀をすると麗さんと共にチャペルの扉を開ける。
「ねえ泉ちゃん、麗ステーキ食べたい」
「今からご自宅にお送りしますので家政婦さんにお願いしてください」
「泉ちゃんの意地悪! ね、今から麗と二人でどっか行こうよー」
「仕事中に社長の娘と遊びになんて行きませんよ」
「真面目だなー泉ちゃんは。じゃあプライベートで」
そんな會話は扉が閉まるまで聞こえていた。
「まったく……騒がしいな姉さんは」
「ふふっ」
ずっと黙ていた私は思わず笑った。
「波瑠?」
「あ、ごめん。麗さんって不思議な人だなと思って」
「あれが家族って本當に疲れるから」
「でも楽しそうだね」
「波瑠も姉さんと家族になるんだよ」
「え?」
「俺と結婚するってことは麗は波瑠の義姉だし、名前も城藤波瑠になるんだ」
「あ……」
「俺はいずれ會社を正式に継ぐつもり。波瑠には苦労をかけると思う。城藤の一員になるのは波瑠にとって良いことばかりじゃないかもしれない」
「うん……」
優磨くんが私の手を握るから、私もその手を握り返す。
「それでも俺は波瑠にそばにいてほしい。もうこの手を振り払ったりしない。死ぬまでそばにいる。誓うから」
私は何度も頷く。そのたびに涙が頬から顎に流れて揺れて落ちる。
「やっぱり浮気相手じゃ嫌だ。波瑠の一番になりたい。俺だけをしてほしい」
「噓なの……彼氏なんていない……優磨くんしかせないよ」
「よかったー……」
安心したのか満面の笑みに私も笑う。
「ごめんなさい……」
「いいんだ。結婚式を壊す気で來てくれてありがとう」
「怖かったけど……優磨くんを失いたくなかった……」
「ちょっと待ってて」
優磨くんは立ち上がって參列席のイスに置かれたカバンから何かを取り出した。
再び私の前に膝をついた彼の手には小さな箱が握られていた。
「ずっと前から作るよう依頼してたんだ。デザインが決まらなくてやっと完した」
私に向けて開けられた箱の中には指がっている。
「俺の友人のジュエリーデザイナーに依頼して、波瑠のイメージを伝えて特別にデザインしてもらったんだ」
「嬉しい……」
目が潤んできた。これは世界で私だけの特別な指だ。それを優磨くんの手で私の薬指に嵌められた。緩くもきつくもなくぴったり馴染む。
「でも、指のサイズはなんで?」
まだ一緒にジュエリーを選んだことがないのにどうしてわかったのだろう。
「別れる前、寢てる間にこっそり測った」
「え?」
「実はずっと前からプロポーズしたかった。波瑠の気持ちを待つなんて言いながら、本當は怖かったんだ。波瑠に斷られるんじゃないかって」
「そんなことないよ」
嬉しくて反対の手で指が嵌った指を包む。
「ありがとう……」
「波瑠にも証明してほしい」
「え?」
「もう俺のそばを離れないって一生かけて誓って」
私は優磨くんの目を真っ直ぐ見つめた。
「してる。一生離れません」
「俺も波瑠をしてる。一生かけて幸せにする。だから俺と結婚してください」
「はい」
心を込めて呟いた。再び優磨くんとが重なった。
やっと素直になれた。遠回りばっかりしてたけど、優磨くんと家族になれることは幸せだ。
「っ……」
優磨くんが私の肩に額を載せて顔を隠す。
「どうしたの?」
「安心して力抜けた……」
「優磨くんのご両親にも挨拶に行かないと」
「そうだね、波瑠を早く紹介しろってうるさいんだ」
「ご両親、怒ってないの?」
「婚約を勝手に解消した時は怒ったけど、まあ姉さんの例もあるし結婚相手を最終的には自分で決めさせてくれる親だから」
「よかった……」
「波瑠、今夜から帰ってきてくれるよね?」
不安そうな顔で見つめる優磨くんに微笑んで頷く。
「私の帰る家は優磨くんのところだよ」
そう言って今度は私から優磨くんにを重ねた。
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